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22-3.普段使いのシステムズアプローチ講習会


(特集 研修──秋の大感謝祭)
田中 究(関内カウセリングオフィス代表)
下山晴彦(東京大学/臨床心理iNEXT代表)
Clinical Psychology Magazine "iNEXT", No.22


1.普段使いのシステムズアプローチ

“システムズアプローチ”というと家族療法を連想する人が多いのではないでしょうか。もちろん家族をシステムとしてみることで家族の動きのパターンが見えてきて理解が深まります。しかし,システムというのは,家族だけではありません。学校だって会社だって,さらにはボランティア集団(例えば,お祭りを運営する町内会)であっても,社会的な組織として機能しているのであり,そこには必ずシステムとしての動きがあります。

しかも,私たちは,誰もが何らかの社会システムに関わりながら生活を営んでいます。したがって,その人の生活のあり方をより深く理解するためには,システムズアプローチの見方は必須なのです。心理支援においても,クライエントをより深く理解し,問題の解決に向けて適切に介入するためには,システムズアプローチは大いに役立つのです。

つまり,システムズアプローチは,家族や学校という社会システムだけでなく,個人を理解し,関わるためにも無くてはならない必需品なのです。なぜならば,誰もが社会システムを生きているからです。まさにシステムズアプローチは,心理職にとっては,より良い実践をするために役立つ,普段使いのツールなのです。

そこで,臨床心理iNEXTでは,普段使いのシステムズアプローチ講習会を開催することとしました。講師は,『心理支援のための臨床コラボレーション入門──システムズアプローチ,ナラティヴ・セラピー,ブリーフセラピーの基礎』(遠見書房) の著者である田中究先生にお願いをしました。

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2.普段使いシステムズアプローチ講習会

システムズアプローチの初心者でもわかりやすいように基礎的概念から説き起こして最終的には,システムの観点から個人,家族,学校に適切に関わっていくコラボレーション技能の習得を目指す3回シリーズの講習会を開催します。

秋の大感謝祭ということで,3回の講習会計6時間で臨床心理iNEXT会員は4,000円,一般6,000円と,破格のお値段でのご提供となります。内容も,参加費も,たいへんお得な企画となっております。どうぞ,お見逃しのないように,ご愛顧をお願い致します。

〈皆んなの講習会〉
普段使いのシステムズアプローチを学ぶ


【講師】田中 究(関内カウセリングオフィス代表)
【日程】第1回(10月24日),第2回(11月14日),第3回(12月5日)
いずれも日曜日で,時間は13時~15時。※1)

[第1回]システム,コラボレーションの基礎的発想とフレーム概念
[第2回]ジョイニングおよびストーリー構成とその変容
[第3回]パターンの視点,臨床実践における具体的運用

【申込】下記URLから
◆臨床心理iNEXT有料会員:4,000円
 ⇒ https://select-type.com/ev/?ev=Tp6GlNfvtmc
◆iNEXT有料会員以外:6,000円
 ⇒ https://select-type.com/ev/?ev=zikjoWQwvU4

※1)全ての回に参加できなくても,休んだ回については,後日,講義動画を視聴できるようになっておりますので,安心してお申し込みください。

家族療法に関心がある方だけでなく,学校システムに関わるスクールカウンセラーの方にも役立つ内容です。もちろん社会システムを生きるという点でクライエント個人を深く理解し,クライエントの生活しているシステムに関わっていくことに関心のある心理職の皆様は大歓迎です。

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3.テキスト付きの3回の講習会の概要

本講習会は,『心理支援のための臨床コラボレーション入門──システムズアプローチ,ナラティヴ・セラピー,ブリーフセラピーの基礎』(遠見書房) をテキストとした講習会となっております。テキストがありますので,事前に予習,事後に復習ができ,学習を深め,定着することができます。

【第1回】(10月24日)
システム,コラボレーションの基礎的発想とフレーム概念

システムズアプローチは人間を環境から切り分けず,関係者同士を有機的にとらえながら,より良い人間関係を作るための実践と研究を積み重ねてきました。クライエント個人やその家族,それに問題に関わる学校,会社等の関係者とコラボレイティヴに関わる上で重要となる「フレーム」概念を取り上げます。

【第2回】(11月14日)
ジョイニングおよびストーリー構成とその変容

クライエントとのコラボレーションを行うには,セラピストがクライエントのフレームに積極的に合流すること,つまり,セラピスト側がまずもって変わろうとすることが肝要です。パンクチュエーションによって成立したフレームに,どのようにリフレーミングと呼ばれる変容が起きるのか,その機序について説明します。

【第3回】(12月5日)
パターンの視点,臨床実践における具体的運用

対人援助におけるシステムは,コミニケーションの連鎖的パターンを意味します。コミュニケーションを観察する,またそこからパターンを見いだすにはどのようなポイントに注意する必要があるのか,そして臨床実践にパターンとフレームをどのように応用することができるのか,事例を通じて具体的に検討します。

講習会の各回がカバーするテキストの章は下記のようになっています。
第1回:はじめに,序章(+13章),1章(+終章),2章,4章
第2回:6章(+12章),3章,5章,7章
第3回:8章,9章,10章

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4.今,日本の心理支援は大きな転換期

公認心理師の時代となり,日本の心理支援のあり方は180度転換しています。これまでは,内的世界を探求する個人心理療法が中心でした。それは,フロイトやユングといった大御所が個人オフィスで心理療法を施すという,プライベート・プラクティス(個人開業)モデルで提供されるものでした。これは,心理療法の古典的モデルといえるものです。

しかし,時代は,確実に進んでいます。現代社会の心理支援は,多職種で連携し,協働しての支援となります。支援の方法も個人心理療法の提供だけでは社会のニーズに対応できません。集団や家族を媒介とする支援,コミュニティ支援や予防などのサービスを幅広く提供することが求められます。

個人オフィスに高額な料金を支払って来談する人だけを対象とすることもできません。学校や企業といった社会組織における相談サービスも必要となります。無職であったり,障害を抱えていたりする人たちを支援する福祉サービスも重要な仕事となります。また,嗜癖や犯罪などの司法や警察関連の活動も求められています。

では,心理職はどうしたらよいのでしょうか。どのようなモデルや方法を使って,新しい心理支援サービスを組み立て,提供していけばよいのでしょうか。

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5.システムズアプローチは,“協働”のための必需品

保健医療,福祉,教育,司法・犯罪,産業・労働といった多様な場での心理支援では,プライベート・プラクティスモデルは,そもそも不適切です。個人心理療法モデルだけでは,対応できません。むしろ,そのような個人ベースの,社会に閉じたモデルに基づく実践は,社会システムにおいては孤立し,排除される危険さえあります。

そこで重要となるのがシステムズアプローチです。個人の相談であっても社会組織を生きる人間としてクライエントを理解し,クライエントと協働して問題解決に当たるためにもシステムズアプローチが重要となります。ましてや,学校や会社,あるいは何らかのコミュニティといった場での心理支援であればシステムズアプローチに基づく問題理解と心理支援は必須です。

さらには,多職種との連携や協働は,それ自体が支援や治療のシステムを形成するのでシステムズアプローチは必需品となるのです。日本の心理支援活動の革新的転回(イノベーション)のためにも,ぜひ多くの心理職の皆様が普段使いシステムズアプローチ講習会にご参加いただくことを期待しております。

なお,このようなシステムズアプローチと関連する“協働”をどのように日本の心理支援の現場に取り入れていくのかを議論するシンポジウムが,下記要領で開催予定です。こちらにも多くの方のご参加を期待しています。

〈参加集会型オンライン・シンポジウムのお知らせ〉
『心理職の技能として“協働”の活用に向けて』
−協働が困難な現実を越えるために−


【日程】9月20日(月曜:敬老の日)13時~16時
【申込】下記URLからの申し込み
◆臨床心理iNEXT有料会員:無料
https://select-type.com/ev/?ev=vg-WAnQI_Os
◆iNEXT有料会員以外:1,000円
https://select-type.com/ev/?ev=LgYXj9MnR1w

■デザイン by 原田 優(東京大学 特任研究員)

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