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クソみたいに愛してる

あなたさえいなければ、この人生はもっと計画的で、静かで、豊かで、つまらないものになるはずだった。あなたに触れるヒト・モノの全てすら同時に愛おしく思えて、止まらない。整理できなくなった感情は、とめどなく落ちてくる雨みたいに私を濡らし続ける。この雨は当分止みそうにない。どうかあなたには傘を持ってきてほしい、いやむしろ、あなたの存在そのものが世界にたった1つの傘なのです、どうか隣にいてほしい。

季節の移り変わりが「期待」を生む。冬眠準備をし終えて冬眠に入る瞬間の動物たちは何を考えて寝るんだろう。どうか、来たる春へのあたたかな記憶で満たされていてほしい。未来への期待を抱いて冬を過ごすなんてすごく美しいと思う。変化があるからこそ、その先があって。先があるからこそ「期待」してしまう。季節が変わったら、また、と。

クソみたいに愛してる。目を半分閉じてしまいたくなるような霧雨も、何層にも重なり合う都会の喧騒も、季節を開く桜並木も、街行く人も、ワンちゃんも。全てが鮮明にへばりついてしまった。あなたと見た風景の全て。

気づかなければ良かった。気づかなければ、良かった。
気づかなければきっと私は、クソほどあなたを愛することはなかった。
気づいてしまった。そうしたら戻れないとどこかでわかっていながら。

愛には多くのカタチが存在する。わたしたちのカタチは、どこか歪に見えて、私たちにとっては整然としてクリーンで、脆くて壊れやすい。何かが軸になった天秤みたいに、私たちは釣り合っている。似合っているのではなく、常に均衡している。愛の自覚はこの均衡関係を崩すかもしれない。この均衡が崩れるときがくるとしたら、お互いに離れるのではなく、死に物狂いであなたに近づきたい。左側から真ん中へ、それでもダメで、あなたがその場所を動かないなら真ん中から右側へ。あなたがいる場所がわたしの居場所になる。

他人にここまでの感情をうみだしてしまうあなたは嫌な人間だと思う。
同時になんて素敵な人間なんだとも。

愛は権利だった。
それは、相手を想う権利に等しかった。
そして、相手のことを想っていると、相手に伝えても良い権利でもあった。
そうして、想うことが許される。
想うだけ、想うだけなのに無限の動力源にも、体内を侵す有害物質にもなる。

未熟な私の、混沌とした感情に名前をつけてくれたのは誰でもないあなたなのです。あなたから、たった2文字の名前をもらった感情は、それまでの閉塞感や息苦しさを世界の反対側にまで押しやってしまうほどに、綺麗で明確なカタチを与えられた。実体をもったそれは、何よりも誰よりも素敵なあなたのカタチをしている。この瞬間から、私の中にあなたが生まれ、権利が生まれた。

恥ずかしいけど、情けないけど、少し気持ち悪いかもしれないけど。
その瞬間からわたしという人間は、あなたを含有する。
そんな贅沢を許してほしい、だって人生で一番豊かな自分に出会えたから。

昨日も、
今日も、
明日も、
明後日も、
その次の日も次の次の日も、
1ヶ月後も、
半年後も、
1年後も、
5年後も、
20年後だって、

どこにいても、
だれといても、
隣にいても、
隣にいなくても、
どんな生活をしていても、
人生を諦めても、
変わってしまったとしても、

それでも私はあなたをクソみたいに愛してる。


あなたに多くは望まない
1つだけ望みが叶うなら、
わたしか、あなたのどちらかが死ぬときは
どうか隣にいたい、いてほしい
そんな期待1つで、後80年は生きていける気がする


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