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「日常」をどう活かすか。グリーンツーリズムが持つ可能性を探る

2020年7月23日に開催されたインバウンド業界最大規模のカンファレンス「インバウンドサミット2020」。「グリーンツーリズム」セッションの様子をお届けする。

本セッションでは、福井県、熊本県、徳島県で活躍されている3人が取り組まれている内容をはじめ、外国人観光客が何を目的で各地域に訪れるのか、地方の魅力、外部の人を呼ぶために取り組むべきことについて意見が出された。

外国人は日本の地方の暮らしや農業の方法について興味を持ち、各地を訪れていた。地方の魅力は、低コストで暮らせる上に、自分が口にするものの原産がわかることが挙げられた。また、外部の人を呼ぶにはSNSの情報発信はしかり、外部の人の目線となって地域の資源をアピールすることが重要だと指摘された。


外国人観光客が好む、農山漁村の暮らしと整備されていく受け入れ態勢

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大津氏によると、日本の第1次産業に取り組んでいてそのありのままの暮らしをSNSに発信し続けた結果、外国人はおのずと興味を持ち、やってくるという。さらに彼らの多くはリピーター(関係人口)となり、2回目以降も訪ねてくることが多い。

また大島氏は、外国人観光客は世界農業遺産に登録されたにし阿波での暮らしや、どんな農業をやっているのかなどを学びにくるという。自国との農業方法の違いや暮らしの違いのカルチャーショックを受けながら、そこで体験し学び、自分の中に落とし込みたい人が増えているとのこと。

そして最初は外部の人を受け入れることに戸惑っていた地元の方々は、修学旅行生を受け入れ始めると、次第に受け入れるのに慣れていった。現在では、言葉が通じない外国人観光客が来ても、スマホの翻訳ソフトを使ってコミュニケーションを取っている。


魅力を伝え、外部の方に来てもらうためには

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福井県に住む松平氏は、暮らす場所は海も山も近く魅力的な人たちが暮らしているが、それだけでは外国の方にとっては何が魅力なのかわかりにくいため、外国人観光客の視点で魅力的なポイントをどう見せていくことが大切だという。

このことは国内、主に都会に住む人に発信するときも同様であり、「来てほしい人にとって、自分が暮らす地域がどう映るのか」ということを意識しながら、トータルで見せていく仕掛けは大事だという。そのためにも資源を磨き上げると同時に、マーケットインも同時にしていく必要がある。

また、田舎にいて魅力的なことは、口に中に入るものがどこからとれたかがわかることが挙げられた。たとえば近所の方が作った野菜をもらい、自分は釣った魚やさばいたイノシシを村の人に渡す。このようなことは都会ではあまりありえないだろう。

そもそも都会に住む人の多くは、普段口にする食べ物がどこからきたのかもあまり考えず、それについて重要だと思わないため、その価値観をいかにパラダイムシフトするのかが一つ大きなハードルとなっている。


外国人を呼び込むために最初にやることは?

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外国人観光客を呼び込むための施策として、熊本県阿蘇に暮らす大津氏は、当初SNSやブログでの発信、友人にクリスマスカードを送るなど、個人的な「情報発信」から始めたという。特にSNSでは、英語で発信する農業者もしくは田舎に暮らす人は少ないため、生活者目線で暮らしの中の喜びなどを英語と日本語の両方で表記していくことも魅力を伝える第一歩になるという。
農業をやっている人なら、「WWOOF(ウーフ)」に登録することをおすすめした。

WWOOF:有機農家であるホストと、日本全国・世界各国のウーファー(利用者)の交流サイト。国内約350カ所のホストが利用している。

一方で松平氏は、「仲間づくり」を最初にするべきと話した。高齢化少子化や過疎化が進んでいるが、そのような中でも前向きな若い人間たちがここを何とかしよう、より良いものしていこうと集まれば、地域で様々な活動を取り組みやすいという。


グリーンツーリズムで新たな観光の形を

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グリーンツーリズムは海外の人にとって魅力的な要素を多く持っている。日本文化の暮らしや第一次産業を体験でき、地域の人々と交流ができる。筆者の理解では、今までの観光は「客側とホスト側」の経済関係が一般的であったが、グリーンツーリズムはもう少し温かい印象を受けた。

外部の人を誘致するためには、彼らの視点を意識しながら地域の魅力を情報発信していくことが重要だ。その際には、「みんなが主人公、みんなが主役」として、観光業者、農家なども含め魅力を発信できるといいだろう。地域の人々とも話し合いを重ね、目指す方向を共有し、暮らしやすい地域にしていくために、一丸となって取り組むとその地域が本当の意味で活性化するのではないか。

グリーンツーリズムには経済的利益を超えた多くの可能性が秘められていると感じた。

<登壇者>
大和田 順子 氏
ロハスビジネスアライアンス 共同代表。東京生まれ、東京育ち。ロハス関連の書籍を執筆し、日本国内の世界農業遺産認定地域がSDGsの観点でどのように取り組んでいるのかの調査や各地の地域づくりの支援に尽力。

松平 成史 氏
こしのくに里山再生の会 代表理事。福井県越前海岸周辺に暮らす。自伐型林業に取り組み、また地域30~40代の仲間たちと海や山を活かして国内外の人を誘致する。

大津 愛梨 氏
NPO法人田舎のヒロインズ 理事長。熊本県阿蘇草原を自然遺産に。農業の後継者不足を解消するために、子どもが農業を好きになる取り組みや、婚活バスツアーを実施。

大島 理仁 氏
つるぎ町役場 課長補佐。徳島県にし阿波を世界農業遺産に登録した立役者。欧米からの農業ツアーをはじめ、国際ワークキャンプ、ふるさと学習などに取り組む。

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執筆:落合志保
編集:明治大学 安田舜

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