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順応する高齢者たち

世の中は目まぐるしい程のスピードで進化していく。
流行をキャッチして、その波に上手く乗るのが若い世代は得意だ。しかし高齢者たちも負けていないな、と最近は思う。

先日のことだ。
ある晴れた日の昼下がり、幼稚園のバスを待っていた私はスマホを手に夕飯の献立を考えていた。冷蔵庫の中身を頭の中に浮かべながらレシピを検索していく。少し夢中になっていただろうか、ふと顔を上げるとそばにあるお寺の境内にお年寄りが3〜4人集まってチラチラとこちらを見ていた。赤ん坊を抱っこしていた私は”子供がいるのにスマホに夢中になって!”と非難の目で見られているのかときまりが悪くなり、そっとスマホをポケットにしまった。
すると、一人のおじいさんが輪を抜けて私のところへ歩み寄ってきたのである。
おしゃれなハットを被ったおじいさんだったが、「すみません、」と声をかけると少年のような瞳でこう訊ねた。

「ぽけもんごーやってますか?」

一瞬何を言われているのかわからなかったが、なんとかして「いえ、やってないです。」と声を出す。するとおじいさんは少し恥ずかしそうな顔をして仲間の元へと帰っていった。

「いやー、違ったみたいだ」「じゃあ駅の方に行ってみますか」

お年寄りたちの輪からそんな声が聞こえてくる。
ぽけもんごー、ポケモンGOか。
どうやらスマホ操作している私を仲間だと思ったらしい。
私はポケモンGOをやったことはないが、仲間たちとポケモンをゲットしながら散歩するのはきっと楽しいし体にもいいだろう。素晴らしいことである。駅の方へと歩いていくお年寄りたちの背中を見ながらなんだかおかしくなって口元が緩んだ。

”新しいものはてんでダメです”という高齢者も確かに多いだろうが、スマホゲームをしたりSNSを楽しんだりする人たちも増えているという。
インターネットが一般化して30年近く。かつて流行をキャッチした、インターネットに馴染みのある人々が高齢者になっていく。そう考えれば高齢者たちの順応が早いのも頷けるというものだ。

日々新しくなる世界に、果敢に挑戦し続けることがいつまでも若くいる秘訣なのだろうな、と私も気を引き締める。
”キャッシュレス全然わからん!なんか怖い!”なんて言っている場合ではないようだ。

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