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嫉妬と怒りが僕のクリエイティブ

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人間力最大化計画計画長の倉本美津留が聞き手となり、映画の巨匠樋口真嗣の人間力に迫る。
※昨今のコロナウイルスの感染拡大による社会情勢のため、
 人間力最大化計画は開講日が7月3日(金)に延期となりました。

──樋口さんにとってのブレイクポイントは。

僕も50年以上生きてきて、そういう質問を受けることが非常に多くなったり、自分ってどうだったんだろう、と振り返ることも増えてきた。
そう振り返ると、関係ないなと思っていたことが自分に影響を与えていたと初めて気づくようになったんですね。

僕の場合は「バブル」ですよね。バブルの隙にこの業界に潜り込んだところがある。バブルがなければ、今こんなうまくやってなかった。
エンタメの世界には「バブルの申し子」みたいな鼻につく奴らが沢山いるんだけど、俺もそうだったんだ!と(笑)
ここに来て気付いたんですね、まったくもって自分もバブルに乗っかってたということに。

どうゆうことかと言うと、余裕があったんです。僕のようにどこの骨ともわからない小僧に、「お前やってみろよ」という余裕があった。
業界の大先輩たちや、お金使い飽きちゃった大人たちが、「あいつらにやらしてみようぜ」という余裕があった。
今思えば、夜六本木で遊んでボディコンに囲まれてたようなおっさんに、「おいお前やっとけよ」と命令されたから、好き放題やれたんですよ。
上の人の無茶ぶりを僕たちが拾って、お目溢しをいただいて、それが今の自分の血肉になっているし、自分で考える力にもなった。
雑で、大胆で、丸投げで、無茶ぶりで、全ての問題は金で解決して──、そんなダメな先輩の「余裕」の中に僕たちの糧があったんですね。

でも自分たちが同じことができるかと言ったらできないし、バブルと違ってお金を渡せるわけでもない。
そうであれば、自分がやってきたことを伝えることが、自分たちにできることなのかもしれないと思ったんです。
余計なお世話かもしれないし、誰かに影響を与えたいという欲もあったし、ただ凄いって思われたいだけかもしれないですけど(笑)

(倉本)そろそろ僕たちは、先輩たちからもらった糧やチャンスを、新しく誰かに伝えていく役割をしなくちゃいけないのではと思っていました。
樋口さんも同じこと考えていると思ったから、声をかけてよかった。LINEで依頼したら、すぐにいいですよって返事をくれたんです。

──樋口さんがモノを考える時、どういうプロセスで、どのようにアイディアを生み出しているのか。

たいていの仕事には「お題」がある。まずは、普通のことですが、それについて調べます。
そして、同じようなもので既に世に出ているひどい作品を見る。評判のいい作品でも悪い点を見る。
「下手くそだな」「俺だったらこうするのにな」「何だあんなの」「こんなの作りやがって」……
そうすると、心のニトロに火がつく。俺の中では、嫉妬と怒りがクリエイティブなんです。天に唾するようなことは分かっているんですけどね。

普通の人は映画を一回しか見ないでしょうけど、我々は仕事だから何回も見るんですが、そうすると見え方が変わって来るんです。
もちろん1回目はまっさらな気持ちで自分がどういうふうに受け取るかを考えますけど、2回目以降は制作側の「意図」が見えてくる。
意図をどう見ていくかは映画を作る上で非常に大事なことなので、人の映画を3回も4回も見るようにしています。
面白い映画は理由がはっきりしてくるし、つまんない映画を見ればその原因が見えてくる。
これは淀川長治さんが本に書いてあったから受け売りなんですけどね(笑)
だから同じ映画を、1回目の感想、2回目の感想、そして3回目の感想を出させるっていう課題も面白いかもしれませんが、ただ言ってしまえば、こんな授業はわざわざ私がやらなくても良い授業だし、普通の学校でもできることですよね。

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──それでは樋口さんが「人間力最大化計画」でやりたいことは。

ここに来る人はおそらく優秀で、さらなる成長を望んでいて、安くはない講義を受けたいというモチベーションの高い人たちですよね。
だからどこにも話したことのない、不特定多数の人には聞かせられない、ネットやメディアに載せられないくらいの凄い話をしないと。
外に漏れたら炎上必至、毒か薬かは皆さん次第、そんな際どい話、えぐい話、恥ずかしい話をしなきゃと思ってます。

何が一番えぐいかといえば、それは自分自身をえぐるしかない。たとえば僕が失敗したこと、うまく行かなかったこと、炎上したことを話す。
作った映画の半分くらいは失敗ですから、どう失敗し、なぜ失敗し、どのように反省したかを語ることは為になるんじゃないかと。
うまくいったことって「人間力」が試されない。うまく行かなかったときのほうが「人間力」が試される気がするんですよね。

勿論、あいつさえ居なければうまくいったのに…というような欠席裁判のような後ろ向きの話になりがちなので、ちゃんとパワポを作って、自分の中でちゃんとアウトソースして、感情を相対化して、悪口だけにならないようにしたいですね(笑)
コレはまずいという危険な案件を嗅ぎ分ける能力や、いち早く危険を察知して逃げ出す力も、フリーランスには必要ですから、いかに自分が火達磨になったか、でも下には下があって地獄絵図から危機一髪逃げ出した……というような恐ろしい話もしたいです。

──「シン・ゴジラ」「シン・ウルトラマン」など、子供時代影響を受けたコンテンツが、樋口さんの手によって新しい価値を生み出している。

ぼくは火事場泥棒みたいなもの。あれを作った人たちが本当にキチガイで、僕はそれに比べたらキチガイが足りない。
最近はみんな、キチガイのモノマネ上手くなりましたからね。色んなコンテンツがすぐにどこからでも見えて、モノマネが簡単になった。

実は「シン・ウルトラマン」は五輪終了後の気分に合わせて作っていたので、このままだと五輪が始まるタイミングで公開になってしまう。
そう思うと、一ヶ月前こうなるとは誰も予想してなかったわけですし、正しいことと間違ってることが毎日変わってきている。
政治家は社会が大騒ぎにならないようにのらりくらりしてるけど、日本人はみんな気付いてない様子だし。

ただ、オリンピックが延期になったことで、これから数ヶ月、あらゆることが空白になった。
僕らの世界はみんなスケジュールに支配されていたのに、この規模のスケジュールがごそっとなくなった。
この時何をするのか、何ができるのかが問われている気がしますね。


(倉本)ある意味、時代が変わる潮目であり、面白いことが生まれるきっかけでもある。
こういう時こそ自分で何かを考えたり、逆境をどう乗り越えたりという「人間力」が問われているので、それを身につけるチャンスになればと。

講師陣は様々なジャンルの日本の第一人者です。それぞれ違うベクトルながら、全員が凄いパワーを持っていて、圧倒的に成功している。
圧倒的な「人間力」の持ち主だからこそ確かなことが学べるし、その人のキャリアそのものが説得力でもある。
この講師陣がひとクラス分くらいの人数で行う授業は、よくある講演会とは全く違う体験になります。
たとえば樋口さんに直接課題を見てもらい、指導があり、議論ができ、コミュニケーションが取れて、売り込みだってできる。
集まった人同士でコラボがうまれてもいいし、お目当てじゃない講師から思いも寄らない刺激や学びを受けることもあるでしょう。
ここから凄いクリエイターが生まれたり、新しい夢を叶えたりする人が出てくることも信じています。

吉田松陰の塾みたいなものを令和で実現したい。普通じゃないことをやり、本当に大事なことを学べる講義。
人生こんなに変わるんだと実感できるような、濃縮な一年間と、その後の人生に大きな影響を与える場所にしたい。
人生のターニングポイントを強制的に作るような機会になり、未来への武器を得る場所になります。

樋口真嗣

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1965年9月22日生まれ。東京都新宿区出身。特技監督・映画監督・映像作家・装幀家。

1984年『ゴジラ』にて映画界入り。1995年『ガメラ 大怪獣空中決戦』で特技監督を務め、第19回日本アカデミー賞特別賞を受賞。他に、『新世紀エヴァンゲリオン』シリーズなど数多くのヒット映画作品に画コンテやイメージボードとして参加。主な監督作品は『ローレライ』、『日本沈没』、『のぼうの城』、実写版『進撃の巨人』など。2016年公開の『シン・ゴジラ』では監督と特技監督を務め、第40回日本アカデミー賞最優秀作品賞と最優秀監督賞を受賞。

人間力最大化計画

放送作家の倉本美津留が発起人となり、各界のトップランナー12名が集結する特別集中ゼミです。
映画、CM、音楽、デザイン、写真、編集、アート、お笑いなど、各界のトップランナーたちの代表作の秘話や、自身が考える未来戦略を講義など、対話・セッションを通じ、ここでしか学べない特別な見識を身につけてもらうことを目的としています。
https://ningenryoku.jp/

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