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心の10冊

本が広げてくれる世界には果てがない 厚みや形
装丁も様々に呼び掛ける 開いてごらん
重厚な一冊に真実の鍵 薄い一冊に真理がひらける

すきなときにすきなだけ ちいさい頃に文学全集や伝記
博物図鑑に親しんでいると より豊かな色彩にも出逢えそう
いつからでもスタート出来るのが 人生のよいところ
豊饒の大地は 目の前に広がっている

1.『いやいやえん』(中川梨枝子、大村百合子・’62初版 ’91第72刷・
      福音館書店)なにはなくとも この一冊

2.『エルマーのぼうけん』(R・S・ガネット、わたなべしげお訳・
  ’63初版 ’92第61刷・福音館書店)
表紙のうつくしい色彩に釘付けだった やさしい文に
止まらないわくわく 二ダースのキャンデーに二十五のサンドイッチと
船に乗ってはじまる冒険のための 大掛かりな準備にもどきどきして

3.『たんたのたんけん』(中川梨枝子、山脇百合子・’71初版
     ’92第44刷・学習研究所)だいすきだった 朝の風も 小高い丘も

4.『食べることも愛することも、耕すことから始まる---
      脱ニューヨーカーのとんでもなく汚くて、ありえないほど
      美味しい生活』(クリスティン・キンボール・’12・河出書房新社)
農や食への興味が高まっていた頃 著者の大転換に触れ
生きたいように生きられるんだと思った 完全自給も夢ではない
豊かで満ち足りて 心の底からうれしさが湧き起こる美味しい描写

5.『三銃士』(アレクサンドル・デュマ、生島遼一訳・’70・岩波文庫)
人生で最もわくわく読み進めた時間 疾風怒濤
愛と勇気と知恵と ロマン溢るる爽快さに痺れる

6.『西の魔女が死んだ』(梨木香歩・’94・新潮社)
素敵な装丁にうっとりしていた子どもの頃 手に馴染むサイズ感も好もしく
あざやかに広がった色彩空間 ゆるしや肯定 惹きこまれた世界

7.『りすのナトキンのおはなし』(ビアトリクス・ポター、
      いしいももこ訳・’73発行 ’88新版発行 ’90第6刷・福音館書店)
卓越した観察眼の持ち主である作者 たくさんのいきものたちが
いきいきと躍動する 緑もおうちも素敵に描き出され
石井桃子の著書も すてきな表紙の色合いと文が印象的

8.『旅をする木』(星野道夫・’99・文春文庫)
カナダにいた頃 アラスカがすきな友がよく話してくれた写真家
透徹した優しさ薫る文章は 自然と共にいきる実感がもたらすものだろう
諏訪哲史以来 つい声に出したくなる響きを持った文章
自然の香りが爽やかに立ちのぼる おわりなきアラスカの原野と叙情

9.『マーヤのやさいばたけ』(レーナ・アンダーソン、
   やまのうちきよこ訳・’89初版 ’91 第3刷・佑学社)
母の友人からの贈りものの野菜絵本 すきなタッチや色味ではないなぁと
レシピだけ楽しく読んだ記憶 いま開いてみると驚くほど近しい色合い

10.『竜馬がゆく』(司馬遼太郎・’75第一刷 ’93第49刷・文春文庫)
『燃えよ剣』に受けた衝撃から止まっていたが この時代のうねり
登場人物たちのドラマに頁を繰る指は震えた 歴史への関心を呼び覚ます


物語に惹かれる傾向はむかしから ふと思い出しては元気が出てくる風景は
本のなかに すばらしい訳者さんや出版社のおかげで
異なる文化圏のさまざまなドラマに触れ 未知への扉が開かれた

押し花づくりの木製品 香り豊かなタマネギのスープ 人形たちの物語
同じような年頃の主人公たちの 日々の暮らしや心の動きにときめき
いっしょに冒険という名の日常を送っているような 遠い空の下
同じようにおんなのこを生きる子たちがいると 勇気が湧いた

佐竹美保 スズキコージ 飯野知好 彼らの絵に魅かれ選んできた本は多い
よく読んだ『ちいさいえりちゃん』 『チロヌップのきつね』 柏葉幸子
森絵都 梨木香歩が紡ぎ出す広がり 世界のゆたかさに思い馳せ
『アニーとおばあちゃん』(Miska Miles, Peter Parnall)祖母に渡され
苦手だった色調 内容の重さに一読してしまっていたが 徐々に そして
祖母の死後は余計に沁みる ナバホの死生観 Native Americanのくらし
ヴェルヌの『十五少年漂流記』 『宝島』とどちらだったか
手に汗握るストーリーに夢中で頁を繰り 荒れる海への畏怖と憧憬

江國香織 山田詠美の作品群 日常を慈しみ周囲への愛を感じる
やわらかな姿勢 はっとして霞む視界に読み進め難かった『デューク』
(江國香織、山本容子)は 長く色んな人に薦めていた
『老人と海』(ヘミングウェイ) 生命のそこはかとないあかるさと愛
『銀の匙』(中勘助)「を」のうつくしさ 『第七官界彷徨』(尾崎翠) 
積まれた檸檬 巡り逢えてよかった なつかしくも新鮮な世界たち

夢中で読んだ 『ねじまき鳥クロニクル』『風の歌を聴け』(村上春樹)
『赤と黒』(スタンダール) 『敦煌』(井上靖)の深いあじわい
『輝ける闇』(開高健)ベトナム戦争を直に体験し 森に町につぶさに
みた人を知った衝撃は大きく 南方へ赴いた中島敦の生涯も

『センス・オブ・ワンダー』
(レイチェル・カーソン、上遠恵子訳・’96・新潮社) 
『琉球弧 野山の花』(片野田逸朗・’99第一刷 ’16第4刷・南方新社)
犬種図鑑以来の図鑑は 名前をつけてよぶことの意味をあざやかに指し示し
徳之島の植物たちは 花が咲くころにもひそやかな佇まいのまま
似た形状のものも多く同定は困難だった 世界の成り立ちを考えさせる一冊

まだ見ぬ世界へ きょうも羽ばたいてゆかう

Erat, est, fuit あった、ある、あるであろう....🌛