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コロナの今こそ地元を学び直そう!地域住民と共に描く、これからの旅のあり方とは?

本記事は、2020年7月23日に開催された「日本インバウンドサミット2020」での関西エリアセッションのレポートです。

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コロナ禍で外国人旅行者がほぼゼロになり、国全体が見えない敵と戦っているように感じる中、どのように地域住民との共生を図っていけばよいのだろうか? 今大事なのは、この機会に様々な見直しや地元の学び直しを行うこと。そして地元の人々とコミュニケーションを取り、情報を共有し、共に取り組むことである。大阪のSEKAI HOTELと田辺市熊野ツーリズムビューローは、コロナの前からこうした点に力を入れており、インバウンドだけでなく国内に向けた試みもなされている。


今が地元を学び直す良い機会

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島田氏は、街づくりをする際には「1000年先を見据えて、100年後をイメージする。そして10年後の具体的な取り組みを考える」というスローガンを話している。1000年前の平安時代に平安京の人々が安心安全な街を作ってくれたことで、今の自分たちがいるわけなのだから、1000年先の子どもたちにも恥ずかしくないような街の取り組みをしていこう、というものである。

そう考えると、今我々が体験していることは、これからの1000年に向けた試練なのではないだろうか?と地野氏は語る。これまでの観光では、皆が自分たちさえ良くなればと思っていたり、インバウンド頼りであったりした中で、コロナはもう一度足元を見直す良いチャンスだろう。インナートラベルとして地元を学び直し、自分たち自身も地元にお金を落とすことは、回り回って最後に自らのところに返ってくるはずだ。

熊野のブラッド氏が語ったメッセージ「日本の精神文化の原点 熊野」にも通ずるところがある。ルーツを忘れてはならないのだ。日本人としての心を見直すことで、日本を立ち直らせることができるのではないか。


地元の人々とコミュニケーションを取り、共に取り組む

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大阪のSEKAI HOTELでは、コロナ禍でもできるアプローチとして日本在住の外国人を招いた食事会を開いている。しかし、そうした取り組みの中で、地元の人から「海外の人=国外から来ている」と捉えられ、「コロナを持ってくるのではないか」と心配されることもあるそうだ。地元との充分なコミュニケーションを取り、日本にいる外国人だということを伝えていくことが必要だと感じている。

ホテルづくりにおいては、地元の町工場と協業することも多い。関わりのある地元の人々を食事会に招待するなどして、地域の人々に顔が見える運営を心がけていると言う。そこで生まれたつながりを活かして、地域の人々の協力を得て、地域の文化を学べる旅行体験として「まちごと食べあるきチケット」を宿泊者に提供しているそうだ。

熊野でも、コロナ禍においては、旅行客が予約を希望しても地元の人々が怖くて受け入れられない、という問題が生じている。旅行客の受け入れを始める前の地域全体の心のケアが必要だろう。地域の人と対話し、地域ができるレベルでの情報発信をしなければならない。

田辺市では地元の人にお願いして、じもたび<地元旅>キャンペーンという取り組みも始まっている。インバウンドに関しては大抵経済の話になるが、「地元の人に自信を与える」という役割があることもアピールが必要だ。


これからの旅のあり方

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これからは、今まで以上に交通手段を選ぶことから旅が始まるだろう、と地野氏は考える。今まで電車や新幹線では飛ばしてしまったかも知れない、見えなかった景色が見えてくるのではないか。これまでは表面的な旅であったが、旅をする人はもっと街のことを知りたいと思うだろう。そこで個が発信する情報が貴重となる。街は人で作られており、その人たちが大切だと思っていること、自分たちが本当に愛するものを発信していく必要がある。

島田氏は、光を観ること(=sightseeing)が観光1.0だとすれば、2.0は体験型の旅、そして観光3.0は自分自身を振り返る旅であると言う。自分自身が何者なのかを振り返る場に旅をする、自分をもう一度内省できる場があると、人間の成長の旅となるのではないだろうか。

コロナ禍では、観光に携わるメンバーにおいても、それぞれの地域により取り組みが異なってくる。そのような中で情報共有の会があると良いだろう。皆どうなるか分からないのだから、お互いに情報があればヒントになり、そこから次のステップが生まれるはずだ。その土地ごとの歴史やそれぞれの強みを磨いていくことで、今までオーバーツーリズムが問題であったところも分散化するのではないか。

街を守っていけるような役割を個々に担っていただき、自分の大切な街を少しでも、一人でも多くの人に知っていただくということが大事だろう。皆で街を守ろうとすれば、コロナ明けに海外の人を含め「ようこそいらっしゃいました。来てくれてありがとう!」という気持ちで迎えられるのではないか。今は皆で助け合い乗り切ることが非常に重要だ。

<登壇者>
島田 昭彦 氏
株式会社クリップ 代表取締役社長。京都観光おもてなし大使。各地の地域活性、街づくり、食、住、遊の企画プロデュース、企業コンサルティング、インバウンド戦略等を行う。

渡辺 優 氏
SEKAI HOTEL株式会社 取締役。地域での日常体験を大切にした、分散型まちごとホテル「SEKAI HOTEL(セカイホテル)」の運営を行う。

地野 裕子 氏
コミュニケーションデザイナー。国内外の素材やコンテンツに、アイデアとデザインをプラス、作り手と売り手、作り手同士を繋ぎ、新しい"何か"を企画。

ブラッド トウル 氏
一般社団法人田辺市熊野ツーリズムビューロー ブロモーション事業部長。田辺市内の観光協会(田辺・龍神・大塔・中辺路町・熊野本宮)を構成団体として設立したDMOにて、官民共同の観光プロモーションを行う。

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執筆:株式会社ジェイ・リンクス 金馬あゆみ

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▼ 株式会社MATCHA(インバウンドサミット主催者)


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