JST ERATO 稲見自在化身体プロジェクト

稲見自在化身体プロジェクトは、人間がロボットや人工知能などと「人機一体」となり、自己主…

JST ERATO 稲見自在化身体プロジェクト

稲見自在化身体プロジェクトは、人間がロボットや人工知能などと「人機一体」となり、自己主体感を保持したまま自在に行動することを支援する「自在化技術」の開発と、「自在化身体」がもたらす認知心理および神経機構の解析をテーマに先駆的な研究を展開していきます。

最近の記事

パイオニアが感じる未来の身体|稲見昌彦×Stelarc対談シリーズ 第2話

ビジョンに技術が追いついた稲見 Stelarcさんは、どうしてアーティストになったんですか。 Stelarc もともとはメルボルン大学の建築学科に入学したんです。ところが、かなり数学指向、工学指向、構造指向の学科だったんで、あんまり興味をそそられませんでした。だから何ヶ月かしてビジュアルアートのコースに移りました。そしたら自分は絵が下手だって気がついて、パフォーマンスを始めたんですよ。 稲見 なぜこれを聞いたかというと、私自身エンジニアあるいは研究者として、学会やワーク

    • 40年前、私は第3の手をつくった|稲見昌彦×Stelarc対談シリーズ 第1話

      イントロダクション瓜生 稲見研究室にお越しいただきありがとうございます。我々のプロジェクトとStelarcさんの作品は、重なる部分が多いと思います。ただ、我々は作品そのものよりも、研究成果に重きを置いている側面があるので、Stelarcさんの作品の方が洗練されているかもしれません。    我々は、さまざまな視点の統合を試みています。脳科学や神経科学、認知心理学との連携を重視していますし、稲見教授はバーチャルリアリティ技術の経験が豊富で、情報科学のバックグラウンドがあります。

      • 解き放たれた究極の人間|稲見昌彦×石黒浩対談シリーズ 第3話

        表現からの解放石黒 ここに挙げた「家族からの解放」とか「住居からの解放」とか、一個一個の未来シーンを考えても面白いかなと思ったんですよね。何か気になるやつあります? 稲見 「言語からの解放」が入ってないですね。 石黒 言語からの解放がない。そうそう、思念ね。思念(で動く)コンピュータですね。 稲見 はい。我々は言語によって考えることになってるけれども、本当にそうなのか。  あと、私がよくメタバース関連で話してるのが、3D空間(の表象)自体が人間のレガシーかもしれな

        • あらゆる制約を自在化できる世界|稲見昌彦×石黒浩対談シリーズ 第2話

          10万年先の人類の姿石黒 今度の万博で、うちは50年先をシミュレーションするっていうのを宣言しちゃったんです。万博のテーマは「いのち」なんだけど、僕のテーマは「いのちを拡げる」。「いのちを拡げる」っていうのは、テクノロジーでいろんな人間の能力の拡張が起こりますよ、ロボットも含めてそれに近づきますよ。要するに、テクノロジーと人間の境界がなくなっていくことを展示したい。  50年前の大阪万博は一番成功したんだけど、あのときはエコも何も関係ないし、未来に人間がどういうふうになるか

        パイオニアが感じる未来の身体|稲見昌彦×Stelarc対談シリーズ 第2話

          自在化は東洋ならでは|稲見昌彦×石黒浩対談シリーズ 第1話

          イントロダクション石黒 最近、私、ムーンショットで「自在」という言葉を勝手に使ってます。何で自在という言葉にしたかっていうと、(我々が手掛ける)ムーンショットの目標1がアバターで、(それとは別の)目標3が完全自律ロボットなんですよ。1人の人間が複数台のアバターを使うのが目標だったときに、「半自律」とかだと意味がよく分からないですよね。  自在という言葉で伝えたいのは、いかに細かい指示を出しても、どれだけ抽象的に指示を出しても、思い通り、意図通りに動くのが、自分のアバターであ

          自在化は東洋ならでは|稲見昌彦×石黒浩対談シリーズ 第1話

          原点に帰って社会を再構築|稲見昌彦×北原茂実対談シリーズ 第3話

          医療の前に社会北原 私自身は医療をやってるんですけど、医療者の多くは医療が全てみたいな顔をしてるんです。例えば経済学者が、経済学が世の中の全てと思っているようなもので。  ただし冷静に考えてみると、社会を支えてるのはあくまでも農林水産業なんですよ。1次産業ですね。安全な衣食住がないときに、医療なんか存在するはずがないんです。  その次に必要になるのは、やっぱり教育ですよね。その次に必要なのは、実は司法。世の中にとって、自分たちにとって何が正しいかを判断するメカニズムですね。こ

          原点に帰って社会を再構築|稲見昌彦×北原茂実対談シリーズ 第3話

          技術の介入が損なうもの|稲見昌彦×北原茂実対談シリーズ 第1話

          イントロダクション北原 最初に、私が今感じていることをお話しします。稲見先生のやられてることはとても面白くて、リハビリテーションとか医療とか、いろんなところで応用できる技術だと思ってるんですが、一方で疑問に感じるところもあるんです。それはなぜかって話を簡単にしたいと思います。   コロナウイルスのパンデミックが現在も続いていますが、感染症のパンデミックに関しては1918年に大きなものがあった。スペイン風邪です。このときにどれぐらい人が亡くなったかっていうと、分かってるだけで恐

          技術の介入が損なうもの|稲見昌彦×北原茂実対談シリーズ 第1話

          身体と意識の底知れぬ謎|稲見昌彦×北原茂実対談シリーズ 第2話

          身体に戻ってやり直す 北原 重度の脳障害になった患者を元に戻すときには、身体的にはボバースって方法を使います。運動の発生起源をたどっていくみたいなやり方です。つまり運動を覚えていく過程を、一からやらせるみたいな形にして教えるんです。  最近になって言語療法でも、だんだん同じようなことがいわれるようになってきました。言語を概念として教えようとしても駄目で、身体の動きと一緒に教えていくと、意外に回復することが分かってきてるんです。人間ってやっぱり動物なんで、体を動かすって、ものす

          身体と意識の底知れぬ謎|稲見昌彦×北原茂実対談シリーズ 第2話

          世界から逆に学ぶ|稲見昌彦×野村忠宏対談シリーズ 第3話

          第1話、第2話はこちらからお読みください。 勝てなくても続けられた理由野村 自分は体が小さ過ぎて苦労してきた部分もあって。中学入るときに32kgしかなくて、高校入るときには45kgしかなかった。もう小学校、中学校、高校なんかほとんど勝てない選手だったんでね。ただ、最終的にチャンピオンになったのは自分ってこともあるし。 稲見 それでも続けられたのはなぜなんですか。 野村 何だろう。自分は柔道一家に生まれたから、3歳から柔道始めるっていう環境はあったんですけど、決して親とか

          世界から逆に学ぶ|稲見昌彦×野村忠宏対談シリーズ 第3話

          意識が無意識になるまで|稲見昌彦×野村忠宏対談シリーズ 第2話

          第1話はこちらからお読みください。 やり過ぎをどう止めるか稲見 ちょっと話がそれますけど、トップアスリートの方々ってメンタルがものすごい強い。それ故に、逆に練習し過ぎて故障するかもしれない問題って、競技によっては聞くんです。そこはどうやってバランスを保てばいいと思われます?  うちの大学の場合、みんな心配になると勉強し始めてしまって……未知のことなんだからそろそろ勉強より実験して試してみた方がいいよ、みたいなところもあるんですけど。 野村 柔道の場合、ごく少数ですけど、や

          意識が無意識になるまで|稲見昌彦×野村忠宏対談シリーズ 第2話

          柔道は触覚の勝負|稲見昌彦×野村忠宏対談シリーズ 第1話

          無意識の探り合い稲見 実際のところ、柔道ではご自分の動きをどれくらい意識しているものですか。試合されてるときと、練習のときとの違いもあるでしょうが。 野村 例えばゴルフをするってなったら、まず最初にフォームがあって、何度も繰り返し繰り返し、その「形」を覚えるわけじゃないですか。自分は全然できないですけど。 野村 柔道の場合も同じで、背負い投げっていう技であれば、その動きをもう体が覚えるまで繰り返し反復でやる。手首の使い方、肘の曲げ方、腰の回転の仕方、足の運び方。これが全部

          柔道は触覚の勝負|稲見昌彦×野村忠宏対談シリーズ 第1話

          若者と考える未来、社会、人間|稲見昌彦×細田守対談シリーズ 第3話

          第1話、第2話はこちらからお読みください。 未来はどうなるのか稲見 今回、学生たちに対して細田監督から事前にお題を頂きまして、その結果をいくつか拾ってみましょうか。「未来はどうなっているのか、どうなったら面白いと思うのか」というお題で回答を書いてもらったんです。 細田 ひとつのテーマに3から10個回答をいただきました。。 稲見 3から10というのがすごい大切だというのが、事前の打ち合わせで非常に印象に残っていまして。たぶん、一つか二つ挙げなさいというと、意外とかぶるかも

          若者と考える未来、社会、人間|稲見昌彦×細田守対談シリーズ 第3話

          メタバースに僕が託す希望|稲見昌彦×細田守対談シリーズ 第2話

          別の人生を生きる稲見 我々が触れるメディアには、活字やテレビ、漫画やゲームもあったりする中で、映画って体験としてはどういう位置付けとお考えですか。うまく言語化できないんですが、映画とVRって違う気もするんです。 細田 例えば、(ジェームズ・)キャメロンが(『アバター』で)立体眼鏡を掛けさせることを全世界の映画館に強制しましたけど、しばらくしたら元に戻ったじゃないですか。そういう意味では、VRと映画って同じともいえるし、違うともいえるっていう。やっぱり(映画は)視覚体験だけで

          メタバースに僕が託す希望|稲見昌彦×細田守対談シリーズ 第2話

          僕が文明批判よりもしたいこと|稲見昌彦×細田守対談シリーズ 第1話

          イントロダクション稲見 本日は、特別ゲストとして細田守監督に我々の研究室、リビングラボ駒場にお越しいただきました。自在化身体セミナー、そして(東京大学の授業の1つである)人工現実感特論の講義の一環という形です。本日はよろしくお願いいたします。 細田 こんにちは。アニメーション映画監督の細田守です。今日はどうぞよろしくお願いします。 稲見 まず私から伺いたいのは、細田監督の色んな作品がある中で、今の言葉ではメタバースと申しましょうか、そういう技術が登場することが多いと思うん

          僕が文明批判よりもしたいこと|稲見昌彦×細田守対談シリーズ 第1話

          企画倒れでも、早過ぎだとしても|稲見昌彦×奥秀太郎対談シリーズ 第3話

          (第1話、第2話はこちらからお読みください。) ファラデーのひそみに倣う稲見 舞台とテクノロジーでやはり思い出すのが先ほどのペッパーの幽霊ですね。開発したのがジョン・ペッパーという方なんですけれども、その方はRoyal Polytechnicの所長もやってたんですよね。その所長が当時のハイテク技術として、ペッパーの幽霊を作って、特許も取ってるんですよ。ちなみに、それより前の18世紀末ぐらいからロバートソンというベルギーの技師がファンタスマゴリア(Phantasmagoria

          企画倒れでも、早過ぎだとしても|稲見昌彦×奥秀太郎対談シリーズ 第3話

          技術と文化のあわいへ|稲見昌彦×奥秀太郎対談シリーズ 第2話

          (第1話はこちらからお読みください) 身体を分け与える未来稲見 奥監督の映画『阿修羅少女』の少女は普通の身体ですけど、メタリムのヒントの一つは阿修羅だったりします。たぶん、昔から人が夢として持ってたんでしょうね。千手観音とかもそうかもしれませんし。私の勝手な仮説では、千手観音は本当に1000本手があるのではなくて、ものすごい速く動かして、残像で1000本あるように見えるんじゃないかと考えたこともあるんですが。  それはともかく、世の中もしくは身体を自由自在に操れることの象徴

          技術と文化のあわいへ|稲見昌彦×奥秀太郎対談シリーズ 第2話