後悔を取り戻す期限は、もう過ぎた。
以前、小中学校の同級生の榎本と電話で話していました。
榎本は、地元・沖縄で生活していて、毎日のように小中学校の同級生と遊ぶそうです。
その同級生の中の一人が、たまにこう言うそうです。
「稲本みたいな友達、本当に大事にした方が良いぜ」
その同級生は、小学校時代は僕と仲良くしていたのですが、中学生になってから僕をいじめる側に回ったことで、僕と仲が悪くなりました。
元々仲が良かったヤツが、ある日敵に回るのは怖いことで、常に戦闘態勢になっていないと、生きていられませんでした。
自分だけ仲間外れにされる、バカにされる、陰口を言われる、ありもしない噂を流されるなど、僕はそんなことばかりを受けていました。
当時の僕は、絶対に許さないと腹に決めて、それから10年近くもまともに口をききませんでした。
ただ、そいつが、僕をいじめる側に回ったことに後悔したうえで、自分と同じ過ちをしないように榎本に言葉をかけていることを知って、僕は少しだけ嬉しくなりました。
自分がそいつの友達として価値があったこと、自分がそれほど大事な存在だったことこと、自分と榎本の友情が羨ましがられたこと。
そういうことが積み上げられた結果、後悔させたのだと思います。
そいつの後悔を知った時、夢が叶った気持ちになりました。
10年かけて夢が叶ったのですが、不思議と心の底から嬉しくはありませんでした。
夢を叶えると言えば、叶った瞬間にガッツポーズして、涙を流すものだと思っていましたが、そんな感情はちっともなく、ただただ頷くことしかできませんでした。
僕は榎本からその報告を受けたとき、こう言いました。
「そりゃあ、そうだよな」
だって、この後悔は、当然の結果なのです。
「夢」というほど大げさなものではなく、ごく当たり前で自然なこと。
自分のせいで友達を失ったら、誰だって後悔します。
その友達が、他の友達と楽しそうにしていたら、羨ましくなります。
原因を作ったのは相手にあるので、後悔するのはしょうがないです。
そう悟った僕は、「まぁ、いつまでも引きずるのもばかばかしいから、そいつに会ってもいいよ」と榎本に言いました。
僕がいつまでも許さない態度を貫くと、周りも気を遣いますし、僕としても小さいことでくよくよしないといけなくなります。
所詮、年に一度しか沖縄に帰らないので、その時ぐらい昔のように仲良くしてもいいと思いました。
「榎本、俺に仲直りしてほしい? 3人で遊びたい?」
周りの友達が仲直りを願っていることなら、僕の意地が周りに迷惑をかけたことになります。
すると、榎本はこう言いました。
「まぁ、みんなハッピーな方が良いから、仲直りした方がいいんじゃない? でも、3人で遊びたいとかは別にないかな…。それよりさ、今年の年末、どっか行かない? 千葉と喜多連れて、あえて美ら海水族館とか行ってみるか?」
案外、どっちでも良さそうでした(笑)。
確かに仲直りといっても、以前と同じ関係に戻るとは限りません。
後悔を取り戻すには期限があって、それを過ぎてしまうと、もう戻らなくなるのかもしれません。
僕だって、周りが望んでいなければ仲直りする必要はないと思っていますし、そいつよりも会いたい人はたくさんいるので、優先順位は下がっていきます。
残酷かもしれませんが、人は簡単に無関心になるんです。
未だに、この仲直りに興味があるのは後悔した本人だけで、その他の誰も興味がありません。
みんなが興味があるうちに、周りの助けがあるうちに、行動しないと取り戻せないこともあるのだと思いました。
いつか仲直りする日がきたら、僕は残酷な態度をとらないようにしようと思います。
僕も許さない態度を貫きすぎて、後悔したくありませんから。
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