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まとめと感想 「問題解決の心理学―人間の時代への発想」

概要

何か実現したい目標があり、それを叶えるための手段を考案する。
「問題解決」をこのように定義するなら、
人間の生活は問題解決に溢れていると言っても良いだろう。

普段から何気に取り組んでいる、問題解決という行為。
その本質とは何か。
問題解決の力を養うためには何が必要なのか。
そういったことを考える本。

問題解決の概観

例えば、レーシングゲームを遊ぶ場面を考えてみる。

初めて遊ぶゲームなら、どのボタンがどのアクションに繋がるのか分からない場合もある。
まずは、適当にボタンを押して、ボタンとアクションの関係を把握する。

段々慣れてくると、速さを競いたくなる。
より速く走るためにはどのタイミングでどのような操作を行うべきなのか探索する。

もっと慣れてくると、更に難しい事に挑みたくなる。
それを叶えるためには何をするべきか探索する...

こうして探索的に遊ぶ中で、レーシングゲーム初心者は中級者、上級者になっていく。

このような例を見ると、問題解決は以下の3段階の行いで捉えることが出来る。

  1. 問題を理解する

  2. 問題を解いてみる

  3. 吟味する

問題を理解する

まず、問題を理解するところから始める。
問題を理解するためには、目標と、現状を把握する必要がある。


目標 : 車を前に動かす
現状 : 車を前に動かすボタンがどれか分からない

問題を解いてみる

次に、問題を解いてみる。


Aボタンを押す

結果を吟味する

最後に、結果を吟味する。


Aボタンを押しても特に何も起きなかった
これは前に進ませるボタンではない
他のボタンを試そう

これらを繰り返し、問題解決をこなす。
そうして知識を得て成長する。

成長する事でより高い目標が生じ、問題解決をこなし、更に知識を得て...
とUpdateしていく。

問題解決力の向上に必要なもの

問題を解くためには現状を的確に把握する必要がある。
しかし、現状を把握するには、それができるだけの知識が必要となる。
その知識がそもそも無い場合はどうすればいいのだろうか。


ゲームを全く知らない人は、「画面の中の車が動かないのは、自分がそれ用のボタンを押していないからだ」という発想自体に至らない可能性が高い。
ボタンを押すと画面に変化が生じる」とすぐ思い至るには、ゲームで遊んだ経験がある程度あるからこそだと言える。

こう考えると、問題解決において一番重要なのは「問題を理解する」段階であるが、
一番難しいのも「問題を理解する」段階、特に「現状の把握 = 問題を表現する事」であると言える。

ざっくりと言えば、「何が分からないのか分からない。」という状況の超克。
これが問題解決にとって必要不可欠であり、一番難しい事でもある。

問題表現力の獲得

より良い問題解決者になるには、
自分の直面している問題を適切に表現する力が必要になる。
では、この"問題表現力"はどのように養われるのか。

実は、問題表現力は、問題解決の探索的繰り返しの中で養われる。
どういうことかというと、

まず、現状の問題を"仮説的に"表現してみる

目標 : もっと速くゴールしたい
仮説的現状 : ブレーキとアクセルのタイミングに改善の余地がある

そして、その仮説的な問題表現に対して、解決を試みる。

ブレーキとアクセルのタイミングの微調整を練習する

振り返り(吟味)を行う

大して速くならなかった

その結果を以て、仮説的な問題表現の方が修正される。

ブレーキとアクセルのタイミング以外に改善の余地があるのではないか
大目標 : もっと速くゴールしたい
仮説的現状 : どうすれば速くなるのか分からない
小目標 : 自分の改善点を知りたい
仮説的現状 : 速い人と自分のプレイの差を見出せていない
自分より速い人のプレイを観察してみる...etc

仮説的な問題表現、問題解決の試み、吟味、そして問題表現の修正
この、「適切な問題表現の探索」の繰り返しが、問題表現力を鍛えてくれる。

まとめ

より良い問題解決者であるとは、問題の理解が的確である、即ち、問題表現力が高いという事である。
問題表現力を向上させるには、問題解決の経験を繰り返し積む他ない。
仮説を立て、取り組み、振り返り、仮説を修正する。この繰り返しの中で問題表現力が養われる。

感想

ビジネス本とかHowTo本とかで「〇〇を成功に導く△△の方法」みたいなタイトルをよく見るが、
これを読むだけで本当に技能は向上するのだろうか。技能の向上に必要なものは何だろうか。
と問うのがこの本の目的。
どうしても、「コツとか裏技みたいなのがどこかにあって、俺はそれを知らないだけだ!」みたいに思いたくなるけど、やっぱり泥臭く経験積むしかないよ。という事。
最終的な主張としては、例えばPDCAサイクルみたいなものと同じ。
じゃ、PDCAサイクル知ってたら読む必要ないのかと言うと、必ずしもそうではないと思う。
メソッド・方法論の1つの紹介として、「仮説思考と振り返りをするべき」と言われるよりも、
実験を通して見えてきた、人間の性質・仕組みを元に「仮説思考と振り返りをするべき」という言われる事。
1つのテクニックではなく、原理として理解する。みたいな違いは重要だと思う。
著者と一緒に根拠を辿る過程があった方が納得感とか、吸収率とか高い気がする。
この本はその辺り結構丁寧に進めてくれるのでお勧め。


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