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SNSが苦手なくせに、SNSを開発しているという矛盾

Clubhouseの勢いが凄まじい。つい先日まで存在すら知らなかったことなど噯(おくび)にも出さず、昨日しれっと仲間入りした。

こういうとき、すぐにモデレーターをやってみるくらいのフットワークの軽さがあればいいのだが、なにしろ人前でしゃべることに躊躇するタイプなので、まずはいろんな人のroomをはしごして「ふんふん、こんな感じね」と探りを入れるところから始めている。

わたしが代表を務める株式会社ヂラフでは、『Signe(サイン)』という音楽SNSを鋭意開発中だ。音楽活動をしている人や始めたい人、MV撮影やグッズデザインなどをしたいクリエイター、新進気鋭のアーティストを探しているイベンターやメディア。そんな「音楽に携わる人たち」のネットワーク形成を支援し、仕事の受発注や決済までできるサービスをめざしている。

※現在β版で無料ユーザー募集中。興味をもっていただけるかたは招待しますので、お気軽にコメントください。

しかしながら、わたし個人はSNSが得意ではない。

嫌いなわけではなく、むしろビジネスモデルとしては素晴らしいと思っている。事業でもTwitter / Facebook / noteを運用しており、集客やプロモーションで大変お世話になっている。ただプライベート利用となると、どうにもこうにも、自分の性質との折り合いがつけられない。

SNSの先駆けであるmixiが大学時代に流行ったときからすでに乗り遅れ、Twitterは開始数か月で使いかたを見失い、Facebookは一時期熱心に使っていたものの数年放置(最近再開)、TikTokはプライベートというより仕事上の情報収集、Instagramだけは自分にフィットしている気がして、ときどき放置しながらも細々と続けている…というありさま。

一体、なにがそんなに苦手なのか。

SNSを開発している身だというのに苦手意識を拭えない自分にモヤモヤしているので、この場を借りて心理を暴いてみようと思う。ユーザーに寄り添うサービスを開発するためのヒントも得られるかも(…と正当化してみる)。

苦手心理①: 社会との境界線が曖昧になる

前回、自分がどうやらHSS型HSPであることについて書いた。それを言い訳にするわけではないが、大きな要因のひとつのような気がする。

SNSは自分以外の世界、つまり社会そのものだ。人と長時間一緒にいると疲弊してしまうHSPにとって、SNSを長時間あるいは毎日見るのはなかなかハードルが高い。「人と会わない日」と同様に、意図的に「SNSシャットダウンDay」を設けないと神経がすり減ってしまう。

いつでもどこでも社会とのつながりを得られるSNSの最大の魅力は、使いかたを誤ると、ときに心を侵食する。

苦手心理②: 取得情報を選べない

タイムライン型のSNSは、基本的に取得情報を選べない。自分でも無自覚なままナーバスになりかけているときにトリガーとなるような投稿に出くわすと、予期せず右ストレートをくらう。わたしのまわりには起業家やクリエイターなど社会で活躍している人が多いので、余計な焦燥感や劣等感に駆られて自分のペースを乱してしまうこともよくある。

自分が発信するときも、「この投稿で誰かが同じように感じないか」などと気にしすぎて結局タイミングを逃す。…逆に自意識過剰すぎやしないか。

しかし、いまの時代は受動的な情報収集がスタンダードだ。知りたい情報に最短距離でアクセスしたいと考える「ググる」世代とは価値観が違う。タイムラインやタグやAIレコメンドで、思わぬ情報に出会える余地を残すことは、現代のサービスにはもはや必須。

思わぬ情報や新しいアイデアに出会えるメリットと、誰がなにを発言しているかわからない沼に飛び込む怖さ。これらをいつも天秤にかけながらSNSを開いている気がする。

苦手心理③: 情報発信と受信のペースが合わない

とくに動画・音声SNSに該当するが、相手の発信ペースと自分の受信ペースが揃っていないと、すぐに飽きたり思考がトリップしたりして最後まで見続けることができない。

発掘アーティストや音楽を紹介する『ヂラフマガジン』というメディアを運営しており、わたし自身も音楽フリークのため、YouTubeやサブスクで新しい音楽を探すことは多々ある。が、よほどグッとこない限り最後まで再生することはない。その「グッ」の幅が狭いので、実は終盤にグッとくる要素が盛り込まれていた楽曲もあっただろうと考えると、もったいない気もしてくるのだが…。

自分のペースで能動的に読める「文章」が、わたしには情報取得手段としてもっともフィットする。ライターだし。でもそういう人ってわりとマイノリティで、だからこそClubhouseが流行ったりするのだろう。

苦手心理④: マジョリティのプレッシャーに屈してしまう

「いいね」が大量に集まっている投稿や、いつも自分に「いいね」をくれる人の投稿には、たとえ気が進まなくても「いいね」を押さないと自分が嫌なやつみたいに思えてくる。そういう暗黙のプレッシャーも感じる。


…こんな面倒なこと考えてまでSNSやる意味、何なんw

と、SNSが上手なみなさんに思われてもしかたない。
でも、SNSのおもしろさや有益性もわかっているし、だからこそ音楽業界を盛りあげるためにSNS開発という手段を選んだので、プライベートでもできるだけSNSとうまく付き合っていきたいのだ。

『Signe』を共同開発している廣澤氏は、テックに強い26歳のエンジニア。彼のリテラシーと、わたしの弱者的視点(+音楽愛)を絶妙に掛け合わせて、ユーザビリティの高いサービスをつくっていきたいと心から思っている。

2021年春、正式リリース予定!

(カバー撮影・髙田みづほ)


【三橋 温子 Atsuko Mitsuhashi】
株式会社ヂラフ代表/ヂラフマガジン編集長
札幌出身、武蔵野美術大学卒。エン・ジャパン(株)制作部で企業経営者や人事の取材・広告制作を経験後、2013年にライター兼デザイナーとして独立。Web・書籍・雑誌などのインタビュー記事や、紙媒体を中心としたデザインを手がける。10代からライブハウスやフェスに熱中してきた音楽愛を形にすべく、2019年10月に音楽発掘ウェブマガジン『ヂラフマガジン』をオープン。2020年10月に(株)ヂラフを設立。学生時代の著書に『超短編 傑作選』vol.3・4(創英社/共著)がある。



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