踊れないマツケンと巡る1年
昨年の父の日。
大きな葉をわさわさ揺らし、楽しそうにサンバを踊っているかのように見える観葉植物が家に来た。家族からもらったその素敵な贈り物にマツケンという名をつけた。
マツケンの顔を毎朝拝んでは小さな幸せを噛みしめた。引越しをしてすぐだったこともあり、マツケンの存在は、我が家に彩りをもたらしてくれた。
そして、すぐに暑い夏がやってきた。
熱帯育ちで暑いのが得意なマツケン。
暑いのが苦手な人間。
毎日のクーラーによる乾燥だろうか。マツケンが少しずつ疲れを見せ始めた。葉っぱの周りが黄色く染まり、丸まっていく。
「なんだか元気ないね…マツケン」
絶対に枯らしちゃならん、とこまめに水をあげたり、日光浴をさせてみたりしたものの、少し回復しては、また元気がなくなる。というサイクルを繰り返していた。
きっとよくなると信じ、手入れをしていたが状況は変わらず。なんとか夏を越した。
栄養剤をあげたり、置き場所を変えたりと色々やってみた。しかし、以前のように華麗なサンバ姿を見ることは出来ないまま冬を迎えた。
マツケンが最も苦手とする季節だった。
寒さと乾燥のダブルパンチで、水やりのタイミングもよく分からない。
「次々、枯れていっちゃうね……」
もうマツケンの表情を見ても、日光を当てた方がいいのか、水をあげた方がいいのか、それとも何もしない方がいいのかもわからなくなっていた。
みるみる下を向くマツケン。
もう何をしても上手くいかん。何とか冬を乗り越えたが、家に来た時とは変わり果てた姿になってしまった。
ようやく温かくなってきた3月。
ニキニキと元気な新芽が出てくれることを期待していたが、うんともすんとも言わない。。
「マツケン…、もうだめかも」
サンバどころではなく、手を上げることも、身体を揺らすことさえもできなくなったマツケン。
5月には、すべて枯れ果ててしまった。
「しょうがないよ、育て方難しかったね…」
家族は優しい声をかけてくれたが、枯らしてしまったことへの申し訳なさや、どこかで心の拠り所にしていたところもあり、やるせない気持ちだった。
枯れてしまったマツケンとサヨナラするのが忍びなく、しばらくリビングに置いたり、庭に置いたりしてみたが、当然生き返るなんてこともない。
環境の変化に順応させることができなかった。マツケンにとって大変な一年だったんだろうな。。
ふとマツケンと我が家の一年が重なった。
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長年、慣れ親しんだ街から、見知らぬ環境に家族7人、引っ越しをして一年。
環境が変わり、家族とすれ違うこともあったし、衝突することもあった。それぞれが心にさまざまな葛藤を抱えていた。
でもみんな環境に順応するために頑張った一年だった。一生懸命やっても時には上手く行かない事もある。
この過程がきっと大切なのだろう。
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こんなことを考えていたら、何だかスッキリして気持ちを整理することができた。さぁ、また前へ進もう。とマツケンを処分しようと外に置いた鉢植えを手にした。
!
!!
!!!
カタツムリの触覚のような新芽がニキニキと顔を覗かせているではないか!大声で叫んだ。
「マツケンが生き返ったぁぁぁ!!」
1週間後には、もう1本新芽が顔を覗かせた。
マツケンと共に暮らした一年。
いろんなことを学んだ。
サンバが踊れるようになるか、わからないけど、もう少しちゃんと育てられそうな、マツケンと向きあえそうな気がする。これからもよろしく。
そして新しい家族も増えた。
マツケンを失い元気を失っていた私に奥さんからプレゼント。
父の日に長女がプレゼントしてくれた枝豆栽培キット。
燦燦と輝く太陽に、十分過ぎる養分をもらった。
また新しい1年が始まる。
叩けボンゴ、踊れサンバ。
🙇♂️マツケンファンのみなさま、気を悪くされましたら申し訳ございません。マツケンサンバ大好きです。
最後までお読みいただきありがとうございました。 いただいたサポートは他のクリエイターさんのサポートと奥さん子どもにあずきバーを買ってあげたいです。