見出し画像

サービス管理責任者として、多くの方々の就労・復職を支える

 障害者総合福祉法にて、障害福祉サービスを提供する事業所に配置が義務付けられている「サービス管理責任者」。就労移行支援事業所にも同様に、配置が義務付けられています。

 今回は、就労移行支援事業所である「ニューロワークス」にてサービス管理責任者の経験がある大畑(おおはた)さん(※現、ニューロリワーク梅田センター マネージャー)に、サービス管理責任者についてお話を伺いました。

アートボード 1

編集部(以下:編)
さまざまな障害福祉サービスの事業所に配置されるサービス管理責任者ですが、とりわけ就労移行支援事業所における「サービス管理責任者」の役割とはどのようなものなのでしょうか。


大畑(以下:大)
サービス管理責任者の役割を一言でいうと、「縁の下の力持ち」と考えています。

サービス管理責任者は、その名称通り「サービスを管理する者」です。“サービスを管理する”というのは、施設の利用者さんに提供するサービスの質や量が適切であるかを管理することを指します。これはサービスの内容に限らず、「サービスを提供するスタッフは適切か」「サービスを受ける利用者さんの状態は万全か」など、利用者さんだけやサービスだけ、もしくはスタッフだけといった一方面だけに目を向けるのではなく、全てを包括的に確認し、適切なサービスが適切に提供できているかを管理することが求められています。


編:
なるほど。言葉としては簡単ですが、その意味や対応範囲は非常に広くなるということですね。


大:
その通りで、役割としては決して単純ではありません。適切なサービスを提供するにあたっては、事業所単体では決定できないことも多くあります。こうした事柄については、事業所を超えて各自治体と連携することが必要となります。

たとえば、事業所内で新たなサービスを提供する場合も、そのサービスがなぜ必要であり、適切であるかを明確に説明し、各自治体から許可を得なければならないというケースも多くあります。

明確な説明を行うためには、サービスの本質や内容、頻度など、幅広い事柄を把握している必要があります。表面的な内容の説明に終始してしまうと自治体側からの質問に回答できないこともあり、サービスの提供に支障がでることも考えられます。そうならないためにはサービスに関して幅広く理解しておくことが不可欠です。

アートボード 2

編:
具体的なサービスを事業所に導入していくためには、サービス管理責任者として自治体や行政機関と交渉して理解を得る必要があるということですね。事業所にて利用者の方々に提供するサービスの裏には、そうした背景があったんですね。

自治体や行政機関に適切な説明をする上では、法律や規制といったルールの側面だけでなく、事業所の利用者の方々やスタッフなど、いわば「生きた情報」を把握しておくことも不可欠だと思います。この点に関して、特に意識されていることはあるのでしょうか。


大:
特に重要といえるのが、スタッフとの日頃からのコミュニケーションです。文字通りのいわゆる「管理」という考え方に終始してしまうと、一方的な指示だったり報告の義務を課したりと、見方によっては高圧的なものと受け取られてしまうこともあります。こうした一方的な「管理」では、日頃からの適切なコミュニケーションは図れません。

日々の業務の中で、「真面目に仕事をする」というのは基本であり大切ですが、それだけでは周りのスタッフから“近寄り難い人物”と思われ、気軽なコミュニケーションも難しくなります。ですので、積極的に話しかける、緩めるときは緩めるようにしてスタッフと良好な関係を構築するのも大切な役割と考えています。

アートボード 2_1

編:
確かに、話しかけづらさは情報の流動性を硬直させ、いわゆる「風通しの悪い組織」に陥る要因になりますね。

組織づくりの要ともいえるサービス管理責任者ですが、サービス管理責任者を担当されるに至った経緯を前職やこれまでの経験なども含めてお伺いできればと思います。


大:
サービス管理責任者になる前は、介護老人保健施設にて介護業務に15年ほど従事していました。高齢者介護も大変やりがいのあるお仕事ですが、介護福祉士の資格を取得して業務をしている中で「介護福祉士の資格を所有しているのに、介護以外の福祉のことを知らないで介護福祉士と名乗っていて良いのだろうか」「介護と支援の違いをきちんと理解できているだろうか」という気持ちが湧いてくるようになりました。

そんなとき、ニュースで「障害者の法定雇用率が段階的に引き上げられる」ということを知りました。これを見た当初は、「障碍者の法定雇用率?」と全く理解できていませんでした。その後、気になって調べてみると、一定規模を超える企業には障害者を雇用する義務があり、そこには法定雇用率という国が定める雇用率があることを初めて知りました。このとき、自身が介護福祉士でありながら、福祉のことや支援のことを何一つ分かっていないのだと痛感させられました。

アートボード 2_2

編:
介護と障害者雇用はいずれも大枠では「福祉」に包括されますが、細かな領域に目を向けると違いも多いということですね。この出来事がきっかけで、就労支援を行う事業所に移ることを考えられたということでしょうか。

大:
自分の年齢を考えたとき、介護と同じだけの経験年数・知識を習得するためにはすぐに転職しないと間に合わないと思いました。そこから、福祉の仕事とはどのような内容なのかを調べると「就労支援」というワードが目に入ってきました。これは介護の世界では聞いたことがないワードで、物凄く気になりました。

さらに調べると、就労支援には「移行」と「継続」があることや、「サービス管理責任者」という資格があることを知りました。その過程で、「サービス管理責任者の資格要件はかなりハードルが高い」と感じたことを覚えています。

幸いにも、私は介護業務に長く従事していたことから資格要件を満たしていたので、入社して貢献できると強く感じました。入社によって1スタッフとして得られるスキルだけでなく、サービス管理責任者としても必要なスキルが同時に得られることから、新しい場所でサービス管理責任者になろうと決意しました。

アートボード 2_3

編:
その決意が実って、後にニューロワークスのサービス管理責任者として就任されたということですね。

具体的な業務や流れはどのようなものでしょうか。


大:
サービス管理責任者の業務は多岐にわたりますので、一概に決まった業務や動きがあるかというと、そうではありません。

幅広い業務の中で、サービス管理責任者でなくてはできない業務もあります。全てではありませんが、利用者さんの契約開始や利用終了に伴う手続き、または個別支援計画書に関わる事項などもその例として挙げられます。

他の業務としては、施設の体験実習に来ている方から施設の利用の意思をいただけると、利用までの流れの説明を行います。また、その方がお住いの自治体に連絡を取って「認定調査」の日程調整なども行います。その際に認定調査への同行の許可をいただければ認定調査への同行もさせていただきます。他にも、各自治体からの要請があった資料の作成や、今が正にそうですが「コロナウイルスによるサービス提供内容の変更」の確認なども都度行います。

アートボード 2_4

編:
利用者の方々がより円滑に事業所やサービスを利用できるよう、事業所の内外を問わず、幅広く対応されていることが伺えます。

サービス管理責任者として、これまでに何名くらいの利用者の方々と関わられてきたのでしょうか。


大:
私がニューロワークスに入社する以前は、就労継続A型事業所にてサービス管理責任者を担当していました。以前の勤務先では事業所が第1、第2とあり、私は第2事業所のサービス管理責任者だったのですが、第1事業所の利用者さんとも関わる機会も多く、合わせて100名近くの利用者さんとの関わりがありました。

ニューロワークスでは今まで40名ほどの利用者さんと関わらせていただきましたので、合わせると150名近い利用者さんと関わってきたことになります。


編:
150名というのは非常に多いですね。こうした多くの方々と関わってこられた経験を通じて、就労移行支援事業所を利用される方に多い悩みや、サービス管理責任者として提供できる支援にはどのようなものがあるとお考えでしょうか。


大:
就労移行支援事業所であるニューロワークスでは、就労目的だけでなくリワーク(復職)目的の方もいらっしゃいますので、その悩みも多岐にわたります。中でも特に多い悩みは、「コミュニケーションがうまく取れない」「生活習慣が安定しない」「メンタル面が安定せず通所ができない」といったお悩みです。

サービス管理責任者として提供できる支援でいうと、その様なお悩みをお持ちの方が1日も早くニューロワークスを利用し、お悩みを解消させ、就労・復職ができるよう各自治体と調整していくことなどが挙げられます。

また「サービス管理責任者にしかできないこと」という枠にとらわれず、事業所としてスタッフ全員が共通認識を持って、利用者さん一人ひとりにあったサービスが何かということを常に徹底して考え、提供することを目指しています。

アートボード 2_5

編:
日々の支援の中で、サービス管理責任者としてサービスを提供する際に特に意識されているのはどのようなことでしょうか。


大:
サービス管理責任者は契約手続きなどで利用者さんとの関わりが多いことから、利用者さんの中には「偉い人」という印象を持たれてしまい、何かを質問することをためらわれる方もいらっしゃいます。

そういった方々には話しかけていただくのを待つのではなく、こちらからより積極的に話しかけるように心掛けて気持ちの面での壁ができないことを特に意識しています。

他の注意点としては、サービス管理責任者という立場上、事業所内で問題が発生した際には「サービス管理責任者がちゃんとしていないからだ」といわれることがあります。日頃から利用者さんの不満がないよう心掛けていますが、万が一発生してしまった際には細心の注意を払いつつ、誠心誠意対応するようにしております。


編:
ニューロワークスでこれまでにサービス管理責任者として活動されてきた中で、最も苦労したことや大変だったことはありますか?


大:
利用者さんの対応の中で苦労と感じることはほとんどありませんが、いわゆる「苦労」ではなく、難しいと感じたケースはあります。

アートボード 2_6

編:
どのようなケースでしょうか。


大:
ある方が他の障害福祉サービスを利用されていて、そのサービスの中でのスタッフの対応を聞いた際に虐待を疑うような内容がありました。こうしたケースではお住いの自治体への連絡は義務なのですが、サービス管理責任者として何処まで介入し、支援していくべきかの判断がとても難しかったです。最終的には私が上司に判断を仰ぎ対応しましたが、聞いたときにはとても迷いました。


編:
なるほど。支援の気持ちが強くあっても、対応できる範囲が限られていることもあり、気持ちだけで動くことが現実には難しいということですね。そうなると、先ほども少し触れたように自治体や行政機関との普段からのコミュニケーションがそれだけ重要になってくるといえますね。

それでは、苦労した点とは反対に、特に嬉しかったエピソードなどはあるのでしょうか。


大:
ニューロワークスの利用開始当初に通所が不安定だった方が安定して通所できるようになったときや、訓練を頑張って就職・復職が決まった方のケースなど、嬉しかったことはたくさんあります。

中でも特に嬉しかったのは、就労が決まって卒業された方が「ニューロワークスを利用して良かった」と言ってくださったことです。ご本人の努力があってこそ就労できた部分が大きいと常々思っておりますが、その中で「ニューロワークスのお陰で」や「ニューロワークスを利用して良かった」とのお声をいただけるととても嬉しく思いますし、やっていたことに間違いはなかったのだと安堵の気持ちになります。

編:
嬉しかったことがたくさんある、というのは嬉しいですね。

ちなみにですが、就労移行支援事業所を利用することで、不調を克服して就労・復職される方がいらっしゃる反面、もしかするとなかなか就労・復職が叶わない方もいらっしゃるかもしれません。


大:
実際に、就労や復職が叶わず退所となってしまう方もいらっしゃいます。こうした方々に見られる傾向としては、「決まった日数の通所ができない」というケースです。「朝起きられない」「起きたけど外に出ることが億劫になってしまった」など理由は様々ですが、躓いたときに立ち直る術が少なく対応できないことが原因と思われます。

こうした原因を少しでも解消するために、ニューロワークスでは受給者証の上限日数通りに通所いただくことを、利用意思をいただいたときにお伝えしています。また、通所の予定日に欠席となった場合には、別日に振り替えでの通所をお願いしています。これにより、欠席が続いて通所しづらくなることを防いでいます。

また、自治体への確認が必要となりますが、ニューロワークスでは在宅訓練も実施しています。コロナウイルスの影響で外に出ることに不安がある方も多くいらっしゃいますので、在宅でも訓練を受けることができるよう図っています。これも通所しづらくなることを防ぐ取り組みのひとつです。


編:
時代や情勢に合わせて、サービスの在り方も変化させていくということですね。

これまでに様々な取り組みをされてきたとのことですが、これからサービス管理責任者として新たに取り組みたいことなどがあればお聞かせください。


大:
一言でいうと、障害のある方が少しでも多く就労・復職し、社会生活を円滑に送ることができるようになればと考えています。そのためには、サービス管理責任者として今よりもさらにスピーディーに利用が開始できるよう各関係機関との連携を深めていく取り組みをしたいと思っています。

アートボード 2_8

編:
現在、求職中や休職中の方で就労移行支援事業所を利用されていない方に向けて、一言お願いします。


大:
就労移行支援事業所は、障害をお持ちの方が就労や復職に必要な様々なスキルを習得し就労、復職を目指す場所です。

ニューロワークスでは、まずは通勤が安定して行えるようになるために生活習慣が整っていることが重要と考えています。そこで、理想の生活習慣を身につけるために、食事・睡眠・運動・ストレスケア・知的刺激の5項目のバランスのよい習慣化を目指したプログラムを提供しています。

こうしたプログラムを通じて、体調や生活習慣の安定を実現し、就労・復職後も安定して働くことができるよう支援しています。また、「就労・復職して終わり」という考えではなく、就労・復職後の半年間は職場への定着サポートも行っています。半年経過後でも、ご本人のご希望がある場合には定着支援を行っており、最長で3年間の支援が可能です。

就労する際の不安を抱えられている方は、それらを解消し、自信を持って就労いただくためにぜひ就労移行支援事業所を活用し、就労・復職を目指していただければと考えています。


編:
大畑さんは現在、ニューロワークスからニューロリワーク梅田センターに異動されたとのことですので、今後もぜひ新しい事業所で利用者の方々の支援に携わっていただければと思います。

ありがとうございました!

■YouTubeチャンネル:ニューロチャンネル
■Twitter:ニューロワークスニューロリワーク

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?