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28-4.第5回公認心理師試験☆対策決定版

(特集 新企画☆注目書籍の「著者」講習会)

宮川純(河合塾KALS)
髙坂康雅(和光大学)
下山晴彦(臨床心理iNEXT代表/跡見学園女子大学)

Clinical Psychology Magazine "iNEXT", No.28

【講習会のご案内】
■第5回公認心理師試験に備える■—迷走する公認心理師試験の行方を読む—

【日程】
5月14日(土)の9時〜12時
【講師】宮川純(河合塾KALS)
<新刊書>「赤本 公認心理師国試対策2022」(講談社)https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000360475
【講師】髙坂康雅(和光大学)
<新刊書>「公認心理師試験対策総ざらい 実力はかる5肢選択問題360」(福村出版)https://www.fukumura.co.jp/book/b588331.html
【申込み】
[臨床心理iNEXT有料会員](1,000円)https://select-type.com/ev/?ev=SrvafeicTrQ
[iNEXT有料会員以外・一般](3,000円)https://select-type.com/ev/?ev=hNErXEKRlW4
[オンデマンド視聴のみ](3,000円)https://select-type.com/ev/?ev=bkZXFi0AUzE

1.第5回公認心理師試験は始まっている

いよいよ第5回公認心理師試験のプロセスが動き出しました。
今年3月7日(月)に開始された受験申込受付期間が4月6日(水)を持って終了となりました。受験票は6月24日(金)に郵送され、受験生の手元に届きます。この時、受験生はいよいよ試験が目前に迫ってきていることを実感します。そして、試験日は7月17日(日)、結果は8月26日(金)に郵送されます。

新年度の4月半ばを過ぎた今、受験生にとっては試験準備に向けてお尻に火がつき始めた時期です。ただし、試験準備を考慮しなければいけないのは、今年受験する人たちだけではありません。現役の大学院生も試験内容や受験プロセスについて知っておく必要があります。それは、公認心理師試験の時期が年々早まっているからです。

2.第5回試験は大きな転換点になる

今後、試験の実施時期は早まり、2023年度は5月、2024年度は3月実施となります
https://www.mhlw.go.jp/content/000664599.pdf

したがって、大学院修了後に試験勉強を開始してもギリギリ間に合うのは、今年の試験が最後になります。来年度以降に受験する大学院生は、修士課程に在籍中に試験準備も並行して行わなければならなくなります。果たして臨床技能の習得と修士論文の執筆と並行して受験勉強はできるのでしょうか。大学院教育のへの影響という点で第5回試験は、大きな転換点になります。

また、今年は、5年間の移行期間における特例措置の最終年度であり、Gルート受験は今年度限りで終了となります。それに伴って一世を風靡した「現任者講習会」も終了となりました。このように今年の公認心理師試験は、移行措置が終わり、次年度からは最初から公認心理師養成カリキュラムで教育を受けた純粋培養世代の受験が始まるという点で特別な意味づけを持っています。

今年を最後として公認心理師の受験生の種類が変わり、それに伴って試験内容も大きく変わっていく可能性があります。

3.注目される第5回試験の難易度

第5回試験は、公認心理師試験の難易度という点からも注目すべき状況にあります。第1回は最初の試験ということで比較的容易な内容でした。ところが、第2回と第3回は、臨床心理マガジンでも批判的に取り上げたように難問奇問が多く、試験内容が難しくなりました。

ところが、第4回は、我々の批判が試験委員に届いたようで、難問奇問の数が減り、比較的答えやすい問題となりました。その結果、合格点を上げて合格者数を調整するという前代未聞のことが生じました。
https://note.com/inext/n/naeabbd54fb79

このように公認心理師試験は迷走を続けており、第5回はどのような問題内容になるのか、今後の試験の方向性を占う意味で重要な段階にきています。そこで、公認心理師試験の問題分析と受験指導の第一人者である宮川純先生※1)と髙坂康雅先生※2)をお迎えして、冒頭にご案内した第5回試験の準備のための講習会を開催することとしました。
※1)「赤本 公認心理師国試対策2022」(講談社)
https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000360475
※2)「公認心理師試験対策総ざらい 実力はかる5肢選択問題360」(福村出版)
https://www.fukumura.co.jp/book/b588331.html

4.第5回試験☆対策講習会

第5回試験の対策講習会のプログラムは、下記のようになっています

■第5回公認心理師試験に備える■
—迷走する公認心理師試験の行方を読む—

第1部 第5回公認心理師試験に備える 
1) 試験の動向と対策①
講師:宮川純(河合塾KALS)
2) 試験の動向と対策②
講師:髙坂康雅(和光大学)

第2部 公認心理師試験の行方を読む 
1) 公認心理師試験に取り組むために
講師:下山晴彦(跡見学園女子大学)
2) 鼎談:宮川+髙坂+下山(司会)
3) 参加者との質疑応答

宮川先生と髙坂先生には、それぞれの受験対策本の活用の仕方も含めて、受験生がどのように公認心理師試験に取り組むのが良いのかについてのノウハウをお話しいただきます。

お二人の先生の最新著書は、それぞれ特徴が違っています。そこで、受験生は、それぞれの御著書をどのように活用するのかを著者から直接学ぶことで、バランスの良い勉強計画を立てることが可能となります。

また、宮川先生と髙坂先生は、これまで臨床心理マガジン誌上や臨床心理iNEXT研修会において、公認心理の試験や制度、カリキュラムに関する議論を重ねてきています。
https://note.com/inext/n/n9853090d1c48
https://note.com/inext/n/n590c528d46e9
https://note.com/inext/n/na58aaf25c3f5

したがって、単なる受験テクニックだけでなく、心理職のライフデザインの観点から公認心理師試験とどのように向き合うのかといった議論などもしていきたいと考えています。以下のお二人の先生からの皆様へのメッセージを掲載します。

5.残り2ヶ月半! 赤本著者が教える直前対策、その①(宮川先生)

公認心理師試験まであと2ヶ月半となりました。特に今回、Gルートで受験する方にとっては現任者として受験できる最後の機会であり、このラストチャンスをなんとかものにしたいと思っている人は多いと思います。

しかし、Gルートの方もそうではない方も、基本的には働きながらの受験対策。特に4月は、人事異動やこれまでとは異なる業務を担当することになったり、お子様がいらっしゃる方は新年度の準備に追われたりなど、慌ただしく日々を過ごしている方が多いのではないかと思います。

私事ではありますが、私の子どもも一番上の子が小学校に入学し、その準備に追われるだけでなく、単純に帰宅時間が早いことから、生活が子ども中心になっており、思うように時間が確保できないことが多かったりします。

しかしこれらの事情は「不合格を受け入れる理由」にはなりません。

6.残り2ヶ月半! 赤本著者が教える直前対策、その②(宮川先生)

むしろ、忙しい生活の中でどれだけ工夫して、どれだけ時間を確保して、どれだけ集中できる環境を作り、どれだけ準備を整えることができるか。忙しさに文句を言ったり,気合いと根性に頼ったりしても、残念ながら時間は増えませんし、集中力を高めることはできません。大事なことは、工夫すること。考えることだと思います。

ただし、みなさんは1人で考える必要はありません。今回のイベントでは、私からもいろいろな提案をさせて頂きますし、髙坂先生も下山先生も様々なお話をしてくださることでしょう。イベントの中には私と髙坂先生,下山先生の3人での鼎談の時間や、質疑応答の時間なども用意しています。

ぜひともに考え、ともに意見を出し合い、みなさんなりに自分の生活の中に取り入れられそうなアイデアを1つでも多く持ち帰って頂ければと思っています。私が関わった著書「赤本 公認心理師国試対策 2022」の有効な使い方に関しても、私の方からさまざまな提案をさせて頂きますが、ぜひご視聴のみなさまからもチャット欄などで色々な提案を頂けたらと思っています。

みなさまのご参加を、こころよりお待ちしております。

7.講習会参加者へのメッセージ、その①(髙坂先生)

第5回公認心理師試験まで、あと100日を切りました。久しぶりに「試験」というものを受ける方、働きながら隙間時間で少しずつ勉強をしている方、家事や育児などとなんとか両立させながら勉強している方など、それぞれがどんな状況であっても、試験に対しては不安が募っていると思います。特に、現任者(いわゆるGルート)の方は、この第5回試験がラストチャンスですので、絶対合格しなければならないというプレッシャーもあると思います。

TwitterなどSNSをみていると、「○日で合格できる勉強法」や「○○だけ押さえておけば合格できる」というような書き込みをみかけることがあります。不安なときにはそのような書き込みにすがりたくなります。「今日は○○ページも勉強した」「○○って知っている?」のような書き込みをみると、自分の勉強量は足りないのではないか? こんなことも知らないのでは合格できないのではないか?と不安も増大します。

なかには、難易度も傾向も考慮していない問題を出して、受験生を落ち込ませるような書き込みもみかけます。しかし、これらの類の書き込みのほとんどは、不安増強剤にはなっても、合格の指針・近道にはなっていません。

8.講習会参加者へのメッセージ、その②(髙坂先生)

みなさんはなぜ勉強しているのでしょうか。「試験に合格するため、公認心理師になるため」というのは当然のことかと思います。でも、それだけでいいのでしょうか? 今勉強している知識は公認心理師になってから、要支援者の支援に活かすために必要な知識なのではないでしょうか?

そのように考えると、安易な勉強法に飛びついたり、合格への近道を探したりすることは、本質的ではないことがわかるかと思います。

本研修会では、直接試験に役立つような(点数に結びつくような)お話はしないと思います。むしろ、ちょっと試験とは離れた話をするかもしれません(執筆時点では,まだちゃんと内容は決めていませんが…)。でも、それは受験勉強という渦中のなかにいるみなさんが忘れがちな、そしてふと立ち戻って考えてもらいたい内容になると思います。

この研修会の時間だけでも問題集やテキストを閉じて、「どうして試験勉強しているんだろう?」「何のために公認心理師になろうとしているんだろう?」という原点に立ち戻ってみませんか? そこに立ち戻ることで、また勉強のモチベーションがあがってくることを期待しています。

9.公認心理師試験が大学院教育に及ぼすこと

私(下山)は、今年3月をもって東京大学を退職し、4月より私立の跡見学園女子大学の心理学部に勤めております。東京大学では大学院における臨床と研究の指導をしていました。公認心理師試験の実施時期は、修士課程修了の翌年度の夏以降でした。そのため、教育指導においては公認心理師試験を特に意識することはありませんでした。

しかし、新任地の跡見学園女子大学では、4月初めの大学院オリエンテーションにおいて、私自身も含めた教員から大学院生に対して「早めの公認心理師試験の準備の必要性」が伝えられました。また、学部教育においても、公認心理師資格取得を目指す人には、早くから受験を視野に入れた指導が必要となっています。

このような個人的な経験から、今まさに心理学教育が大きな転換期を迎えていることを実感しています。公認心理師試験の(悪)影響が、大学院教育課程、そして学部教育課程にどんどんと入り込んできます。公認心理師資格取得を目指す学生も、そしてその学生を指導する教員も、早くから受験勉強を意識するようになります。

10.公認心理師試験に振り回されないために

その結果として、試験に出ない課題や知識は蔑ろにされる危険が出てきます。心理学全般をバランス良く学ぶ態度が欠如していくでしょう。心理職を目指さない学生は、学習の目標を見失いがちになります。また、心理職を目指す人にとっても、おそらく臨床の実践技能の基本をじっくり習得することができなくなるでしょう。

なぜならば、公認心理師試験では実践技能を試されることはないからです。そして、修士論文をじっくり書いている余裕もなくなります。それは、公認心理師の到達目標となっているエビデンスベイスト・アプローチの形骸化につながります。そもそも公認心理師の養成カリキュラムは、心理職が研究をすることを想定していません。

ここにきて、臨床心理マガジンで議論してきた公認心理師の制度の矛盾が吹き出してきます。医療関係者の意向を踏まえて構築された制度に基づいて、医療関係者を中心に問題が作成されている(と推測される)公認心理師試験には、本質的に限界や矛盾があります。だからこそ、心理職は、公認心理師試験に振り回されずに心理職の専門性とは何かをしっかりと見据えて主体的に養成カリキュラムを実施していく必要があります。

今回の研修会では、公認心理師試験の限界を踏まえた上での取り組み方を考えていきたいと思っています。ですので、今年度の受験生だけでなく、これから試験を受ける学生の皆様、そして何よりも学生の教育と指導にあたる大学の教員の皆様にご参加をいただきたく思っています。参加の皆様との質疑応答の時間を多めに取ります。公認心理師試験に負けない、自由な、そして有意義な議論ができることを楽しみにしています。

■記事制作&デザイン by 原田優(公認心理師&臨床心理士)

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