ペタライト

やきもの屋さんは、仕事中ラジオを流しながら作業をしている所も多いので、聴いていた人も多いかもしれません。
先日放送されたNHKのカルチャーラジオ、科学と人間「宝石から鉱物まで石の魅力に迫る」では、身近なところで使われている鉱物をテーマにしていました。
そこで土鍋など直火掛けするやきものに使われている原料、ペタライトについての話題が登場していました。

前から、やきもの業界ではペタライトの値上がりや品薄が話題になっていましたが、まさにその件について触れていた訳です。
バッテリーに用いられるレアメタルのリチウムの需要が高騰した為、リチウムを含むペタル石の鉱山が中国資本に買収されました。
ペタル石自体はリチウムの含有量がそこまで高くは無いのでコストに見合わず、これまではリチウムを抽出するための鉱石としては用いられてこなかったようです。
そしてペタル石鉱山としても、リチウム原料として使ってもらえなかったものを土鍋の原料として買ってもらえていたので、これまではそれがありがたい話だったそうですが、リチウム需要が非常に高騰した為に、そちらの方面で買収されてしまい、土鍋原料側では入手しにくい状況になったということです。

どんなやきものも皆、一度は製品化する際に焼かれて超高温になる訳ですが、なぜ使う時になると火に掛けられるやきものと、そうでないやきものが生まれるのでしょうか。
やきものの製品化の時の焼成では、8時間以上の時間をかけてゆっくり温度を上げる為、穏やかに全体が満遍なく熱膨張して、割れることなく焼き上がります。(時々、急冷による冷め割れなんかも起こりますが)
土鍋のように直火にかけるような使い方をする時、急激な熱膨張が起こったと部分と、冷たい部分の温度差の熱衝撃で、直火仕様でない普通のやきものは割れてしまいます。
そこで直火利用したい土鍋などの原料には、熱膨張しにくい性質のものを使いたい訳です。
ペタル石をやきものとして高温で焼くと、同じ成分であるけれど原子の並びが変わって、β-ユークリプタイトなる物質になるそうです。このβ-ユークリプタイトは不思議な性質を持っており、熱を加えると熱膨張するのではなく、普通の物質とは逆に収縮するというのです。
直火に掛けた時、やきものに含まれるている他の物質は熱膨張する一方、β-ユークリプタイトがあるとその分は収縮するので、お互いがサイズ変化を相殺し合い、割れることなく直火使用が出来るという訳です。

今回のラジオ放送は、やきもの関係者に身近なものを取り上げていたので、話題となっている鉱物のイメージが浮かびやすく、いつもの放送よりも内容がいくぶんか頭に残ったのでnoteにメモしてみました。
しかし実際の鉱物や原料を見しながら説明を聞きたいなぁとやはり思ってしまうので、忘れない内にこの番組のテキスト本が、写真たっぷりで早いこと出版されて欲しいものだと感じました。