音楽と凡人#09 "初めてのライブ、Mステ"

 初めてライブをしたのは中学2年の文化祭の時である。生演奏ではなかったので、正確にはライブと呼べないかもしれないが、大人数の前でパフォーマンスをしたのはその時が初めてである。文化祭とは言いながら、学年で10名ほどが一つの劇をやり、あとは授業でふざけながら作った展示が少しある程度の行事であった。

 「なぁ、ちょっとこれ出てみいひん?」

 私は文化祭の幕間の出し物のオーディションのプリントを見せ、ユウマとぼーちゃんを誘った。ギターは私とユウマで、ぼーちゃんがベースという編成であった。とにかくギターを弾く何かができればよかった。ドラムとボーカルのいない謎の編成のまま、そのオーディションを受けることにした。

 幕間の出し物はそんな大掛かりのものをやるような場ではなく、普段から明るい野球部の男たちがテレビでやっていたコントや漫才などのネタを完コピして披露するようなノリであった。そんなところに私たちはDEEP PURPLEのSmoke on the Waterのコピーでオーディションを受けることにした。マルチエフェクターのZOOM G1Xのリズムマシンを鳴らし、それに合わせてベースとギターを弾くというボーカルなしのインストである。

 オーディションで審査員であった音楽の先生に気に入られ出演することになったが、本番ではアンプを使うことを禁止された。幕間はそんなややこしいことをするような時間ではない、と体育教師がNGを出したためである。

 ほなMステの感じでいくかぁ、と先に録音をしたものを流してアテブリをしようと私は提案した。学校にエレキギターを担いでいく時点でかなりの違和感があるような空気感であったが、そのようにして無理やり私の初ライブは達成された。私はSmoke on the Waterの音源の長いソロを自分一人で弾き、ユウマとぼーちゃんには音源にないオリジナルのフレーズを各自考えて弾いてもらった。私の自己中心的なその振る舞いには母も呆れていた。そして本番二人はかっこよく弾ききり、私もかっこよく弾ききったが、お前の時には笑いが起こってたで、と後で友達に言われた。私は普段わりとふざけるキャラであった。私はそんな調子で気付けば永遠にそんなことをしていた。深い意味などなかったのかもしれない。ただ夢中で、ただ真剣であった。


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