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農家が安心して有機農業に取り組めるために

有機農業が国内で広がらない理由として、大きく有機農業技術、有機農産物の消費拡大および物流の3つの課題が挙げられます。


我が国の有機農業推進の取り組み

農林水産省「みどりの食料システム戦略」は、2050年までに全国の有機農業面積を国内の耕地の25%(100万ha)に拡大するという数値目標を掲げています。
国の有機農業推進の取り組みを振り返ってみると、2006年12月に「有機農業推進法」が制定・施行され、自治体も地域と協力しつつ有機農業を広めていくことになりました。さらに2014年4月に、「有機農業の推進に関する基本的な方針」を更新し「5年間で有機農業の面積割合を全耕地の1%に倍増する」という目標を立てましたが、当初、実現が楽観視されたこの目標値は、10年たった今でも達成できていません。
有機農業を広げるために、なにが必要なのでしょうか?

有機農業に取り組む農家を増やすために

1)地域ごとの有機農業技術の確定

化学肥料、農薬に頼らない有機農業では、慣行農業で採用している栽培技術と異なる点も多く、都道府県の農業技術者の支援が受けられない場合が多い。したがって、農地にあった栽培方法を見つけるまでは収量も少なく、農業を続けることが困難な農業者も多く見られます。慣行農業と比較して優れているとされる味や風味も、栽培する人の技術やノウハウによるところが大きく、「有機農産物=美味しい」とは必ずしも言えないのが現状です。

2)有機農産物の消費拡大

消費者が農作物を購入する場所の多くは、スーパーや小売店です。そこに有機農産物コーナーがなければ、有機農産物や有機食品に触れる機会がありません。
有機農産物や食品の消費が先行し、それに応じて農産物の生産量が増加していくことが、農家が安心して有機農業に取り組める望ましい姿です。

たとえば名古屋市中心部の「オアシス21オーガニックファーマーズ朝市村」では、有機農業を取り組む新規就農者が、農産物やその加工品を毎週対面販売しています(見出し写真)。

3)有機農産物の物流

日本の有機農業は小規模農家が多いため、出荷の際に輸送コストがかさみ価格の上昇につながっています。
出荷のしくみや製品開発を工夫し、普通のスーパー・小売店で有機農産物を買えるようすることが求められます。有機農産物を購入する消費者が限られている現状を考慮し、有機農家が消費者と提携して販売してきたように、1日に売り切れる複数の種類を少量ずつスーパーに届けるなど、流通の工夫が必要だと思います。

地元JAと提携し学校給食などの公共調達ができれば、産地のそばで有機農産物の販路を広げることが可能となります。たとえば千葉県いすみ市では、有機農業を地域に普及するために生産されたすべての有機米を、市による購入資金補助も入れつつ学校給食に採用し、有機農業の地域への定着を図りました。

※ 茨城県常陸大宮市、千葉県いすみ市の取り組みも参考にしてください。

参考資料

藤田 正雄(2021)「有機農業100万ヘクタールへ 技術開発と販路の確保が重要」月刊「事業構想」2021年8月号


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