見出し画像

感性を共感覚へ広げる / 高岡を冒険して(なるる)#Season1

ここは、富山県高岡。

冒険で出会ったのは、高岡銅器の着色を担う有限会社モメンタムファクトリー・oriiの折井さん。そして、その案内をしてくれたのは株式会社TOYAMATOの中谷幸葉さん。

★スクリーンショット 2020-12-13 14.26.47

(写真の左側が、中谷さん。右側が、折井さん。)

高岡銅器って、具体的にどういう製品なんだろうか。

そんな素朴な疑問に答えていただくことから、インタビューは始まりました。

例えば、桜新町のサザエさんの銅像や、キャプテン翼の銅像、鳥取県境港市のゲゲゲの鬼太郎の銅像。これらも、高岡銅器の製品ということでした。

どれも見たことがあるものばかり。驚きました。

折井さんは、こうした高岡銅器の着色を担当している工房。こうした工房も、昔は多くて約70業者あったそうです。しかし、今では30業者ほどに。また製作に携わる人も、1/4程度にまで減ってしまったそうです。

折井さんは、自社でオリジナル商品を開発する必要性を感じたと話していました。

着色を専門にする仕事は、オリジナルの商品を作るというよりも、作られたものに対しての着色をすることが今までの仕事だったからです。しかし、それでは衰退していく現状を前に生き残っていくことはできない。そのために自社の商品を開発する必要性を感じたのです。

この話をされていたとき、折井さんの口からこんな言葉が出てきました。

昔は、銅像や干支の置き物だけでも需要があった。けれど、生活様式が変わったことで伝統工芸が衰退していくことになった

折井さん自身も、当時作られていたものに対して「あまり欲しくない」と思ってしまったと語ります。その理由は、「必要ないから」。

昔の生活様式には、ぴったりと収まるプロダクトだったかもしれないが、現代の生活様式には収まらない。その体験が、生活様式に合わせた製品を作らなければいけない、といった折井さんの価値観を生み出したのだと思います。

自社で何かオリジナルのものを作ろう。そして、それは現代の生活様式にも対応できるものにしよう。それが、折井さん自身の会社を経営していく一つの指針になっていきます。

では、折井さんは具体的にどういうことをやっているのか。

折井さんが、高岡銅器の着色を担当されていることはすでに書きました。高岡銅器の着色の技法は、化学変化によって錆をつくることによって、得られる色を使うということだそうです。(ぬか焼き、お歯黒、ここら辺の技法は、もっと知りたいと思いました)

折井さんは、高岡銅器の柄を時計の柄に組み合わせてみたり、お皿を作ったり。また、マンションのエントランスの看板作りや表札作りといったような物まで作っているそうです。さらに最近挑戦しているのが、ファッションの分野とのことでした。高岡銅器の柄にロイヤリティをつけてファッション業界に使ってもらうことで、アパレルにも進出しているわけです。

スクリーンショット 2020-12-13 14.55.11

(この写真は、高岡銅器の着色の技法によってフィールドワーク中に実際に錆を錆びさせることで作ってくださった柄)

時計や皿、看板、表札に至るまで自社のオリジナル商品を作る。それらは、現代の生活に寄り添った物です。しかし、そこに留まることなく、もっと生活に寄り添った「ファッション」という分野にも進出しています。

オリジナルの商品をつくりつつも、それは現代の生活様式に合わせる。

大学の授業で「感性」と「共感覚」という話を聞いたことがあります。

自分の感性で新しいものをつくる。けれど、それは独りよがりの物でなく、誰もが共感できる、納得できる。「あぁそうだよな。そういうのが必要だよな」という共感覚をもたらす物を作ることが、デザインにおいて必要なことだという話でした。

折井さんの話は、まさにそれではないかと思います。

新しい分野に挑戦し、オリジナルのものを作るけれど、それは誰もが「こういうのあったら欲しいかも」と思える製品。

自分の作ったものを、どう共感覚にまで広げていくことができるのか。

そんな「問い」が浮かんできた、高岡での冒険でした。


なるる

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?