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「いい人」から脱却し、自律的に生きる力

あなたの持つ可能性を最大限に開発、実現することで、もっと自分らしく生きる。
世界がひろがるアカデミー」校長の倉本美津留が聞き手となり、脳科学者 茂木健一郎の「いい人」から脱却し、自律的に生きる力に迫る。

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──茂木さんは昨年、世界がひろがるアカデミーの先駆けである「人間力最大化計画」に講師として登壇いただきましたが、いかがでしたか?

(茂木)生徒さん達のレベルの高さにものすごくびっくりしました。本当に日本に必要なクリエイティブスクールというか、アートスクールの雛形になっているなぁ、と。来た人の動機付けとか技術とかが素晴らしくて、もうインタラクティブにお話出来るので、すごいアカデミーが誕生したなという感じしましたけどね。

今の時代は人工知能の時代なので、正解が決まっていることは価値が落ちていくというか、クリエイティブなことが価値が上がっていく時代だと思うんですけど、クリエイティブなことを作り出すというのは、面白いんだけど難しくて。方程式があるわけではないし、色々な方のケーススタディとか事例とかを見ていかないと駄目だし、パターン学習でもあるんですよね、人間の脳の仕組みからすると。

色々なクリエイティブなパターンとか、色々な生き方のパターンを見ることで、脳の中にパターンの枠組みが出来ていくことがあると思うので、とてもタイムリーな試みだなって思っています。付加価値が一番付きやすいのがMBAよりもクリエイティブスクールなんじゃないかと。

最近学生の中で一番良い学生って、ボカロとかで曲作ってる人とか、Twitterで絵を描いている絵師の人なんか。この間もある大手のゲーム会社に行ったら、バーチャルユーチューバー?Vtuberのキャラクターデザインとかの絵をTwitterとかインスタの絵師の中から良い人を選んで発注をしていると言っていました。そういう時代なのでどんな人にもチャンスがある時代ですよね。

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──クリエイティブするために大切なこととは。

(茂木)意外と若い時ってもっとすんなり行くとか思っていることが多くて、そういう人ってちょっとトラブルとか不協和音みたいのがあるとやめちゃったりするんですよね。
けど、「待てよ、そういうことは必ずあるから、そこで堪えて山超えて行くと意外と広々とした大海原が待ってるぜ!」ってことって。
倉本さんみたいに本当に現場を辿ってきた人達は、肌感覚で知っているじゃないですか?

(倉本)そうですね、越えれば何とかなるっていう繰り返しでしたからね。
常にやばいなあと思ってその場から逃げたくなるんですよ。でも逃げるか逃げないかと言うよりも、逃げない所をギリギリ選んでイメージを持って進むと自分の思ってたイメージよりも、もっと面白い世界が広がっているということが繰り返されている気がしますね。

(茂木)それが題材な気がするんですよね、そういう肌感覚が掴めるか掴めないか、意外とクリエイティブだけじゃなくて、全ての仕事において大事。
しかもちょっと不協和音かな?とかこいつ異分子だなーとか思った人が我慢してると意外と良い仕事をしたりとか(笑)
なんかそういうこともあるじゃないですか、そうじゃないこともあるけど!
そういうこともあるから、そこがやっぱり良いよなあって思いますよね。

──クリエイティブは良い形で脳を強化する。

(茂木)以前から思っていたんですが、日本ってもうちょっとクリエイティブライティングっていうかね、自分を表現するっていう。それをもうちょっと教育の中でやっていったら、皆がもっと個性的になるし、楽しくなれるんじゃないかなと思うんですけど。

(倉本)絶対そうです。想像とかっていう教科があってもいいと思うんですよ。道徳も良いけども。絶対に必要なんで。小学校でその教科があれば、その先生にならなれるなって気がしてます。

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(茂木)ですよね!
この前ちょっと感じたことがあって。
おじ様がね、若い女の子とごはんを食べていて、「君は代々木っていうとどんなイメージなのかな?」と。女の子は「えっ。代々木って、うーん、ちょっと予備校とかおしゃれな感じですか?」とか言ってたら、「僕らの世代って言ったらね、代々木っていえば学生運動とかなんだよ!」って訳分かんない事をずーっとそんな感じで、1時間とか2時間とか喋ってるわけなんですよ!
俺その時何を感じたかって言うと、「あっこのおじさんは普段自分を表現する機会に恵まれてないから、こういう時表現しちゃうんだ」と思ったんですよ。

倉本さんみたいに表現しまくってる人って今もそうですけど、「俺はね!俺はね!」って来ないじゃないですか。だって他のところでもう表現しまくってるから。例えば「びこうず」っていう小説も書かれたりしたし。
だからそういう人ってさ、意外とおっとりしてるんですよね、こういう時になると。だって言う必要ないじゃん。他の所で色々やってるから!でもそのおじさんはその女の子に、この瞬間に俺のありったけをぶつける!みたいな(笑)

クリエイティブとか自己表現を身につけると、世の中もっと平和になる気がするんですよね。

中脳から前頭葉に向かってドーパミンっていわゆる報酬系が出ていて、これが放出されると前頭葉を中心としてシナプスの強化が起こるっていう、いわゆる強化学習、レインフォースメントラーニングが起こる訳なんですけど。要するにどういう経路で、何を強化するかっていうのがすごく大事で、変なことを強化すると犯罪者になっちゃうわけで。

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なのでクリエイティブって良い形で脳を強化していくっていう、総合力でアンガーマネジメントって意味でもね。扁桃体とかのそのあたりの感情がどうしても人間は動いちゃうんですけど、それを色々マネジメントするのが前頭葉だって分かっていて、前頭葉の機能を高めるためには、実は文学、文化とか、芸術とか、お笑いとかそういう総合的な体験が実は大事だっていう。人としてまともになるためにも、アートスクールって大事なんだなと僕は思うんですけど。

──ハンデを抱えている人の方がクリエイティブのチャンスはある。

(倉本)思い切って表現した時に、人が驚きの目を持って簡単な三文字で「すごい」って言われるかどうかっていう、そういう体験を一回でもするかどうかの感じだと思うんですよね。そのためには思い切ったことをしないと駄目だって。

(茂木)そう思い切ったことをしたことがない人が多いんですよね、せいぜいカラオケくらいとかいう人が多いからなあ。フランス・ベーコンのことを知ってるやつは現代アートについてある種の基準があって、「いやーそこなかなか行けないっすよね。」ゲルハルトリヒター知ってるやつ「ちょっとリヒターみたいなの描けないですよね」って謙虚になる、自分が。
倉本さんもすごいことやってるのに、ビートルズをリスペクトしてる段階で「ビートルズはやばいでしょ」ってあると思うんですよ、ビートルズがやったことは。ありますよねそういうのは?

(倉本)もちろんもちろん。でも言っても、もともと特別な人間ではないということは、そういう可能性は自分にもあるんだろうなっていうような風なことを気付かせてくれた存在ですね。

(茂木)ですよね。俺の業界だとアインシュタインがすごくて。でもアインシュタインの脳って死んだ後に調べたら寧ろハンディキャップがあって、言語が駄目なんですよ。アインシュタインって5歳くらいまで言葉全然喋んなかったらしくて、言葉が駄目だったから逆に空間の情報分析を担っている頭頂葉とかの発達があったんじゃないかっていって。それをね我々の業界では望ましい困難と言ったりするんですけど。desirable difficultiesって言ったりするんですけど、意外とハンデを抱えている人の方がクリエイティブのチャンスはあるよみたいな話。

クリエイティブってそこが奥深いですよね。なんか、ちょっと何かハンデを持っている人が乗り越えた時の凄さって、例えば柳家花緑師匠はディスレクシアで文字が読みにくいから小学校の成績が通知表オール1だったっていう有名な話があって、これ花緑師匠から数年前に福島行った時に聞いて、まじすか!?って。「最近分かったんですよ」「頭が悪かったと思ったんですけど実はディスレクシアだったんですよ」とか。
でも逆にディスレクシアってトムクルーズさんとか、スティーブンスピルバーグさんだとか、実業家だとヴァージン・グループのリチャードブランソンさん。みんなディスレクシアで。だからクリエイティブに関する脳の話って良い話ばっかりなんですよね。

有森裕子さんなんかは本当にすごいですよ!俺一度番組でヨガやったことあるんだけど、あの人胡座がかけないのね。股関節が普通の人より遥かに硬くて。ある種のハンデがあるんですけど、それでオリンピックでメダルを2個。しかも有森さんのマラソンのメダルって陸上競技で女子が獲ったのが人見絹枝以来56年ぶりとか。あれがあったからQちゃんとかも行けたと。だから有森裕子って本当に偉人なんだけど、その偉人は実は股関節が胡座がかけないくらい硬いという(笑)

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──今年の「世界がひろがるアカデミー」にはどんな人に参加してほしいですか?

(茂木)最近の若い人と話していると「スケールするかしないか」と。
最初は周りの3人の人を笑わせている。それが次第に30人になって、300人になって、3万人になって、300万人になって、3000万人になると。でもそこで3人を笑わせているのは意味がない訳じゃないじゃないですか?だからクリエイティブって逆にそこから始めて良いんだなって。

僕のすごく好きな話の一つが、不思議の国のアリスってあるじゃないですか?ルイス・キャロルの。あれはルイス・キャロルの近くに居た女の子を喜ばせるために書いたんですよね。1人のために。その一人のために作った物語が世界の人を未だに感動させている。そこから始めて良いんだろうなという気がするんですよね。

だから、そういう意味でこのアカデミーは、まず身近なとこから始めるという人にも。
去年はアイドル活動もされている美術家のアーティストの卵みたいな方も、全然関係のない職業の人も来てましたからね。人間力だ(笑)

(倉本)そうなんですよ(笑)本当に多種多様な人が来て、受講生同士、普段出会えないような出会いも大きかったと思うんです。だから今年もグシャグシャになってほしいなと思っていますね。

茂木健一郎

茂木 健一郎

1962年、東京生まれ。脳科学者。作家。ブロードキャスター。 クオリアを研究。ソニーコンピュータサイエンス研究所シニアリサーチャー、慶應義塾大学特別研究教授。 東京大学理学部、法学部卒業後、 東京大学大学院理学系研究科物理学専攻課程修了。理学博士。 理化学研究所、ケンブリッジ大学を経て現職。 専門は脳科学、認知科学。2005年『脳と仮 想』で第4回小林秀雄賞を受賞。 2009年、『今、ここからすべての場所へ』(筑摩書房)で第12回桑原武夫学芸賞を受賞。近著に『脳とクオリア』『生きて死ぬ私』『脳と仮想』『今、ここからすべての場所へ』『東京藝大物語』『ペンチメント』他多数。

世界がひろがるアカデミー

世界がひろがるアカデミーとは、各分野で成功した12名の特別講師から、実体験、考え方、テクニックなど、このアカデミーだけの特別授業を1年間に渡って受講してもらうことで、あなたの可能性を最大化する力を身につけてもらうためのアカデミーです。
12人12色の授業から、日常で出会うことのできない学びや刺激を得てもらい、1年をかけてあなたの力を次のステージへと生まれ変わらせることを目的としています。 「感じる力」「考える力」「伝える力」をアップデートして、昨日までの自分には見えなかった世界へ踏み出してみませんか?
https://sekahiro.jp/

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