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45-2.セルフ・コンパッションを習得する

特集:心理支援の新たな動向!

下山晴彦(跡見学園女子大学教授/臨床心理iNEXT代表)
中野美奈(福山大学准教授)

Clinical Psychology Magazine "iNEXT", No.45-2

「有料iCommunity」特別企画:「セルフ・コンパッション」体験プログラム

セルフ・コンパッションを体験し、習得する

【日時】全4回 各回9時〜10時30分の90分
①    5/11 (土曜) 『マインドフルな気づき』
②    5/25(土曜) 『共通の人間性』
③    6/8(土曜)  『しんどい感情との付き合い方』
④    6/22(土曜) 『他者へのコンパッション』
※)参加者の皆様には、プログラムの効果を検討するためのアンケートにご協力をお願いします。

【講師】中野美奈(福山大学准教授)

【申込み】
🔸臨床心理iNEXT「有料iCommunity」メンバー(無料)
 ☞ 
https://select-type.com/ev/?ev=-OkaFZZpuhk
※「有料iCommunityメンバー」とは、臨床心理iNEXTの有料会員で、かつiCommunityの利用登録をした方のことです。

🔸上記以外の心理職を含む対人援助職及び一般の方※)(4000円)
 ☞ https://select-type.com/ev/?ev=k0UeNagqoog

※)セルフ・コンパッションは、日常生活を安心して過ごすための、そして健康に過ごすためのとても役立つ考え方であり、行動の仕方です。そのため、一般の方の参加も歓迎します。

中野美奈先生

iCommunity講習会

なぜLGBTQは、相談に行けないのか?
−自死や自傷に至る“生きにくさ”を援助職は理解できているか−

【紹介PV】
https://youtu.be/1PvgmgeTu34si=J2ptqoJDgH0L3PEh

【日程】4月28日(日)の9時〜12時
【講師】みたらし加奈(公認心理師・臨床心理士)
【講師】松岡宗嗣(一般社団法人fair)
【ゲスト】石丸径一郎(お茶の水女子大学)

【申込み】
🔸<有料iCommunityメンバー※1> 1000円
https://select-type.com/ev/?ev=T4uoaGSQlSg
※「有料iCommunityメンバー」とは、臨床心理iNEXTの有料会員で、かつiCommunityの利用登録をした方のことです。

🔸<上記以外の対人援助職及び対人援助職を目指す学生※2> 2000円
※2)対人援助職(心理職、医師、看護師、PSW、SW、教師など)でLGBTQの相談援助に関わる方。なお、無料iCommunityメンバーはこちらで申し込みください。
https://select-type.com/ev/?ev=CnMX8hBQmM0

🔸<オンデマンド視聴※3> 2000円
※3)当日参加者との意見交換場面を除く部分の録画の配信
https://select-type.com/ev/?ev=xbDAPp-0iYw

iCommunity講習会

公務員系心理職の働き方&試験対策を知る
−現役の先輩に学ぶ−
🔸<オンデマンド視聴申込_4月23日まで> 1000円
https://select-type.com/ev/?ev=17YaQwLzEAM


1.    「セルフ・コンパッション」4回体験プログラム紹介

セルフ・コンパッションとは、自分に対して“思いやり”や“慈しみ”を持って接することを意味します。そうすることで自分を否定したりすることなく、ありのままを受け入れて自己肯定感を高めていきます。さらに、セルフ・コンパッションでは、自分への思いやりだけでなく、他者への思いやりも大切します。つまり、「自分を大切にし、他者も大切にする」という共通の人間性をいう意味を持っています。

その点で心理職をはじめとする対人援助職の方には、積極的にご参加いただきたく思っております。セルフ・コンパッションは、対人援助の基盤となる“共感”とも重なります。また、複雑性PTSDや愛着障害などの感情制御が困難な事例の対人援助で重要となる“安心感の提供”とも重なります。それとともに対人援助職自身のセルフケアにも役立ちます。多くの方の参加をお待ちしております。
臨床心理iNEXTは、2月23日に実施した研修会「セルフ・コンパションを学び、体験する」講師の中野美奈先生をお迎えして、5月11日から隔週土曜日4回シリーズで「セルフ・コンパッションを体験し、習得する」講習会を開催します。時間は毎回9時〜10時30分の90分です。申し込みは、冒頭のご案内をご確認ください。


2.    講習会プログラム(1)

講師の中野先生より、プログラムの目標と、各回の内容についてのメッセージをいただきましたので、以下に掲載します。さらにその後に、臨床心理iNEXT代表の下山晴彦が中野先生にセルフ・コンパッションを学ぶ意義についてインタビューをしました。

【プログラムの目標】セルフ・コンパッションとは,大切な他者に対するのと同じように,自分自身にも優しさと思いやりをもって接することを意味します。自分が辛いときに自分の良き友になること,自分の敵ではなく味方になることは,意外と難しいものかもしれません。このプログラムは忙しく働く人を対象に,セルフ・コンパッションについてわかりやすく説明し,長時間の瞑想はせず,セルフ・コンパッションを高める手軽な様々なワークをご紹介します。

【第1回:マインドフルな気づき】
マインドフルネスとコンパッションは鳥の両翼に例えられ,両者がそろってはじめて正しく機能すると言われています。マインドフルネスは,「自分への優しさ」「共通の人間性」と共に,セルフ・コンパッションの構成要素のひとつでもあります。第1セッションではこの「マインドフルネス」についてご説明します。また,日々の中でマインドフルネスを高め,自分に優しくするためのワーク,自分の「価値」に注目するワークなどをご紹介します。
【第1回のワーク】
・仕事の合間にセルフ・コンパッションのあるストレッチ
・自分にとって,心から意味があると感じる言葉
・慈悲の瞑想(自分に対して)


3.    講習会プログラム(2)

【第2回:共通の人間性】
「共通の人間性」も,セルフ・コンパッションの構成要素のひとつです。人間は誰でも欠点がありながらも成長を続ける存在であり,誰でも失敗するし,人生には例外なく困難が伴う。人間なら誰にでも共通しているこの事実を,辛いときや悩んでいる時には忘れてしまいがちです。自分と他者は根本でつながっていると知っていることは,心の安定・安心にもつながります。第2セッションでは,「共通の人間性」についてご説明し,他者とのつながりを感じるのに役立つワークをご紹介します。
【第2回ワーク】
・受け取って送るコンパッションの瞑想
・コンパッションを持つ理想的なキャラクターを作る

【第3回:しんどい感情との付き合い方】
怒りや悲しみ,自己嫌悪などのネガティブな感情はとてもしんどいですよね。物事がうまく進んでいるときは自分に優しくできても,ネガティブな辛い感情が生じたときには,中々難しいものです。そもそもネガティブな感情の役割は何なのか,自分のしんどい感情をどう取り扱えば良いのかを知っておくことはとても大切です。第3セッションでは,職場における事例なども使いながら,日常生活で生じるしんどい感情との付き合い方について扱っていきます。
【第3回ワーク】
・あなたにとっての自分に優しい行動
・特別しんどい感情に支配されそうになったら

【第4回:他者へのコンパッション】
このプログラムは全体をとおして「セルフ・コンパッション」を扱いますが,自分を大切に扱うということは,他者を大切に扱うことでもあります。職場でも,同僚や部下などにコンパッションを持って接することはとても大切です。第4セッションでは,セルフ・コンパッションを高めるスキルを学んだうえで,日常生活において他者へコンパッションを向けるコツや簡単な習慣をご紹介していきます。どうしても自分に批判的になってしまう人は,他者へのコンパッションを意識するところから先にスタートするのも良いかもしれません。
【第4回ワーク】
・批判家の私,批判される私,コンパッションのある私
・他者に送るコンパッションの瞑想


4.    過剰適応の日本人にとって学ぶ意義

[下山]中野先生は、日本人にとってとても意味のあることだということをお考えだと聞いています。まず、その点から多くの日本人がセルフ・コンパッションを学ぶということの意味を教えていただけますか。

[中野]特に日本人は、自分に厳しい人が多いと思います。また、「自分はこれでいいんだ」という自己肯定感が低い人も多いと思います。結果として、自分に対しての安心感がない人が多いと感じます。ちょっと語弊があるかもしれないんですけど、自分に自信がない人が多いと言っても良いと思います。

それは、日本人は他者の目をすごく気にして他者と自分を比較する傾向が高いことと関連していると思います。他の人の目を気にしたり、他の人の意見をすごく気にしたりします。そのため、何か失敗したり、恥ずかしい思いをしたら、他人がどう思うだろうと感じてぐるぐる考え込んだり、ものすごく自分に対して批判的になったりするのだと思います。そのような日本人にとっては、セルフ・コンパッションを学ぶ意義が特にあると思っています。

[下山]日本人は、他者の期待に応えて社会に適応しようという傾向が強いですね。そのために、人の目を気にして、適応できない自分に厳しくなる傾向が強いと思います。自分を抑制して過剰適応する傾向が強いですね。自分を抑えて空気を読んで、期待に応えようとする。そして、うまく期待に応えられないと自分を責めたり、恥ずかしいと思ったりする。自己肯定感も低下しますね。


5.    自己肯定感を高めるセルフ・コンパッション

[下山]そのような状態にセルフ・コンパッションは、どのように役立つのでしょうか。

[中野]自分自身を味方につけることが大切だと思います。「NO」、つまり「それではダメだ」と攻撃してくるのが、自分自身からの攻撃であっても、他者からの攻撃であっても、結局それらは同じ攻撃です。自分が自分を攻撃するという部分を、「敵」から「味方」に変えてあげることが、自信や自己肯定感を高めることに役立つのですね。

[下山]確かセルフ・コンパッションは、脅威に対してどのように対応するかということが、その理論的な基礎となっていましたね。

[中野]そうですね。脅威を受け取った時に、“闘う”か“逃げる”か、あるいは“固まる”かとうところに行くのではなく、“安心”や“安全”というところに行けることがセルフ・コンパッションでは重視されます。それは、他者とのつながりを太くして生きやすくしていくことにつながります。

[下山]他人の期待に応えようとすることは、他人が脅威にもなりやすということですね。そして、他者の期待に応えられないということで自分を責める場合には、自分が自分自身の脅威になってしまうことですね。そのような自分を責める行動を変えていくことがセルフ・コンパッションの目指すところですね。

[中野]そうですね。自分だけじゃなくて、他者についての考え方も変わっていくと思います。セルフ・コンパッションの概念の構成要素の中に「共通の人間性」があります。その他者と自分に共通する“つながり”を感じるところを強くすることで、「他者とは,自分を批判してジャッジする観客のようなもの」という考え方がなくなります。それに替わって同じ人間としての“つながり”を感じながら接することができると素敵ですね。例えば、人前で何か喋る時に周りの「観客がみんな敵に見える」か、あるいは「つながりを持った同じ人間として見えるか」では、そこでの気持ちは大きく違ってくると思います。


6. 共感疲労になりやすい対人援助職にとって学ぶ意義

[下山]なるほど、そうですね。次に、もう一つ伺いたいことがあります。今回の企画では、心理職だけでなく、対人援助職の皆さんにも広くご参加いただけるようにしました。中野先生としては、心理職を含む対人援助職にとってセルフ・コンパッションがとても大切であると考えておられると聞いています。対人援助職がこのセルフ・コンパッションを学ぶ意味を教えていただけますか。

[中野]対人援助職が大変なことは、共感疲労を持ちやすいことですね。大変な思いをして日々働かれていると思いますが、その大変さの中に自分を犠牲にする精神、つまり「自己犠牲の精神」が強くあると思います。ついつい自分を後回しにして他者の方を優先して他者に尽くしてしまう。ついつい後回しになってしまう自分自身も、実は同じ人間であることが見落とされてしまう。そうなると、他者と同じように自分自身も大事にされるべき存在だということが抜けてしまう、それは危険なことだと思います。

[下山]他者の期待に応えるという日本人の特性に加えて、対人援助職としてサービスをしなければいけないという職業意識で自分の感情を抑えてしまう。共感することが感情労働となって、知らず知らずのうちに自分を抑え、逆に自分を責めてしまうことは、共感疲労となり、さらにはバーンアウトにつながりますね。そういう危険を防ぐためにも、セルフ・コンパッションを用いて自分のケアをすることが必要ですね。


7. 対人援助職の基盤となる自分も他者も大切という態度を学ぶ

[中野]そうですね。ケアのために必要だし、そもそも自分自身への向き合い方としても必要ですね。セルフ・コンパッションを習得することで、自分自身も尊重されてしかるべき、同じ人間なんだという、対人援助の前提を意識できるようになると思います。

[下山]そういう意識が出てくると、セルフケアだけでなく、対人援助の仕事をする上でも自然な対応ができるようになりますね。つながっている人間への共感ということで、自分も大事にして他者も大事にするという無理のない共感や尊重ができるようになりますね。そのような対人サービスの基盤を習得できるところに、セルフ・コンパッションを学ぶ意義がありますね。

[中野]やはり、すごく無理して自分を責めながら働いていても、それではサービスに限界がありますね。歯を食いしばって対人援助をしていると、それが最終的には怒りや恨みに発展してしまう場合もあります。あるいはもうバーンアウトしてしまうこともあります。ですので、我慢して自己犠牲の精神で、というのは結局長続きしないですね。ボランティアで人に尽くしている人は、自分も大切にして笑顔で働いていると思うんですよね。例えばボランティア等で他者に尽くしている人が笑顔で生き生きされているのは,決して自己犠牲の精神でされているのではなく、自分も大切にして自分も喜びを感じながら活動されているからだと思います

[下山]そのような他者も自分も大切にする対人援助のあり方を体系的に学ぶことが、今回の4回のプログラムの目標ですね。

[中野]そうですね。各回のプログラムでは、説明の部分とともに、ワークを大切にして体験的に学ぶ方法も紹介していきたいと思っています。

[下山]わかりました。それでは、4回よろしくお願いします。


8. 臨床心理iNEXTのiCommunityご利用のお勧め

本企画は、臨床心理iNEXTの「iCommunity」の特別企画として開催します。「iCommunity」は、メンバーが協力して心理専門職として技能を学ぶ場となっています。講師の中野美奈先生も「iCommunity」のメンバーです。そこで中野先生の許可を得て、iNEXT有料会員でかつ「iCommunity」にも登録済みの皆様には、今回の研修会に無料で参加いただけるようにしました。「iCommunity」内の掲示板では、セルフ・コンパッションの学び方について、中野先生と交流することも可能となっています。(詳細は近日公開)

現在「iNEXT有料会員」の方は、簡単な手続きで「iCommunity」にも参加できます。その際、追加費用は発生しません。ぜひ、手続きをした上で無料でご参加ください。まだ臨床心理INEXTの有料会員でない方は、心理職(公認心理師/臨床心理士)あるいは心理職を目指す学生であれば、すぐに「iINEXT有料会員」になることができます。その上で「iCommunity」にご登録ください。

申込期間内に、iNEXT有料会員登録とiCommunityへの登録をお済ませいただければ、無料でセルフ・コンパッションのプログラムに参加できます。「iCommunity」の登録手続きについては、下記をご覧ください。

iCommunity登録方法 ※https://cpnext.pro/lp/icommunity/

■記事校正 by 田嶋志保(臨床心理iNEXT 研究員)
■デザイン by 原田優(臨床心理iNEXT 研究員)

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臨床心理マガジン iNEXT 第45号
Clinical Psychology Magazine "iNEXT", No.45-2

◇編集長・発行人:下山晴彦

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