【詩】Camera Obscura

　いつからか、
　飛べなくなっていたんだ。
　記憶を置いて、皆は今、
　空を見上げてたんだ。
　……実に虚しい。

　見えない影は、雨に傘を差さない。
　見えない影は、無意味に語らない。
　見えない影は、彗星にときめかない。
　見えない影は、見えないままに消えた。

　風が染み込む。
　時計を止める。
　深呼吸したのなら、
　素晴らしい明日。

　何故なのか、
　走れなくなっていたんだ。
　愛慕を置いて、皆は今、
　街を見下ろしていたんだ。
　……実に淋しい。

　見えない影は、夏に汗をかかない。
　見えない影は、脳裏に謎を生まない。
　見えない影は、彗星に意味を持たない。
　見えない影は、見えないままに死んだ。

　風が染み込む。
　時計を止める。
　脈を打ったら、
　素晴らしい未来。

　君は今、
　水晶体に何を写す？
　濁った街に、
　色彩を写し出して……！

　風が染み込む。
　時計を止める。
　涙流して、
　素晴らしい世界。

　……素晴らしい世界！