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個人的名盤について勝手に語る(1)

あくまでも個人的な意見、独り言的なことですけど、今回は大好きなアルバム5枚について語りたいと思います。

好きな音楽について書くこと、音楽を共有することのが大好きだから、こういう文章のは定期的に書きたい!

Pink Floyd『Wish You Were Here(炎)』(1975)

もしこの世にアルバムを一枚だけ残せるなら、これを選びます。自分にとっては、フロイドの音楽の集大成、プログレッシブ・ロックやアート・ロックの頂点。

シド・バレットに捧げた44分間のただ美しい音楽。ギルモアのギターを聴くと人間の喜怒哀楽を感じる、落ち着く。ウォーターズのソングライティング、ライトのハーモニーの使い方や音色の作り方、メイソンの太空感に溢れるドラムス……とにかく、フロイドの音楽の空間感や浮遊感が好きです。

一番覚えてるのは、すぐ耳を惹く「シドのテーマ」(♭B、F、G、Eの4つの音符)。初めて聴いた時にも強く記憶に残ったけど、聴けば聴くほどこのモチーフの天才を理解できた。ギルモアのチョーキングやスライドの運用もすごく特別で、聴いた瞬間で「これぞギルモアだ!」となんとなく分かる。

もう言葉で説明できない。是非通して聞いてほしい。聴かないと後悔する。正直、Shine On You Crazy Diamondのギターソロは何度聞いても泣きそうになる。何度聴いても新しい発見のある、完璧だと言っても言い過ぎない音楽。

関連アルバムのおすすめ:もう要らないと思いますが、Pink Floydの『Meddle(おせっかい)』、『The Dark Side of the Moon(狂気)』、『Animals』と『The Wall』

Talking Heads『Remain in Light』(1980)

パンク、ファンク、アフロビート、初期ヒップホップなどを取り入れた、ポスト・パンクやニューウェイブの頂点とも言える一作。

でも、最初はFela Kutiの音楽を真似しようとしたらしい。だけど、良い作品は「真似」こそから始まるけど、「真似」で終わるわけではない。ヘッズはFela Kutiの音楽を真似しながら、色々な要素を取り入れ、ロックの既成ルールを全部取り壊した。

要するに、ヘッズのメンバーが聴いたこと、見たこと、感じたこと…を全部このアルバムに入れ込んで、革命的な一枚になりました。はい、ルールはあくまでもガイドライン。「音」自体が一番大事。熱情を込めて、色んなことをやってみて、ルールを破りましょう。

このアルバムの主旨は、プロデューサーのBrian Enoの言葉で説明すると、「What a fantastic place we live in. Let's celebrate it.」(我らが生きている世界は素敵だ。それをお祝いしましょう)。本当にそうです。このアルバムを聴くと思考を忘れて、世界の素晴らしさを感じる。芸術や音楽は結局「考える」ためのものではなく、「心の奥で感じる」ものです。「ただ美しい」と言葉を失う、無意識に踊り出す……それこそが音楽。

芸術は知性や理性の域を超える。

あ、「Born Under Punches (The Heat Goes On)」冒頭の叫び(「あ〜!」)はいつになっても忘れない!

最後、音楽大好きなアイドル内山結愛さんによる『Remain in Light』のレビューも是非読んでください!

関連アルバムのおすすめ:Talking Heads『Fear of Music』、Fela Ransome-Kuti & The Africa '70『Afrodisiac』、King Crimson『Discipline』

Sigur Rós『Ágætis byrjun』(1999)

デビューアルバム『Von』は313枚しか売れていなかったけど、Sigur Rósは諦めなかった。音楽の方向性を変更し、キーボーディストのKjartan Sveinssonを迎えて、音楽の未来を変える一枚を作り上げた。この一枚は『Ágætis byrjun』でした。

アイスランド語でágætis byrjunは「いい始まり」という意味です。その名の通り、このアルバムはSigur Rósを、ポストロックを世界中に知ってもらうきっかけになって、Sigur Rósの原点とも言える。

弓で奏でたギター、ストリングス八重奏、ホーン、電子音、Jónsiの歌声…で紡いだ交響的一作。正直、何回聞いてもアレンジのレベルの高さに驚く。たくさんの楽器を使っただけではなく、楽器の編成も有機的、音を重ねる感じもとても好き。

強弱法の運用も別格的。Sigur Rósの音楽には「甘い轟音」と「静かなアコギ」が併存する。轟音から柔らかな弾き語りに一瞬で変わることも多い。しかし、唐突感も全くない、むしろ落ち着くと感じる。こういう美しいクレシェンド、デクレッシェンドにうっとりする……

心の奥に沁みる、落ち着きたい時に聴きたい「ただ美しい」音楽。

関連アルバムのおすすめ:Sigur Rós『Takk…』、world's end girlfriend『Hurtbreak Wonderland』

Arcade Fire『Funeral』(2004)

「死亡」という重いテーマを扱うアルバムだけど、全く「暗い」「聴くと鬱になる」と感じない。

オルガンの独り言、ストリングスの大合唱、ずっと繰り返したピアノのフレーズ……冒頭は冬のカナダの郊外の夜みたいな気分で、孤独で美しい。しかし、美しいアレンジの向こう側は「死」の悲しみ。歌声も叫ぶようで、楽器の声もどんどんノイジーになっていく。はい、「死」に直面しなければいけない。

でも、悲壮感はもちろんあるけど、私が一番感じたのは「希望」。悲しみの先には希望がある。急にテンポアップしダンスリズムになるところもあって、突然にアレンジが「大きく」なるみたいなところもあって、ちょっと甘いところもあって……そういうところを聴くと「希望はまだあるんだ」となんとなく感じる。死に直面しなければいけない時もあるけど、結局前を向いて歩くしかない。

関連アルバムのおすすめ:Sufjan Stevens『Illinois』、Jim O'Rourke『Eureka』、Black Country, New Road『Ants From Up There』

sora tob sakana『sora tob sakana』(2016)

オサカナことsora tob sakanaの1stアルバム。マスロック、ポストロック、エレクトロニカ・フォークトロニカ、ニューエイジなどといった豊かな音楽性を持っているものの、アイドルポップらしいキャッチーな一面もある。私にとっては完璧なアイドルアルバム。

幼い頃の白昼夢みたいで、聴くと懐かしくなる、とにかく楽しい。世界観もとても独特で、『銀河鉄道の夜』とかの童話の世界やジブリ映画の世界をなんとなく思い出す。あの頃の彼女たちの歌声はまだ未熟だったけど、その未熟さもオサカナの音楽に特別な色味を加えた。

ウォール・オブ・サウンドとか、複雑難解な変拍子や対位法とか、渋いところもありますが、音楽マニアックだけのための音楽ではない。元々ポストロック・マスロック好きな方はもちろん、普段アイドルとかしか聴かない人も全然楽しめる一枚。

マスロックの中では一番天真爛漫な名盤。音楽性を妥協せずに、アイドルしか表現できないものを表現し、アイドルらしい世界観を作り上げる。そういう音楽があるからこそアイドルを聴いている。

関連アルバムのおすすめ:sora tob sakana『World Fragment Tour』、Maison book girl『yume』

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