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古典文学に探る季語の源流(全12回の連載)

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俳句結社「松の花」の結社誌に連載しているコラム『古典文学に探る季語の源流』をnoteにも転載しております。2020年は奇数月の号、2021年は偶数月の号に掲載した記事を合わせ、毎… もっと読む
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2021年9月の記事一覧

秋の風 ~古典文学に見る季語の源流 第九回~

秋の風 ~古典文学に見る季語の源流 第九回~

季語「涼し」は、俳句初心者を混乱させる。涼しく過ごしやすくなった秋ではなく、夏に見出す涼しさを詠む季語であるからだ。

さらに難しいのが「夜の秋」。秋とあるが、こちらも夏の季語である。晩夏の夜に早くも秋の気配が漂うさまをいう。この秋の気配の正体は何かと言えば、風である。昼間はうだるような暑さであっても、夜には涼しい風が吹いたりする。

涼風が秋のサインであることは、百人一首〈住の江の〉で名高い藤原

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