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花瓶



信じる
音に
任せた身体は
ここにいるのに もういない、
歪められた
地図に降る小さなピンを
はじいて、
名前のない薔薇の庭に着いた、誰にも
告げずに
描いた花を切り抜いて、
咲きたかった場所へ
連れて行く
長い車窓の夢、
咳き込んだ
赤い命を見つめたまま、
不自然に書き換えた場所を通るたびに想う、
強くなろうとした日のことを、永遠に
消えたニュアンスを宿して、醜いものと
共に枯れてしまわないように、無意識に
庇っている美しい手、切り離せないと
知っている瞳が、同じ場所から吸い上げている
水のように、
なにかが待っていると
思い込んでいた、雨に閉じられたノワールに
咲く、結末の後にも 君は
生きている、列車の中で
綺麗なものばかり
見なくてもいいと うなずいた






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