趣味は「映画と読書と音楽」と言っても良いですか? vol.188 読書 小野不由美「東亰異聞」
こんにちは、カメラマンの稲垣です。
今日は読書 小野不由美さんの「東亰異聞」についてです。
小野さんの「十二国記」や「屍鬼」を読んで、彼女の作り出す圧倒的な世界観のファンになりました。
そこで好きになったので単発ものも読み始めました。
「東亰異聞」、明治時代の東亰が舞台。”東京”ではなく”東亰”なのがミソ、パラレルワールドなので現実の世界から少しづれた奇々怪々な世界がすんなり始まる。
もうその少しずれた明治時代で怪しい世界観がなんとも美しく奇妙でため息が出ます。
怪しく美しい京極や乱歩や荒俣宏の世界の様。
明治って西洋の文化が入ってきて人々は現実的になり、しかしまだ江戸を引きずっていて妖怪や夜の闇などを怖がる、両方が入り混じった混沌としている時代。
この本はミステリーなのかホラーなのか怪談なのか、どちらともつかず割と困惑してしまう。
そうミステリーは謎解きが大事ですが、なんだかその謎解きを途中でほっぽり出されて、まあ怪談にするのかと思いきや、やはりミステリーで、最後にやはり怪談になってしまう。
世界観は完璧でした。なのに物語は不透明でした。
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物語は、明治時代の東亰。夜に怪しげな怪人たちが蠢く。
人を高いところから突き落とし全身火だるまの姿の火炎魔人。
夜道で長い爪で人を裂く闇御前。
次々とその怪人が起こした奇怪な事件が起こりそれらを調べる新聞記者。その記者の仲間である大道芸人たちの顔役、便利屋の青年。
二人はその怪人たちの事件を追っていく。
ある日公爵家の青年が闇御前に襲われたところを幸いにも軽傷で済んだ。
新聞記者はその青年について調べるとある有名な公爵家の次男だった。
性格は温厚で品行方正。
もう一人公爵家に同じ日に生まれた長男がいた。
彼は不良華族だった。
その公爵家の亡き先代の妻はその不良華族を追い出そうとしているところに不審な死を遂げていた。
怪しげな魔人たちによる殺人事件は、偶然に公爵家の次男を襲ったのか、それとも果たして公爵家の跡目争いが関係するのか?
新聞記者と便利屋の二人が探偵役になり、怪人たちの事件と、二人の公爵家の争いに巻き込まれる。
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まあ筋は途中までミステリーの謎探しとして面白い。
ただ公爵家の跡目争いが、怪人たちの殺人事件に絡んでくると、ちょっと急に道が変わったように、何かミステリーではなくなり、怪奇ものになっていく。
自分にはちょっと難しかったです。
明治の世界観である西洋と日本のミックス、
ミステリーと怪談のミックス、
東亰というちょっと時空がズレた東京のパラレルワールドと
小野さんは見たことのない世界を作ろうとかなり意欲的だと思います。
ただまだ現実的にしか思考できない自分には、ジャンルレス、現実の外側に足を踏み入れて楽しめる段階ではありませんでした。
そうこれはパラレルなんです!嘘でも幻想でも良いんです。
いやその嘘を積極的に楽しめたら良かったかもしれません。
読んでいて迷子になったので、あらすじはわかったので、いつかもう一度読んでみたいと思います。
今日はここまで。
「河童だの人魚だの、見世物があっても本物だったことはござんせん。それでも人が集まるのは、嘘でもいっこうに構やしない、むしろ嘘を観るために集まっていたからじゃァありますまいか。
その本当のような嘘のような曖昧なところを、人は愉しんでいたのではなかったのでしょうかね」
/P.134「東亰異聞 」より