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古典文学に探る季語の源流(全12回の連載)

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俳句結社「松の花」の結社誌に連載しているコラム『古典文学に探る季語の源流』をnoteにも転載しております。2020年は奇数月の号、2021年は偶数月の号に掲載した記事を合わせ、毎… もっと読む
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#エッセイ

古典文学に見る季語の源流 第八回「蝉(蟬)」

古典文学に見る季語の源流 第八回「蝉(蟬)」

この時期の風物詩として、「蝉(蟬)」を取り上げよう。

蝉といえば、何と言っても芭蕉の句〈閑さや岩にしみ入る蝉の声〉であろう。山形県山形市の立石寺(りっしゃくじ)(山寺)において、一六八九(元禄二)年五月二十七日に詠まれた句である。

戦前、斎藤茂吉がこれはアブラゼミだと言い出したことがある。その説に小宮豊隆が反論、細く澄んだ糸筋のようなニイニイゼミの声のほうが「岩にしみ入る」にふさわしいと主張し

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