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カナダBC州のインクルーシブ教育を振り返って

カナダBC州(バンクーバー)のインクルーシブ教育の研修をふりかえってですが、たいへん多くの出会いと学びがありました。

長年、インクルーシブ教育の制度を研究してきた一木玲子さんらが「分けないから普通学級のない学校」(もちろん支援学級もない学校)と呼んだ学校や学習の在り方にふれることができました。学びの仕組みとしては、少人数学級をベースに、多様な学び方を許容する学びの環境、そして、個に応じた支援が柔軟にあること、また、学びの場を分け隔てないことを重視する姿勢があります。

ただ、それだけではなく、多様性や人権の尊重、反差別をめざす教育活動や環境づくりの取り組み、社会の中での多様な発信がさまざまな形であります。その本質を表しているのが、この写真のピンクシャツ・デイの取り組みです。ピンクのシャツを着てきたがためにいじめを受ける子どもがいたことをきっかけに、いじめや差別のない環境をみんなで作ろうとする試みとして、子どもも教員もみんなでピンクのシャツを着てくるという取り組みです。BC州のいろんな学校で取り組まれたとのことです。

見学した小学校で、ピンクシャツ・デイの時に、子どもが描いたメッセージが掲示物の中にありました。「Be Inclusive」「Everyone is Included」などと書かれています。LGBTQのことや肌の色のことを書いているメッセージもありましたし、障害のことも入るでしょう。この地域でいうインクルージョンってこういうことだというのがはっきり伝わってきます。多様性を尊重する、一人ひとりの違うが認められてよい、どの子も大事だ、どの子も共に参加する権利が

ある、そういう考え方がインクルージョンであり、その中に障害も当然入ってくるということです。

また、イングランドやオーストラリアと違って、学力テストで学校も子どもも競争を煽られるなど、不要な政策がないことも大きいです。(残念ながら、多くの国では、テストの点数を上げなければいけないというプレッシャーが、子どもたちがゆったりとした環境のなかでのびのびと学び、お互いを認めつながりあう機会を奪ってしまっています)

人権や多様性に関する包括的な教育活動や学校づくりと表裏一体のものとして、インクルーシブ教育を進めていかなければいけないというのが、私が得た結論の一つです。

もう一つは、上のようなのびのびと子どもが学び、つながりあえる、また、必要に応じて支援を受けられる環境をつくるためには、学校の環境改善が欠かせません。具体的には、少人数学級の推進と学級の中で多様な支援をできる教員や支援者の増員などです。

さらに知識偏重の教育を改めるなど、教育の考え方を根本的に改める必要があります。

課題が多すぎですが、それらを手の届かないものと捉えるのではなく、遠いけれど、少しずつ前進し獲得していけるものだと信じて取り組むことが大事だと思います。

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