濱元伸彦

大阪大学大学院(修士)・アメリカの大学院(博士)を修了。公立中学校教員を経て、現在は関…

濱元伸彦

大阪大学大学院(修士)・アメリカの大学院(博士)を修了。公立中学校教員を経て、現在は関西にある大学の教員。専門はインクルーシブ教育の実践および制度、人権教育。

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「インクルーシブ教育を受ける権利」を三層で考える

【論文の紹介】「「インクルーシブ教育を受ける権利」とは何を意味するのか : 障害者権利条約および一般的意見第4号の考察から」(2024年4月『教育学論究』濱元伸彦)という拙稿を大学の紀要に書きました。  (論文タイトルのリンク先からダウンロード・閲覧可能です。) 障害者権利条約および一般的意見第4号の理念や提案を深く理解し、表題にありますように「インクルーシブ教育を受ける権利」とは何を意味しているのか解釈したものです。 障害者権利条約が委員会で議論され形づくられていく過

    • 「共に生きることを学ぶ権利」について

      海外のインクルーシブ教育の実践に思うこと  以前のnoteで、オーストラリア・クイーンズランド州やカナダBC州のインクルーシブ教育について紹介してまいりました。その実践や考え方からは、日本にいる我々が学びうることが多くあると思います。  しかし、一方で、私自身、インクルーシブ教育に熱心に取り組んでいるとされるイギリスやオーストラリアの実践においても、やや物足りなさを覚える部分がありました。それは「共に学ぶ」ということの価値が教員の言葉としてあまり語られないことです。「多様性

      • オーストラリア・QLD州のインクルーシブ教育②

        はじめに  前記事(クイーンズランド州の公立高校で見たインクルーシブ教育①) に引き続き、オーストラリアのクイーンズランド州のインクルーシブ教育について、調査訪問した学校の様子を紹介しながら述べたいと思います。2018年、2019年と私たちの研究チームは、クイーンズランド州北東部にあるケアンズの3つの学校を訪問しました。3校のうち2校は公立校(州立)で、一校が小学校、一校が高校です。ちなみに当地では、小学校の卒業後、7年生から高校に進学します。高校は、公立校の場合は選抜は

        • オーストラリア・QLD州のインクルーシブ教育①

          はじめに  私の研究テーマの一つはインクルーシブ教育です。より詳しくいえば、インクルーシブ(包摂的な)学校をどうつくるかに注目して研究しています。 インクルーシブ教育という言葉に出会ったのは、私が大阪府の公立中学校の教員をしていた時でした。当時、私はある学級の担任をしていましたが、ある障がいがあるという生徒の保護者と話していた時でした。その保護者が、国のインクルーシブ教育システムに関する資料などを持ち寄られ、合理的配慮に基づいた支援や成績の評価をしてほしいとの願いを語れまし

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        「インクルーシブ教育を受ける権利」を三層で考える

          カナダBC州のインクルーシブ教育を振り返って

          カナダBC州(バンクーバー)のインクルーシブ教育の研修をふりかえってですが、たいへん多くの出会いと学びがありました。 長年、インクルーシブ教育の制度を研究してきた一木玲子さんらが「分けないから普通学級のない学校」(もちろん支援学級もない学校)と呼んだ学校や学習の在り方にふれることができました。学びの仕組みとしては、少人数学級をベースに、多様な学び方を許容する学びの環境、そして、個に応じた支援が柔軟にあること、また、学びの場を分け隔てないことを重視する姿勢があります。 ただ

          カナダBC州のインクルーシブ教育を振り返って

          『インクルーシブ教育ハンドブック』刊行から約1年

          倉石一郎さん、佐藤貴宣さん、渋谷亮さん、伊藤駿さんと一緒に監訳にたずさわりました『インクルーシブ教育ハンドブック』(ラニ・フロリアン監修)が北大路書房より刊行されて約1年となります。国内の30人以上のインクルーシブ教育に関わる研究者がこの翻訳にたずさわった、まさに大著です。多くの図書館や専門機関に置かれるようになり、普及しつつあると思われます。改めて内容を紹介したいと思います。 黄色く明るいカバーデザインの「ハンドブック」ですが、全然ハンディーではなく、864ページというま

          『インクルーシブ教育ハンドブック』刊行から約1年