見出し画像

【CS】ドイツの大学を卒業しました【Bachelor 】

ドイツのドルトムント工科大学で情報工学の学部課程(Bachelor Informatik)卒業が内定しました。入学から卒業までを振り返ってみようと思います。履修内容についてはこちらにまとめてあるので、ここではそれ以外の話を。

高校卒業後、日本の国立大学に進学して西洋史で学部課程を卒業しました。その間1年間ドルトムント工科大学に留学。1回目の卒業後1年半ほど日本で働いて貯金を作ったのち、ドイツへ戻りました。最初は1セメスタ(半年)ニュルンベルク工科専門大学でDSH準備コースに通い、DSH合格とともにドルトムント工科大学でInformatik(Bachelor)専攻を始めました。


【本当に卒業できるのか?!】

実を言うと、1セメスタ目からあまり幸先よくはありませんでした。4科目受講して、1つは途中でドロップアウト、1つは受かりそうになかったのでテストを受けず、残り2つはテストを受けたけど1つは不合格。もう一つは受かりましたが、本当に大丈夫かこれ?卒業できる?と心配になりました。が、やるでなぜか決心は固かったです。
なおドロップアウトした科目は次のセメスタに別の教授が担当になり、教え方が全然違って「なんだそういうことだったのか」と合格。2セメスタ目は難易度低めの科目が多かったので他の全部試験もパス。不合格だった科目も次の年に受けて合格。なんだ、最初に難しいものに当たってしまっただけか…と思いきや、やはり難しい科目は難しい。
友達と集まってあーでもないこーでもないと勉強し、ネットで検索をかけ頼りになりそうな解説を必死に読み、時には涙目でチューターが教えてくれるヘルプデスクに行ったり…。暗いトンネルの中を歩いている気分でした。今思えば基礎学力が低いとか理解力が足りないとかというのではなく、思考回路がInformatikのそれになっていなかったんだと思います。最初の1年は思考回路のトレーニング。入学制限がないので足きりの意味でも最初は難しい試験が多くて進捗が鈍かったのだと思います。適性の高い人は難なくこなすんでしょうけど、適性や才能がなくても大丈夫。チューター、過去問、友達、ネット、すべてフル活用でついていきます。選択科目が増えるころには「このまま頑張れば卒業できそう」にまで改善しました。

【バイトが見つからない】

日本で作ってきた貯金で暮らしていましたがそれも無限にあるわけではないので、最初から積極的にバイトを探していました。まだセメスタ数も終了科目数も進んでいなかったのでITのバイトではなく、飲食店やNachhilfe(家庭教師や塾講のようなもの)をメインに応募しました。がしかし、どこにも雇ってもらえない。Nachhilfeの場合はドイツの学校出ていないから、英語でも習うならネイティブがいいと敬遠されていしまいました。サービス業系は理由は言われなかったのでわかりません。
それでもめげずに応募しました。大学の掲示板のビラだったり学部のメーリスで流れてくる募集のうち少しでも可能性がありそうなものはほぼすべて。イベントや掃除の単発・短期のアルバイトなら採用されたこともあったので、そこで少しでも稼ぎつつ節約生活です。採用されない度に、自分はいらない人間なのかと落ち込みました。
そして4セメスター目にしてついに!大学のアルバイトに受かりました!!大学が主催しているプロジェクトで、中学生くらいの年齢で理系に興味のある女の子たちのメンターの仕事です。Informatikに興味のある女の子5人のグループを担当になり、プログラミングや数学がテーマの自作の問題やクイズを配って解いてもらったり、質問に答えたり、大学の生活のことを話したり。楽しかったのと同時にこの子たちの参考になれたなら嬉しいです。
このバイトの任期が終わるあたりに、今度はIT関係のバイト2つに受かりました。一つは学内の奨学金プロジェクト(半年ごとに750ユーロの奨学金がもらえ、1年ほどの有給インターン(アルバイト)をもらえるもの)を通じて、もう一つは今も働いている外国人向けの情報プラットホームの仕事です(大学が協賛している)。受かったのは、いずれも大学というコネの中にいたからというのも大きいと思いますが、セメスタ数と終了科目数が進みプログラミングのバイトに受かりやすくなったことも理由かと思います。この段階で7セメスター目になっていました。速い人なら卒業しているころです。それでもITのアルバイトが見つかったというのはとても嬉しかったです。

【力がついてきた(気がする)】

ITのアルバイトを始めて1年したあたりから、大学で習った理論とバイトでの実戦経験が脳内で出会いを果たしたのか、Informatiker(ITする人)としての力がついてきた実感がありました。最初のころはなかったInformatikの思考回路が身に着いた感覚です。大学での勉強が確実に土台になって、そこに実戦経験が積みあがって、見えるものが全く違いました。
卒論を書き始めるころには、暗いトンネルの中から出口の光が見えてきました。あそこにゴールがある、と。卒論については別記事でまとめましたので、よろしければ参考までに

【消えていった友達たち】

大学の課題はグループで取り組むことも多いです。一人提出が可能でも、2-3人のグループでの提出が推奨されます(採点する側の負担軽減という意図もあるけれど、教えあったりディスカッションするグループワークの効果も期待されているかと)。
そういうわけで、自然と勉強グループができます。授業で隣に座り合わせた人だったり、そうやって知り合った人の友達も入ってきたり、あとはFachschaft(学部の学生自治会のようなもの)が運営しているTelegramの科目チャットで仲間を見つけたり。そうやって知り合ってコンスタントに一緒に勉強したり連絡したりした人は合計で10人ほど。他にも1セメスタ特定科目だけ一緒にやってその後あまり接触しなかった人もいます。
この10人ですが、2人は先に卒業していき、1人はもうすぐ卒業、残りは退学していきました。中退率70%という話もあるので、まさにそれ。原因には、入学制限がないのでAbiturなどの大学入学資格があれば誰でも始められるため入学時に足きりがない、ITは最近のトレンドで人気専攻のため「プログラミング」をしに来た人が数学などの理論科目が多くて挫折する、などがあるかと。いずれにしても一人、また一人と仲間が消えていくのは不安になりました。才能や適性があるわけではない自分が生き残ったあたり、一部の天才を除けばもはや根性の世界な気もします。わからない、難しい、けど諦めないで食らいついていけば理解できて試験に合格できて卒業に辿り着ける。しゃがんでも転んでも吹き飛ばされてもまた立ち上がって、最後に立っていれば勝ちです。

【めでたく卒業】

先日最後の試験の結果が出て、合格とのことなのでこれで卒業になりました。いざ実際に目の当たりにすると、本当なのか自分でも疑ってしまいます。1セメスタ目の絶望を思い出すと、やる決心を崩さなかったあの頃の自分に結果報告をしてあげたいくらいです。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?