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【読書感想文・辺境・近境(村上春樹 著)】旅で見つかるのは自分

Audibleで「辺境・近境」を聴きました。

以前、「職業としての小説家」を読んで、村上春樹という人に興味を持ちました。氏の小説はあまり読まないのですが、こういうのをあえて読むと、面白いな、と思います。Audibleでも氏の小説がちょこちょこ出始めているので、聞いてみようかな、と思っています。

本書は、30年くらい前に村上氏が実行した、国内・国外のいくつかの旅についての短編を収録したものになっています。

山口県の無人島
メキシコの僻地
香川県でのうどん紀行
モンゴル
アメリカ大陸横断
神戸

というように、多様な目的地です。

自分としては、「メキシコ」の部分で書かれていた

旅で見つけられるものは、自分以外の何者でもない

という内容の文章が妙に心に残っています。それに引きづられて読んでいると、神戸の下で

何が自分にできるのか

という言葉が出てきて、これも先述の文章と類似したものと思いました。

新しいものを見たり聞いたりすると、それは自分にとっての刺激となりますが、普段生活している上では一過性のもの。その刺激は普段の生活になまされて、気づかないうちに消えていくことが多いです。

それとは異なり、旅というのは、普段の生活とは違う環境に身を置くことですから、刺激が連続的に継続されて襲ってくるので、どんな刺激に対して自分が反応しているのか、それによって自分がどのような反応をしているのかがわかりやすいのかな、と思いました。

しかも、その環境が生活とかけ離れていればいるほど、反応がはっきりとわかるのだろう、と。

うどんの下で、うどんを3日間食べ続けるという旅行だったようですが、氏は、その体験とイタリアでのワイナリー巡りを類似したものとみなしています。ワインならワイン、うどんならうどんを食べ続けることによって、対象物に関する感覚が研ぎ澄まされていくのでしょうか?運動などで、疲れて立てなくなるくらいまでやって初めて正しいフォームになる、というようなことを思い出しましたが、その感覚と似ているのかな、と思ったのは僕だけでしょうか?

最近読んだ、「JKインドで常識ぶっ壊される(熊谷はるか 著)」などを読んでいると、自分が求める刺激、というのがなんとなく「こっち方向なのでは」というのがあります。コロナで外へ出られなくなり、そういう感覚がむしろ明確になったのかな?というふうにも感じます。


コロナが明けたら行きたい、やりたい、みたいなことが色々ありますが、それらを実行するためのモチベーションを上げてくれる、そんな内容の本でした。

最後まで読んでいただきありがとうございました。


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