ドイツの大学の期末試験(筆記)
ドイツの大学TUドルトムントでBachelor Informatikを専攻しています。これまでの期末試験を思い出しながらまとめました。
【期末試験とは? Klausur vs mündliche Prüfung】
多くのモジュール(科目)では、ほぼ期末試験のみで成績が決まります。期末試験を受ける条件としてStudienleistung(宿題を提出して一定点数以上の得点をする)が求められる場合も多いですが、ほとんどの場合、成績は期末試験のみで決定されます。一部モジュールでは、期末試験が合格の範囲内の場合に限り、Studienleistungの出来に応じて成績を引き上げるという場合もあります。
一般的に期末試験はPrüfungと呼ばれ、Klausur(筆記試験)とmündliche Prüfung(口頭試験)があります。ワシはmündliche Prüfungの経験はないので、以下では主にKlausurについてまとめます。
この2つの用語以外にはTestatという語もあり、中間試験や定期試験に相当します。Studienleistungのように期末試験の受験要件になる場合もあれば、モジュールHardware PraktikumのようにTestat3つでPrüfungとする場合もあります。
【ドイツのKlausurの特色】
持ち物はいつも、ほぼ同じです:ボールペン(黒か青)、身分証・学生証。試験によっては、Klausurzettelなどと呼ばれる、公式などをメモしたA4一枚の「虎の巻」やプログラム不可の電卓が許可される場合もあります。他には飲み物・食べ物、医薬品(リップクリームとかw)も持ち込み&消費可です。禁止されていないもので持ち込んだほうがいいのは「腕時計」。
〈Prüfungsfähigkeitと本人の確認〉
試験問題が配られる前に、まずはPrüfungsfähigkeitの確認が行われます。試験担当者が一通りルールを読み上げ、最後に「Prüfungsfähigではない人は手をあげてください。名前を記録します。その後医者に行ってAttest(診断書)を貰い試験課に提出してください。」といいます。体調不良なとで当日に欠席を決めた場合はここで申し出るのが一番確実です(*後述参照)。その後、試験問題と答案用紙が配られ、試験開始です。回答時間中に試験担当者が巡回し、身分証や学生証で本人確認をします。身分証として有効なのはパスポートや滞在許可カード、Perso(ドイツやヨーロッパの個人ID)です。EUの免許証や健康保険証でも大丈夫な場合もありますが、法的にも絶対に本人確認に有効なのはパスポートとPersoです。
なおこの際に机の上に置いているものの検閲がされます。例えば、電卓がプログラム可のものではないか、パン袋の中に何かを隠し持ってないか、などなど。
*TUドルトムントのInformatikでは、試験からの辞退は前日の23時59分まで理由の陳述や証拠提出などなしにオンラインで行うことができます。この時点では「自信ないからやっぱりやめた」がありです。当日辞退の場合は、前述のように会場で辞退を申し出るか、試験開始前に医者に行ける場合は診断書を貰い試験課に提出することもできます。事故や気絶、診察や外出の禁止・不可(例えばコロナとか)などで試験会場にも医者にも行けない場合は試験課に電話とメールです。いずれの場合にせよ、疑わしい前歴があるわけではければ前日までに辞退したのと同じく不利益のない扱いになります。
ドイツでは同一内容の試験は3回までしか受けれない(3回落ちたらその専攻からドイツ全土で排除)という強い措置が取られるため、病気やケガ、その他の「例外」については寛容な傾向があります。寛容とはいえしっかりと「証明」する必要はあります。所属先のルールをしっかり読みましょう。
〈ボールペン!〉
日本と比べて特徴的なのは、回答は黒か青のボールペンで行わなければならないことだと思います。DSHもそうで、ドイツ語コースでも同じかと思います。書き損じや訂正は、訂正線で示します。訂正線といってもきれいなものではなく、グジャグジャっと塗りつぶすというか……。多くの試験では、1つの設問に複数の回答が見受けられる場合は、最初(または最後)のものを用する場合と、一番得点の低いものを採用する場合があります。いずれにせよ、間違いに気づいた場合はきちんと塗りつぶして書き直しましょう。
試験前の練習問題からすでにボールペン回答の練習を始めたほうがいいと思いいます。特にワシみたいに視覚情報への依存が高い人は。考えてる間に消しゴムで消してきれいに清書して…というのが利かないので、自分なりに見やすいように回答を書く癖をつけたりと、ボールペンだけで気持ちよく回答を続ける予行練習は大事です。
〈長い!〉
日本の大学では文系だったのもあって語学系以外はレポートばかりだったので日本の大学の試験がどんなものかはわかりませんが、こちらでは3時間とかかかるKlausurもよくあります。前述の「飲み物・食べ物・医薬品の持ち込み可って何?」って思った方もいるかもしれませんが(ワシも最初そう思いました)、3時間かかるので人間としての必需品は持ち込みしていいよというものです。もちろんトイレも行けます:行きたくなったら手をあげて試験担当者に名前と時間をメモさせて、答案用紙と問題用紙を預け、付き添われてトイレに行きます。
飲み物・食べ物に詳細な規制はありませんが、常識の範囲内で、匂いの強くないもの、食べるときに音がうるさくないもの、といった暗黙の了解はあります。見た感じ、水やお茶、コーヒーにパンやチョコレート、ビスケットやナッツが多いですね。ケバブやGebratene Nudeln(焼きそば)はNGかと思います。ビールとチップスで攻める人を一度見てみたいですwおにぎりはもちろん大丈夫でした。
【傾向と対策?】
こちらでも、過去問や過去の出題記録(Klausurprotokol)は学生の間で出回っています。友人間など個人間でシェアが広がる非公式なものもあれば、Fachschaftが運営しているほぼ公式の過去問集もあります。日本の受験同様、難易度、よく出るテーマとテーマの変遷や選び方、「どんなふうに壁を設定してくるか」など傾向と対策が有効です。
【Klausureinsicht】
Klausureinsichtと呼ばれる、採点公開会があります。行くと採点された自分の答案を見ることができ、異議がある場合は申し出ることができます。ギリギリで落ちてしまった場合や、もう少しの得点で評点が上がる場合は行く価値があります。教材と見比べたり後続のために出題を記録すべく写真を撮ったりすることが許可される場合もあれば、試験中同様そういったことが禁止されている場合もあります。毎回ではないですが行ったことのあるKlausureinsichtについていえば、基本的にnettに採点されています。これは大学によるようですが。
【まとめ】
回答はボールペンで行うこと、試験時間が長いこと、同じ(内容の)試験は3回までしか受けれないので病欠などの場合の取り扱いに要注意、というところが重要項目です。特に3回ルールは専攻生命にかかわるので、志望先や所属先の大学のPrüfungsordnung(試験規約)をチェックです。わからなかったらFachschaftやモジュールの担当教官に質問しましょう。
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