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洞洞



人には
聞こえない音で低く
歌っている
遥かな闇の一点に
震えたら、静かに
詩のふりをして、本当のことで
埋めた余白に
 
たったひとつの姿を探せば
探すほど、
同じ球面を
滑る影たちと
肩が触れあう、今
どんな
単眼のスピードも金と
銀の糸に変えて、ふっくらと
編み上げるようにして咲かせた
きれいな姿を
 
夜空に、広がる枝葉のように見上げていた、
それも
愛だと言わせたい
わけじゃなく、切り離さずに、
解き明かせない
秘密をどこから眺めているのか
定まらない
冬の終わりにその
音のつながりを
歌と呼ぶ、
ここにも
終わりがありますように。また
始まるまでの、一瞬の
呼吸の前で、だれも
なにも知らないままの顔で
なにも知らないままの姿で浮かんでいる、
そこに行けば
闇とオレンジの熱い
光を浴びて、
思い出すのは、開いて
つないだ
いくつもの雨傘、
だれに差し出すでもなく
千の波紋に開いたエクリプス
 
遥かな闇の一点に通じて、
帰り道に
放す
 
声は吸い込まれて
 
空から
降って来る
つながりを歌と呼ぶ
 
歌っている
 
 
人には
聞こえない私の声で
低く






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