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趣味は「映画と読書と音楽」と言っても良いですか? vol.140 読書 月村了衛「機龍警察 火宅」

こんにちは、カメラマンの稲垣です。

今日は読書 月村了衛さんの「機龍警察 火宅」についてです。

2010年代最高の警察ミステリーと呼ばれる「機龍警察」シリーズの初の短編集。

至近未来の日本を舞台に新型近接戦闘兵器「龍機兵」(3mほどのパワードスーツの様なもの)を擁する警視庁特捜部の活躍を描くSF小説でもあり警察小説でもあります。

自分は本は出先で読むのでハードカヴァーでは読まず、文庫本派なので「機龍警察」、「機龍警察 自爆条項」、「機龍警察 暗黒市場」の3つまでしか読んでいないです。

刊行順では次に「機龍警察 未亡旅団」、「機龍警察 火宅」、「機龍警察 狼眼殺手」、「機龍警察 白骨街道」だが、この短編集はシリーズの順番でなくても良さそうです。

8編の短編からなり、機龍警察の登場人物、(龍機兵パイロット主役の三人だけでなく、脇役の刑事など)にスポットを当てて描いている。

それが全部面白い。機龍警察シリーズの大筋では関係ないが、より人物の深みを知れることになります。

そうよくあるシリーズの短編集って、箸休め的なファン向けのサービスとしての番外編として扱われることが多いが、

今作は登場人物の過去や関係者や違う国の悲惨な状況やこの近接戦闘兵器にまつわる戦慄するような未来まで描いている。



物語は、

「火宅」由起谷主任が死の床にある元上司を見舞いに行きある秘密を知ることになる話。

「焼相」テロリストが児童教育センターに立て篭もり、龍機兵のメンバー三人で最新兵器を使って人質救出をする話。

「輪廻」少年兵にまつわる悍ましい話。

「済度」ライザが南米で武装組織に間違えられ、その間違えられた女性を救出する話。

「雪娘」雪の日ユーリが串刺しになった被害者を捜査する中家にいた女の子にまつわる話

「沙弥」由起谷主任が高校生の頃荒れていて、将来警察官になりたいと言っていた不良友達がある日犯罪を犯し死んでしまう。不審に思った由起谷青年は警察官の叔父に相談する話

「勤行」宮近特捜部理事官は娘のピアノの発表会を控えている日、国会答弁のために質疑応答の文章を作らなくてはいけなくなった。徹夜で作ったが急遽局長が倒れ国会に出なくてはいけなくなる話。

「化生」ある国の官僚が自殺したが、いろいろな疑惑があり、どうも重要な機密を漏洩していたかもしれないと捜査する話。その機密はこの機龍警察にも関係することに。

という8編。

一つ一つが「機龍警察」の登場人物が出てきて独立した話。

新型近接戦闘兵器「龍機兵」は1編しか出てこず、どちらかというと人の内面に深掘りした話が多い。

機龍警察はSF小説の側面と警察小説の側面を持つ。そのジャンルレスなのが面白いが、今回は警察小説だ。

この本の最後で、「機龍警察」シリーズの不穏な未来を予感させるラストシーンは、怖いような楽しみのような、とても印象的でした。

表紙の写真はタイの世界遺産「古都アユタヤ」にある「ワット・マハタート」
木の根で覆われた“奇跡の仏頭”として知られる寺院

今日はここまで。



よく聞き、よく見ろ。
捜査はそれに尽きるんだ。どんなときでも耳と目をよく使え。
頭は放っておいても耳と目についてくる。
/P.14「機龍警察 火宅」









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