見出し画像

【おススメ本#01】バリュエーションの教科書/森生明氏

ファイナンスに片足(両足?)を突っ込んだキャリアではあったものの、「ファイナンス」という分野に対してはどこかモヤモヤした思いを抱えていたし、冷めた見方をしていた部分がありました。

「数字だけで会社経営や株式市場が語れるはずがない。数字に落とし込めない心理や価値判断で動いている部分が多分にあるし、そちらの方が真理に近いことさえある」

なんて思っていました。

でも世界は「ファイナンス」を一つの軸として動いていくし、その重要性も理解できる。

本書はそんなモヤがかかった思考を極めてクリアにしてくれました。

「企業価値について誰もが納得すべき『理論的公正価格』が 1つ存在する、という考え方自体を捨てたほうが企業価値算定の本質を理解しやすくなる」

「チャーチルがかつて『民主主義は最低の体制だ。それ以外のすべての体制を除いて』と喝破したとおり、バリュエーションについても市場に頼るよりマシなやり方は、なかなか見つかっていない」

「どんなに精緻な理論と計算で『正しい』答えを出したとしても、その値段で投資家が(市場が)実際に売買する気にならないなら、その価格は『正しくない』のだ」

「価値を生む活動とカネが儲かる活動がそれほどずれない世の中は、どのようにしたら築けるのかという問題意識は、企業価値は誰がどのようにして決めるのが『フェア』なのかという問いと同根だ」

ファイナンスの領域にとどまらず、時に資本主義、民主主義、富の再分配のあり方にまで敷衍されて進む議論や説明は奥深く、とても面白く、一気に読み終えました。無味乾燥な数式の羅列ではなく、本質的な議論とともに進むので、数式も頭に入りやすい。

M&Aや企業経営を学び始めた方、あるいは企業関連のニュースをより深く理解したい方、「開かれた自由競争の世界で、強くたくましく生きてゆけるようにならねばと思っている人」(筆者)に心からおススメしたい1冊です。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?