働いて帰って来て、なぜ家事や育児を手伝わなければいけないの?
奥様が主婦でいらっしゃる旦那様、一度はこんなことを疑問に思ったことがあるかもしれません。
私自身も、共働きをしていた頃は「お互い仕事をしているんだから、家事・育児も分担して当然」と思っていたものの、退職をして主婦になったばかりの頃は「自分にとっての今の仕事は家事や育児なんだから、夫には頼らずにこなさなきゃ」と考えていました。でも、今は「それはちょっと違うかなぁ」と思っています。
以下、お子さんがいるご家庭であるという前提で、私が考えるその理由を記してみたいと思います。
[理由①主婦には休日がない]
家事も育児も、夫や子供がお休みの日であろうと、免除になることはありません。寧ろ、家族が家にいる分、仕事は増えます(昼食作り、子どもの世話など)。そして、目の前で家族が寛いでいる中、自分は一人黙々と仕事をこなさなければならないので、不平等感と、自分のペースで仕事を進められないことによるイライラが募ります。「そこどいてよ、掃除機掛けられないでしょ!」とかいう類のものは、まさにそれ。
これを解決するには、パパや子どもがお休みの日には、ママもお休みにしてあげる、ということなんだと思います。
じゃあその分の家事・育児は誰が担うのか?
毎度毎度ホテルに泊まるだとか、家政婦さんやベビーシッターさんを手配するなんてなかなか難しいので、パパや子どもたちの協力が必要になってきます。完全に「お休み」にできたら最高ですが、それが難しくとも、ほんの一つでも、ほんの少しでも、仕事を分担してもらえたらものすごくありがたいものです。労力的にももちろんですが、精神的にも大きな救いになると思います。日々社会的には評価され難い仕事をしている中、自分は一人じゃないと思えること、家族皆が同じ方向を向いて、この家庭を最高のものにするために頑張っているんだと思えることで湧いて来る活力は大きいです。
でも、ご主人の方にもいろいろと言い分がありそうです。
「主婦は平日日中休めるじゃないか」
「俺だって休日出勤までして毎日働き詰めだ」
などなど。
ご主人の気持ちも分かります。でも、きっと奥様には奥様の言い分がある。その溝を、お互いが歩み寄りながら解消していくことが「夫婦であること」ということなんだと思います。最終的には、お互いの間に溝がなければいいわけで、お互いに心から納得しているのなら「ご主人は仕事のみに打ち込んで家事や育児は全て奥様が担う」という形でも全く問題無いと思います。でも、もし、どちらか一方でも不満に感じていることがあるのだとしたら、それはお互いのために、不満の対象を明らかにした上で可能な範囲で歩み寄る、ということができたらいいんじゃないかと思います。
もし主人から上記のような反応が返ってきたとしたら、私はどう思うか。
夫婦や家庭の形はそれぞれ異なりますし、感じ方や考え方も様々あるかなとは思いますが、一つの可能性として、奥様の気持ちを断片的にでも想像するのに少しでもお役に立てればと思い、記してみます。
「主婦は平日日中休めるじゃないか」
これはお子さんの年齢別に考えないといけないかなぁと思います。
確かに、お子さんが幼稚園生以上であれば、日中数時間は一人だけの時間ができます。ただ、その場合でも、その全てを自分の時間として使えるわけではなく、朝の時間で終わらなかった家事や、食料・日用品の買い物、PTAの仕事など、自分以外のことに割く時間が一定程度あると思います。それらを差し引いた上で、お昼休憩や通勤時間などご主人の自由時間との差分が生じるようであれば、それは奥様の休日を見積もる際に勘案しないといけないかなと思います。(通勤時間が自由時間かどうかなど、細かい点については、ご家庭ごとに協議要ですね)
一方で、大変なのが幼稚園未満のお子さんを抱えるママです。お子さんの個人差も大きいとは思いますが、夜泣きをするお子さんの場合は特に、文字通り24時間休みが無いと感じているママも多いと思います。ご飯をあげて、オムツを替えて、着替えをさせて、遊び相手をして、お昼寝をさせて、お風呂に入れて、その合間を縫って自分もご飯を食べ、家事をする、という感じです。これが朝起きた瞬間から夜寝る時まで、場合によっては寝てからも起こされて夜中もずっと続きます。これはどんなに可愛い子どもが相手とはいえ、なかなかハードです。
「勤務は起床直後から就寝直前まで。就寝中も緊急時には連絡が入りますので対応お願いします。休日はないですが日々細切れの休憩時間はありますよ。大体3年(幼稚園入園まで)契約です。」
という感じです。選択できるのであれば、こんな契約は誰も結びたいとは思わないと思います(笑)
「俺だって休日出勤までして毎日働き詰めだ」
これについては「本当にありがとう!」と思います。感謝していない奥様はいないんじゃないかと思います。
ただ、ただ、「休日出勤しても、振替休日あるよね?」「休日出勤している間、私はまた一人で子どもたちの世話をしなければならないんだけどな」というのも正直な感想かなと思います。
(もし、「振替休日なんて権利としてあっても行使できていない!」という場合は、ご主人も奥様も過労とストレスで共倒れになる可能性大だと思うので、どうか早急に生活の立て直しを図ることができますように)
「振替休日は理解できたとしても、『また一人で』ってどういうこと?」と思われたかもしれません。
これは実際にその立場になってみないとなかなか理解し難いかなぁと思うのですが、「ママは孤独になりがち」で、ご主人が家事や育児を担えていない場合、「私一人がこの家庭を切り盛りしている」と感じている可能性も大だと思います。
ご主人からすると、「いやいやいや、俺は生活するために必要な資金を稼いでいるでしょ?自分がいなければ家庭は回らないでしょ?自分も立派に家庭を支えているじゃない!」と反論したくなると思いますし、実際その点は妻側が心から感謝するべきとは思うのですが、一番近くにいる同志として、ママの孤独にも寄り添いつつ「『株式会社家庭』を一緒に経営していくんだ」という意識もより一層持ってもらえたら、家族でいることはもっと楽しくなるのかなぁと思います。
やはり人間は社会的な生き物で、何かの集団に属したり、誰かと心を通わせたりすることで気持ちが充足される部分が多分にあります。家庭も立派な集団で、子どもも一人の人間であることには代わりないのですが、会社などに所属している場合と比べると、どうしても自分の社会的な存在意義を見失いそうになります。ボランティアやサークル活動など、何らかの形で直接的に社会との関わりを持ち、活動的に生活されている奥様であれば、あまり孤独を感じることはないかもしれませんが、特に乳幼児を抱えているママなどは「1日誰とも会話をせずに終わってしまった」なんてこともしょっちゅうだと思います。
そんな中で、「株式会社家庭」の共同CEOである夫は、社会を感じることのできる貴重な存在です。その夫が、ありがたい話ではあるけれど仕事仕事で家事や育児については無関心だとしたら、奥様の孤独感は強まります。そもそも「共同CEOなのになぜ家庭に興味がないの?」と思っているかもしれません。
ご主人からすると「いやいや家庭のことを思っているから自分はこうして仕事をして稼いでいるんじゃないか。共同CEO兼CFOとして立派に財務面を支えているじゃないか」という感じだと思うんですが、奥様からすると「共同CEO兼COOとしての私の役割にはまるで興味がないじゃない。稼いできて終わり、じゃなく、それを利用してどのように投資し運用していくかこそが家庭を回していくということでしょう」という感じかなと思います。「株式会社家庭」としての経営会議が足りていない、ということかもしれません。
[理由②「人間」だし「親」だから]
お互いの負担がどの程度かという話を超えて、そもそも、家事も育児も、人として、親として生きているなら担って然るべきだよね?と思っています。
家事は、人が生活をしていく上で生じる不可欠な仕事です。一人暮らしを経て結婚された方も多いと思いますが、その間は自分で掃除・洗濯などの家事をしていたわけです。寮などではない純粋な一人暮らしであれば、料理もされていたかもしれません。それがなぜ、結婚したら「妻がやってくれるもの」になるのだろう、と疑問に思います。繰り返しになりますが、「夫が稼いで、妻が家庭内のことを担う」と、お互いの合意の元にきちんと役割分担が出来ているなら全く問題無いと思います。でも、そうではなく「妻なんだから」「母親なんだから」やって当然という意識がもしあったとしたら、奥様はそれについてどのように思っていらっしゃるでしょうか。
育児についても、子どもを持つと決断した以上、妻と夫の2人が親であり、家庭の共同CEOなわけで、二人が等しく主体的に育児を担うというのが自然な流れ、と思います。
これらの大前提があった上で、じゃあ実際の生活においては、生活費を稼ぐということと家事と育児と、どのように負担を分担していこうか、ということになるんだと理解しています。
[データで見る男性の家事・育児]
「男性の育児・家事時間、出生率に影響 日本は女性の2割」日本経済新聞(2021年10月3日)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOFE308UG0Q1A830C2000000
「出生率にも影響するから家事や育児をしなければ!」とは誰も思えないと思いますが、それだけ、ワーママはもちろん主婦の場合でも、女性側に負担が偏っている可能性がある、ということだと思います。あるいは「男性側が家事や育児を担えないほど、長時間労働で疲弊している」ということかもしれません。そんな中で「男性育休制度で日本は世界でも先進的」というのはものすごく喜ばしいし、実のある制度として定着していけばいいなと思います。
[せめて、家族として同じ方向を向く]
「少し妻の立場を理解できた気はするけれど、それでも今以上に家事や育児を担うことはどうしても難しい」という場合。結局はここが一番大事なのかなぁという気がしています。
外で働くのと家庭内の仕事を一手に担うのと、どっちが大変かなんて単純に比較は出来ないし、休憩時間を算出するのだって、双方が納得がいくように完全に平等に、なんて不可能に近いと思います。
大事なのは、お互いに対するリスペクトであって、一つの家庭を共に作り上げていく同志として、同じ目的に向かって協力しあっているんだという認識だと思います。例え物理的に助け合うことが難しくとも、お互いに心からのリスペクトがあれば、その気持ちは必ず相手に伝わるし、できる範囲で何かしら歩み寄れる方法がきっと見つかると思います。
日本が、「男性の家事・育児時間、主要国で1位!」「子育て世代の幸福度も主要国で1位!」となる日が1日も早く実現したらいいなと思います。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?