ご縁を結ぶということ

結婚する人とは、生まれたときから小指と小指が赤い糸で結ばれている、というロマンチックな言い伝えがあります。待っていれば、出会うべき人とは必ず会える、という考えです。もちろんそういう「ご縁」もあるでしょう。しかし私は、もしそこに赤い糸がないとしても積極的に縁を結んでいこう、という考え方、生き方が好きです。


縁結びにご利益のある神社、というのが日本の各地にありますが、昨今の婚活ブームの中、その中でも最強のスポットと言われるのが島根県の出雲大社です(東京・六本木にも分祠があります)。出雲大社は、長さ13・5メートル、重さ4・4トンもの大注連縄があることでも有名な、大国主命(おおくにぬしのみこと)を祀る神社です。


大国主命の別名は、ダイコク様。肩に大きな袋を担ぎ、打出の小槌を持った福の神です。国土の開拓や国造り、村造りに苦心し、農耕・漁業を進めて人々の生活の基礎を固めた神様であり、医療の道を開き、人々を病苦から救う神様でもあります。


そんなダイコク様が、縁結びの神、と言われるようになったのはなぜでしょう?


私たちは折々に神社へ参拝し、特に苦しいときや困ったときに、心の中でさまざまなことを神様に願い、祈ります。私を、あるいは私が愛する人を助けてください、計画が上手く運びますように、幸せになれますように、そしてお金持ちになれますように…(?)。


何の努力もしないで、ただただ欲望を口にしているだけでは、願いがかなうことはおそらくないでしょう。しかし、お金持ちになりたいと願う人が、まじめに努力しながら一生懸命お祈りをしたとしても、空からお金が降ってくることはありません。神様が私たちに下さる最大の贈り物は、物ではなく「縁」だからです。


縁は、男女の間に限ったものではありません。私たちが成長するためにも、その生活が明るく楽しいものであるためにも、もちろん社会が平和で安定したものであるためにも、たくさんの「縁=よいつながり」が必要です。お金も物も、そして目には見えない幸福という感情も、誰かと誰かの出会い、あるいは誰かと何かの出会いやつながりを介して運ばれてきます。そして、そういう結びの力を惜しみなく注いでくれるのが、人々の幸せを願う福の神・ダイコク様なのです。


また、出雲大社が縁結びの神社と言われるもう一つの理由が、神無月に開催される会議です。旧暦10月11日から17日までの7日間、日本全国に散らばる八百万(やおよろず)の神々様は、神事(かみごと)と呼ばれる会議のために、出雲に集結するのです。


会議が行われるのは、出雲大社の摂社「上の宮(仮宮)」。そして神々が宿泊するのは本殿の両側にある「十九社(じゅうくしゃ)」で、この期間には、毎日祭事が行われます。そして神々様の会議や宿泊に粗相がないようにと、出雲の町の人々は昔も今も、大きな音を立てないよう、1週間ひたすらひっそりと生活するのが習わしとなっています。


旧暦の10月は、「神無月」と一般には呼んでいますが、全国の神々様が集まる出雲では、それを「神有月」と呼んでいます。


そしてその会議で神々様は、来年の収穫や人々の暮らしに関するさまざまなことを決めていきます。もちろん「縁結び」の話し合いも、重要なテーマの一つです。年に一度全国の神々様が集まって、人々を幸せにし、世の中を明るく平和で楽しいものにするために誰と誰の縁を結ぶかを話し合うのです。それで、出雲大社は日本最強の縁結びのスポットと言われるようになったのです。


縁結びの基本は、他力本願ではなくまずは自分を磨くこと。しかし出雲大社を参拝する機会があれば、婚活だけでなく、身の回りにさまざまな「ご縁」が結ばれるよう、ぜひ神様にお願いをしてみてください。


ほとんどの神社では「二拝二拍手一拝」が参拝作法の基本ですが、出雲大社の参拝作法は、「二拝四拍手一拝」。そして「お願い」の前に、自分の名前と住んでいるところ、日頃の感謝を伝えることも忘れないようにしてください。


そして、もしも新しい出会いが直接幸せに結びつかなかったときにも、それを神様のせいにはしないでください。私たちはよく「つまらない人と付き合って時間の無駄だった」などと言ったりしますが、実は無駄な出会いなんて一つもないのです。不運にも、だれかとの出会いがあなたに苦しみや悲しみを運んできたとしても、それはおそらく今のあなたの「学び」のために、必要な出会いだったのです。


愛情を愛情で返す、という美しいバランスが崩れたとき、そして暗闇の中で苦しみや悲しみに押しつぶされそうになったとき、私たちはだれかを憎むことでその暗い穴から這い上がろうとします。しかし人を憎むことで解決することや自分が向上することは決してありません。


辛いときこそ早起きをして太陽の光を浴び、部屋も自分も清める。そしてお散歩がてら神社へお参りなどして、新しい「ご縁」を授かれるよう願ってみるのがよいのではないでしょうか?


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