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経済学者の思想をざっくり学べる~古代から現代までの思想を一気に抑える

経済学の目的

社会が資源(リソース)をいかに使うかを研究するためにある

若い読者のための経済学史

若い読者のための経済学史より抜粋

「経済学」と聞くと、血の通った人間世界を
無機質なものにはめ込み、退屈な統計や数字(データ)ばかり
の学問だと思われるかもしれない。
しかし本当は、
どうすれば人類が生き存え、健康でいられて、教育を受けられるか?
を考える学問。

同じ人間なんだから、平等にそういった機会を
分け与えれば、上記課題は解決できるはずだが、
今も貧しい国と豊かな国がいて人間は平等ではない。

なぜなら、それら資源は「希少であって有限である」から。
それらを手にするために「費用(コスト)」が必ず発生する。
そのために、何かを手に入れるために何かを手放す「選択」が必要となる。
希少性と機会費用は、経済の基本原則として存在する。

つまり、経済学は上記原則を考慮したうえで、
次の2つの問いを重要視している。
・社会がいかにして希少性による最悪の結果を克服するか?
(ex)地球という有限な資源を人類の生存に使うか?破滅に使うのか?)
・なぜ、ある社会ではそれがすばやく行われないのか?
(ex)ある国の子供たちは教育をうけれるのに、ある国は
教育を受けれない)

前置きが長くなったが、経済思想の歴史を過去の偉人を
通して、見てみよう。

ヘシオドス(前700~)

人間は、生きるために働かなればならない。

プラトン(前427 - 前34)

富の追求(黄金や宮殿)は人を堕落させる。
兵士や王には私有財産は許されない代わりに、
全てをみなで共有する。

アリストテレス(前384~前322)

財産の私有が認められれば、人はもっているものを
大事にし、誰が共有の財産に貢献しているかを
めぐる争いは減る。

アウグスティヌス(354~430)

所有物は、信仰に満ちた良き人生を
送るための手段にすぎない。

トマス・アクィナス(1224~1274)

経済上のもっとも重い罪は、
貨幣に利子をつけて貸しつける(高利貸し)である。
必要以上にお金があるなら、貧しい人々に
与えなければならない。

トーマス・マン(1571- 1641)

輸入は悪。だから、
輸入を制限することで、労働者よりも商人を優遇。
輸入品に課税すると、その国の利益は増えるが、
庶民は生活必需品に多くのお金を払う必要がある。

フランソワ・ケネー(1694- 1774)

農民の課税をやめ、かわりに貴族に課税すべき。
なぜなら、経済に活力をもたらす「余剰」は
(川で魚を捕る漁師、農作物を育てる農家など)
彼ら生産者が生み出すものだから。
また、銀行家や商人は、みずからは何も貢献することなく、
他者の作り出した価値を移動させるだけの存在。
余剰が増えれば、循環する資源が増え、経済は拡大する。

アダム・スミス(1723 - 1790)

自分にとってもっとも良いことをすれば、
結局はより多くの人の利益になる。
つまり、社会に調和をもたらすのは
人々の「博愛心」ではなく、
みずからの利益を追求するからである。
※ただし、お互い信頼できる場合に限る。
労働の専門化、分業化の仕組みが広がれば
より多くのものを安く生産でき、市場が拡大し、
雇用を増やし人々を豊かにできる。

デヴィッド・リカード(1772 - 1823)

すべての国が比較優位のもの
(日本ならXXX、アメリカなら△△△、イギリスなら○○○)
をもつことになるので、
すべての国が比較優位にある財やサービスに特化し、
貿易することによって、より多くの利益を得られる可能性がある。

シャルル・フーリエ(1772 - 1837)

工場と金儲けの社会は人間から尊厳を奪う。
分業化された退屈な労働によって、
食料と住まいを得たとして、
自分たちの個性を活かせるような
仕事をどうしたら見つけれることができるか?

トマス・マルサス(1766- 1834)

人が増えれば貧困が拡大する。
なぜなら、いずれ食料の供給量が
人口増加に追い付かなくなるから。
チャリティは貧困層にとっても社会全体にとっても有益ではなく、
不道徳でみじめな物乞いを増やすだけだ。

カール・マルクス(1818- 1883)

資本家が「生産手段」すなわち商品の生産に必要な
資本を所有する。労働者が所有するのは、みずからの労働力だけ。
資本家の下で働いて搾取されるしかない。
資本家は資本を増やして裕福になる。

なぜなら、資本家が資本を所有し、
労働者がうみだした余剰価値を
利益として自分のものにするから。

疎外は財産の私有から生じる。私有財産によって社会が
資本を持つ者ともたざる者に分断されるなら、労働者が
革命を起こして私有財産がなくなれば、人々は人間らしさを
取り戻すことが出来る。

アルフレッド・マーシャル(1842 - 1924)

顧客は価格が安ければたくさん買うし、高ければ買わない。
(顧客は)限界効用を支払う価格と比較している。
つまり、市場には限界原理が働き、
価格は需要と供給の両方で決まる。

市場競争の特徴は、売り手も買い手も力を持たないこと。
価格とは単に需要と供給によって決まる価格に過ぎない。
プレステ5が効果なのは、供給が限らている一方で、
需要が多いから。

フリードリヒ・リスト(1789 - 1846)

新しい産業は、事業が継続できるように支援を受けながら、
製品についてよく知り、海外の生産者と競うことが
できるようになるまで訓練を積ませる。
なので、海外製品に関税を課すことは、
自国産業を成長させる契機となる。

そのために消費者は、モノの購入に多くの代金を支払わなければ
ならなくなるかもしれない。

しかし、その犠牲には価値がある。
自国の産業が成熟すれば、自国の経済は前進するのだから。

ウラジーミル・イリイチ・レーニン(1870 – 1924)

独占資本主義のもとでは、
経済がうみだす収益の多くは、
少数の金持ちと強大な力を持つ金融業者のものになる。

アーサー・セシル・ピグー(1877 - 1959)

市場は社会に存在する資源(公共財)を最大限には活用できず、
国民全体の幸福のためにではなく、
金儲けの道具に利用される。
お金に変えれないモノ(人間の道徳心、臓器売買)まで売買の対象にされ、将来の投資ではなく、消費に使われてしまう。
結果悪いものが過剰につくられ、良いものが過少になる。
このような場合、政府が市場を正しい方向に導く必要がある。

ジョーン・ロビンソン(1903 - 1983)

広告が類似の競合品(コカ・コーラとペプシ)
との差別化に役立つ可能性がある。
「ブランド・イメージ」を創出することによって、
競合商品とは違うことを買い手に見せる。

その違いによって、企業はほかのブランドと競合しながら、
ちょっとした独占力のようなものを得る。

ルードヴィヒ・フォン・ミーゼス(1881 - 1973)

机上の理論だけで計算した価格が現実的なはずがない。
人々がこれは自分たちのお金の問題だと思うからこそ、
市場は機能する。

ソースティン・ヴェブレン(1857 - 1929)

人々の選択を本当に理解するには、直観や習慣など
育った社会によって形成されるものに目を向けなければならない。
社会全体が消費社会ではなく、モノづくりの本能に支配されれば、
顕示欲による浪費はなくなるだろう。

そうすれば、ただ隣人に後れをとらないことだけのために
買い物を続ける<メリーゴーランド>を止めることができるだろう。

ジョン・メイナード・ケインズ(1883 - 1946)

だれも「悪くない」のに、
なんらかの理由で経済全体がうまくいかなくなる。
経済はひとりでは正常な状態に戻ることができないので、
政府がやらなければならない。
政府は、大恐慌のような災難が再び怒らないよう、
経済に対して、これまでになかったほど
大きな役割を果たさなければならない。


人々が消費ではなく貯蓄をし、経営者が投資をやめれば、
全体として支出が減り、経済成長が止まる。

なので、経済不況時には、
政府は、貯蓄としてだぶついている資金を借り上げて、
みずから使うべき。
その政府支出は、経済の流れを循環して、
初期投資以上の新しい支出を生み出す。

ヨーゼフ・シュンペーター(1883 - 1950)

経済発展に必要なイノベーションをおこし、
結果として生活水準を長期的に
向上させたのは、起業家にほかならない。


経済を変え、最終的に生産を増やし、
価格を下げることができる技術の進歩は、
独占によって促進される。

一方、資本主義の活力には、
自己破壊につながる闇が含まれている。
資本主義の発展による効率化のせいで、
退屈で陰鬱な人生をおくらなくてはならないことに辟易する。
やがて、人々はビジネスや金儲けに不信感を頂くようになる。

ジョン・フォン・ノイマン(1903 - 1957)

決断で重要なのは<敵がなにをしそうか>を理解することだ。
自分がすること、敵がしようとすることを理解できれば、
結果がどうなるかわかる。

ジョン・ナッシュ(1928 - 2015)

敵の考えに影響を与えることがなによりも重要なことだ。
報復すると脅す企業は、弱さよりも強さを示す必要がある。
経済の分野では、市場のニーズよりもはるかに大きな工場を建て
ることが、世界破壊装置を仕掛けることに相当する。

フリードリヒ・ハイエク(1899 - 1992)

国家による経済の管理は、
混合経済(資本主義と社会主義の中間)という
中間的なやりかたであっても、人々から自由を奪う。


つまり、政府が人々の代わりにすべてを決めることになってしまう。
人々は選択することができず、個人の自由がなくなる。
経済的な自由がなければ、政治的な自由もない。
政治的な自由がなければ、
人々は自分の考えを持てなくなる。

アーサー・ルイス(1915 - 1991)

利益を得るために労働者を雇い、
製品をつくって売る資本主義的な農場や工場で構成される<近代的部門>と
利益を最大化するのではなく、親族や友人で利益を分け合う
家族経営の農場や工場で構成される<伝統的部門>の
「二重」経済が存在する。

近代的部門は、低賃金で多くの労働者を雇用し、
高利益を得ることができる。

ゲーリー・ベッカー(1930 - 2014)

犯罪にも費用と便益があり、犯罪を防ぐには
それらを考慮しなければならず、
人間は合理的であり、みずからの好みを満足させる行動をする。
お金がいくらあり、費用がどのくらいかかるかを考えて、
もっともよいことをする。

つまり、どんなことにもトレードオフが存在する。
人間が機械のように生産に貢献すること、
教育によって能力を磨けば人的資本と雇用の見通しを強化できる。

ロバート・ソロー(1924~)

工場や機械など資本を増やしても、
せいぜい短期的な成長を促すだけだ。
経済の長期的な成長には、技術の進歩が必要だ。

ケネス・アロー(1921 - 2017)と
ジュラール・ドブリュー(1932-2004)

調整役がいなくとも、市場の経済は
適切に運営されている学校と同じように機能する。
そこには調整がある。人々の欲求のバランスが保たれ、
何も無駄にならない。

アンドレ・グンダー・フランク(1929 - 2005)

貧しい国は貿易によって、安い砂糖やコーヒーを輸出させられ、
いつまでも豊かな世界に追いつくことができないという罠にはめられる。

必要なのは生産の特化ではなく多様化、さまざまな製品をつくることだ。
砂糖を輸出して得た外貨で他国の車を買うのではなく、
車の輸入をやめて、車の生産工場を建設したほうがよい。

ジェームズ・ブキャナン(1791 - 1868)

富裕層に課税して、貧困層を扶助したり、
医療や学校教育を提供したり、富の再分配をすること
だ。

政治家が第一に臨むことは現職に留まることだ。
政治家は権力を保持するために「超過利潤(レント)」
をつくりだし、支持者に与える。
特定集団の人々に特権を与えることによって、
政治家は政治的な支持、資金さえも望む。
苦労もなく利益を増やせるという期待によって、
そういった「レント・シーキング」が助長され、
企業は金を使い、政府から特権を貰えるように働きかける。

ミルトン・フリードマン(1912 - 2006)

政府が経済の成長に合わせて、貨幣供給の増加率を、
たとえば年3パーセントに固定すること
だ。
経済はほうっておいたほうがむしろ安定する。
需要ではなく、経済の供給面を強化すべき。

ロバート・ルーカス(1937~)

政府が経済を活性化する能力は、一時的にせよ、
労働者をだませるかどうかにかかっている。

ジョージ・ソロス(1930~)

わたしたちはパンを焼くための小麦や、車を走らせるための
ガソリンなど、使うものを購入する。

しかし、投機家は、使うつもりがなくても買う。
小麦の栽培地域で干ばつが予想されると、
価格が高騰するだろうという思惑から大量の小麦を買う。
そうやって、投機家は利益を得るために「投機アタック」を仕掛ける。

ジェフリー・サックス(1954~)

経済に深刻な問題がなくとも、
投機家が経済危機の引き金を引くことは可能だ。

アマルティア・セン(1933~)

貧困とはお金や食べ物がない、というだけでなはない。
貧しい人々は、
より幸福な人々が当たり前に享受している多くの自由がない
のだ。

豊かな生活には、食べ物があること、健康であること、
社会の一員であること、安全であることなど、
さまざまな潜在能力が必要になる。
社会の発展とはそういった潜在能力を拡大すること
だ。

より多くの人が地域社会に参加し、健康で安全にいられれば、
社会は発展する。とくに教育によって、
読む、書く、思考する力が得られれば、
なりたい自分になる自由が得られる。

ジョージ・アカロフ(1940~)

市場がうまく機能するためには、
車の価格や品質、従業員が懸命にはたらくかどうか、
借り手はどのくらい信用できるかなど、
人々がすべての情報をもっていなければならない。

買い手が車の状態を知らなかったり、
保険の売り手が顧客の健康状態についてほとんど
知らなかったりする場合のように、重要な特性が買い手または
売り手に知られていないときに逆選択が起こる。

新自由主義者は、貸し手が借り手について十分な
情報をもっていない状況下でも、
国を超えて資金を無制限に流出入させてしまう
自由市場政策のリスクを、完全に無視している。

フィン・キドランド(1943~)

今日最善のものが、明日には最善ではなくなる。

ダイアナ・シュトラスマン(1902 - 1980)

経済に対する考え方は、
様々な人を実際にどう扱うかに影響を及ぼしうる。

女性は経済学のストーリーのなかで大きな役割を果たすことがなく、
基本的資源を公平に分配されていない。
賃金が支払われないために、目に見えない労働には、
買い物、料理、育児などがある。

ダニエル・カーネマン(1934~)

人は<獲得(ゲイン)よりも<損失(ロス)をきらう。
または、人は一度手にしたものは、より大きな価値を持つ。
なのでそれを手放すときは値段を多く見積もる。

ロバート・シラー(1946~)

多くの人がテクノロジー企業で儲ける隣人をみて、
株価が上がり続けることを信じ、株を買った。
そのことが株価を一層押し上げた。
株価が上がるという確信はさらに強くなった。
企業の製品に将来性があるという判断で
株が買われていたのではないため、
株価は企業の真の価値を反映してない。

ハイマン・ミンスキー(1919 – 1996)

投資は、将来の利益が黒字になるか
どうかといった数値計算で期待できるからというより、
むしろ楽観的な人々の行動に左右される。

貨幣と、融資によって貨幣をつくりだす銀行が、
経済を推進し、結局は経済を危機に導く。
資本主義は発達するにつれて不安定になる。

トマ・ピケティ(1971~)

超富裕層の人々の所得が飛びぬけて高いために、
平均値が引き上げられ、
大多数の所得は平均よりも低くなっている。

超富裕層の人々の所得が飛びぬけているのは、
飛びぬけた生産性の成果ではない。

富の再分配でより平等にはなるが、経済成長は鈍化する。
不平等をなくすためには資産の収益率を下げ、
世界の超富裕層の財産に対する世界規模での課税が必要だ。

経済学に期待すること

経済学は、
現実の社会、人々が置かれている事実の研究
であるべき
で、
どうやったらお金儲けができるだろうか、
統計データをみるだけの数字ゲームになっては
いけないと思う。

同じ人間として生まれても、
生まれる環境(国、社会、家庭)が違うだけで
将来が決まってしまうような不平等社会。
一部の権力者だけが優遇され恩恵を受けるルールとなって、
大多数の人々は過酷な環境を強いられる社会。
国民みな等しく貧しくなろうと誘導する日本社会。

そういった本人の努力だけでは
どうすることもできない、
国民が苦しむ社会であるならば、
ルールを変える必要がある。

経済学はそうやって目の前にある
悲観的な現実に対して、なんとかしたいという
熱い思いによって発展していった信じたい。

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