【詩】夜汽車
彼女の望みは
実に単純であった。
この世界の片隅で
自分たちの痕跡を消したかったのだ。
深夜の酔いと共に
孤高な旅へと向かって行く。
誰も僕等を知らない
そんな夜を憧れた。
……夜汽車は走る。
擦れる金属の音。
ガスや電気が心を揺らす。
ボックス席に座る僕等を
何処に連れて行く?
……夜汽車は走る。
目指すは暗闇の果て。
名も無きプラットフォーム。
影に澄ます僕等を
受け入れてくれるのか?
空気を押し切る鋼鉄の塊。
複雑な機巧をまとい駆けていく。
夜汽車は走る。
……僕等を乗せて走る。
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