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スタミナ不足の反省を兼ねて

 10月の初めに山に行った。
全国的な規制が緩和されたからではなく、タイミングが偶然重なったからだけど、ともあれ、感染の波が小さくなっていることは良かった。

 今年の山小屋の宿泊は、ひと月前から予約開始だった。今までのように『いつでも、誰でも、受け入れる』という体制ではなかった。もちろん命に関わることだから、宿泊拒否はないだろうけど、そう言うルールなのだから予約もなしに飛び込んだりしたら、かなり怒られるのだろう。これらの予約と自分のワクチン接種の完了が間に合う事もあって、この登山を決断した。ついでに言うと、山の秋はもうおしまいだから、夏山登山の最後のタイミングでもあった。
 シュラフや食材など、テントに必要な道具を背負って、さらに寒い夜を過ごすだけの体力があればテント泊がいいのだけど、この訛りきった体ではテント泊は、正直あり得ないと思った。

 場所は涸沢カール。
涸沢カールの秋は素晴らしくて、この時期は登山者が一番集まる。バスで上高地まで行って、入山届を出す。窓口の周りは、例によって人だかりが出来ていた。マスクをしている事を除けば、今までと何ら変わらないと思った。これから非日常を愉しむ訳だけど、なんだか日常が戻ってきたようで嬉しかった。久しぶりの登山靴もザックの重みも全て嬉しかった。

 これまで涸沢には何度か登った。 
涸沢を拠点に各方面に登ったりするのだけど、今回は涸沢に一泊して下山する。再びこの山に登る事が出来るだけで幸せだと感じる。

 フイルムカメラを持参して、紅葉と星空を撮る。フイルムカメラで星空が上手く撮れるのかは疑問だけど、面白いチャレンジをする。それ以外は荷物を極力軽くした。涸沢より上に行かないのであればヘルメットもいらない気がしたけれど、一応ザックに詰め込んだ。

 上高地から明神→徳沢園→横尾までは、平坦な道が続いていて、上高地の観光客も気ままに散策ができる。梓川の清流や樹々のみどりや、ソフトクリームを愉しむ。

 横尾の吊り橋を渡ると、いよいよ本格的な登山の始まりだ。そして今回は、ここから私の反省の時間が始まった。
 横尾を出てから数分後、あまりの息苦しさにマスクを外してしまった。身体の重さとスタミナの無さを痛感した。普段の生活で極力歩いていたつもりだけれど全然足りていなかった。本当は足りていないことに気が付いていたけど、筋トレもすぐにキツいと投げ出した。今更やっておけばと後悔しても遅い。ちょっと情けなくなって、自暴自棄に「もう引退か」などとブツブツ言いながら登った。キツイとは言いつつ、いつもラストスパートでチカラが出るものだけど、最後の最後まで、本当にキツかった。一緒に登った友人のペースも崩してしまったし、申し訳なく思った。

 やっとのことで辿り着いた涸沢ヒュッテの売店では、お決まりの生ビールもおでんも売り切れていた。仕方なく缶ビールを買って、ジャイアントコーンと行きのサービスエリアで買った燻製のゆで卵をザックから取り出して、ヒュッテのバルコニーで乾杯した。汗で濡れたシャツの上にダウンジャケットを羽織って冷たい風を凌ぎながら、ワサワサとテントを組み立てる人や思い思いにスマホをかざす人をその広いバルコニーから眺めた。みんな幸せそう。今日という日に感謝。

 相変わらず、山並みは美しい。穂高山脈に囲まれた涸沢カールが美しい。紅葉も美しいけれど、色とりどりのテントを見てたくさんの登山者がこの山に来ていると言うのが嬉しかった。

 さっきまであんなに苦しくて、辛いと心折れていたのに、また来年もこの場所に登って来たい、と強く思った。体力がないと山には登れない。真面目に体力作りを考えなければいけない。


 下山は通常のタイムで下ることができた。事故は下山時に多いものだ。足運びもまだ大丈夫、ここで辞めては勿体ない。これから先しっかりと準備をしてやって行けば、長く登山を愉しむことが出来る。そのためには、それ相応の努力が必要だ。若い頃のように成り行きだけでなんとかする事はもう出来ないのだとしっかり悟った。

 下山途中の徳沢園でのカレーうどん、美味しかったな。

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iPhoneでパノラマコースからモルゲンロート(朝焼け)を撮る。



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