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PTSDの傷跡



みなさん、子供の頃の思い出って、誰しもありますよね。楽しいこともあれば、悲しいこともあると思います。例えば、お父さんやお母さんに連れて行ってもらった海や山での遊び。砂浜で遊んだり、山の中を探検したり、心躍るような体験をした記憶があるのではないでしょうか。

でも、楽しい思い出だけではなく、辛い記憶もありますよね?。大事なペットが亡くなって一晩中泣き明かしたり、大好きだったおじいちゃん、おばあちゃんが病気で亡くなって心に穴が空いたような気持ちになったり。人生には、悲しいことも、嬉しいことも、楽しいことも、いろいろな経験が詰まっています。

こうした中で、子供の頃に親から受けたネガティブな経験、それも無視できないものです。ある研究によると、特に虐待や強いストレスを受けた経験は、脳にも影響を与えることがわかってきたのです。

まずご紹介したいのは、言葉による虐待です。約1000名近い人たちからスクリーニングし、言葉の暴力を受けた人たちと、そうでない人たちを比較しましそうです。多くの人は、言葉の暴力では心は傷つかないし、ましてや脳までも傷つかないと思っているかもしれませんが、実際はそうではないことがわかってきたのです。

言葉の暴力とは、叱りつけや侮辱、恐怖を与える言葉、脅しや、脅迫、あなたを過小評価するような言葉を指すものです。こうした言葉を日常的に親から浴びせられてきた人たちの脳を調べたところ、聴覚野が変形していることがわかりました。


私たちの脳の中で特別な部分、聴覚野について。聴覚野は音や言葉を理解するのを助けてくれる場所なんです。ちょうど、お気に入りの歌を聴いたり、お友達とおしゃべりしたりするときに、聴覚野が一生懸命働いているんですよ。

でもですね、この聴覚野はとてもデリケートな部分なんです。想像してみてください。あなたの耳の近くに小さな妖精が住んでいて、その妖精が音や言葉を魔法のように理解する手助けをしてくれるんです。でも、その妖精が毎日毎日、大きな声で怒鳴られたり、ひどい言葉を投げかけられたりすると、どうなっちゃうと思いますか?

そう、その妖精はとても疲れてしまって、うまく魔法が使えなくなってしまうんです。これは実際には、私たちの聴覚野が変形してしまうということなんです。言葉の暴力、つまりひどい言葉や怒鳴り声は、脳の中の聴覚野に悪い影響を与えてしまうんですね。

例えば、あなたが大好きな本を読んでいるとき、もしも誰かが大声で怒鳴り続けていたら、本の内容が頭に入ってこなくなりますよね。聴覚野が変形すると、それと同じようなことが起こるんです。言葉を聞いたり、理解したりするのが難しくなってしまうんですね。

でも、心配しないでください。優しい言葉や楽しい音楽、そして穏やかな話し声は、聴覚野を元気にしてくれます。だから、みんなも周りの人に優しい言葉をかけたり、楽しいおしゃべりを楽しんだりすることがとっても大切なんです。


さらに、令和2年(2020)年4月1日から日本社会で大きく変わった体罰についても触れておきたいと思います。体罰は、小さい頃に受けたものであっても、脳の発達に大きな影響を与えています。例えば、前頭前野が小さくなることがわかってきました。前頭前野は感情を司る部分であり、ここが萎縮、小さくなることで感情のコントロールに問題が生じる可能性があるのです。


脳の中で特に重要な部分である「前頭前野」についてですが、この前頭前野は、頭の前の方、ちょうどおでこの後ろあたりにある部分なんです。ここは、私たちが想像したり、考えたり、計画したり、閃いたり、判断したりする力をコントロールしています。ちょっと冒険を例えて前頭前野の役割を伝えていきたいと思います。

前頭前野を「脳の司令塔」と考えてみてください。この司令塔は、毎日たくさんの指令を出して、私たちが上手に生活できるように助けてくれています。たとえば、学校の宿題をやるときに、まず何をやるか、次に何をやるかを決めるのは前頭前野の仕事です。まるで、海賊のリーダーが地図を見ながら探検のルートを計画するのと同じです。

さらにです、お友達と遊ぶ約束を守るのも前頭前野のおかげです。約束の時間や場所を覚えておいて、それに従って行動するのもこの司令塔の役割です。まるで、海賊が仲間と一緒に探検を続けるためにお互いを信頼し、助け合うような感じです。


でもですね、前頭前野はとてもデリケートな部分でもあります。もし、毎日厳しい体罰を受けたり、強いストレスにさらされたりすると、この司令塔は疲れてしまい、うまく働かなくなることがあります。

もし、海賊のリーダーが毎日怒鳴られたり、暴力を振るわれ、言葉の暴力や自由を奪われ、厳しい訓練を受けたりしていると、次第に元気がなくなり、探検の計画がうまく立てられなくなります。それと同じように、前頭前野が萎縮すると、感情をうまくコントロールできなくなったり、正しい判断ができなくなったりしてしまうんです。


ですので、親がよかれと思って行う体罰が、実は子供の脳に深刻な影響を与えることがわかっています。例えば、頬を叩いたり、正座をさせたりすることが、前頭前野の発達に悪影響を及ぼすのです。


そして次に、家庭内暴力(DV)を目撃することも、子供の脳に影響を与えます。激しい夫婦喧嘩を見聞きすることで、子供の脳の発達に影響を及ぼすことがわかっています。内閣府の調査によると、家庭4件に1件の割合でDVが繰り返されているということです。DVには、殴る蹴るだけでなく、言葉の暴力や支配的な行動も含まれます。

DV家庭に育った子供は、情緒面や行動面で深刻な影響を受けることがあります。例えば、自殺や自傷行為、拒食症や過食症、睡眠障害の問題などが挙げられます。また、認知や行動の発達が遅れることもあります。

このように、子供時代にDVを見聞きすることが脳に与える影響は、非常に大きいです。特に、視覚野が小さくなることがわかっています。視覚野は、ものを見るための重要な部分であり、ここが小さくなることで視覚的な情報処理がうまくいかなくなるのです。

また、身体的なDVと暴言によるDVを比較すると、暴言の方が子供の脳に深刻な影響を与えることがわかっています。具体的には、暴言を見聞きする方が6倍以上脳に悪影響を及ぼすという結果が出ています。この結果から、DVを身体的な暴力に限定する理解は、被害を見えなくすることにつながるのです。

視覚野は、頭の後ろの方、つまり後頭部にある部分です。ここは「見る力」を担当しているんです。

視覚野の役割は視覚野を「魔法のメガネ」と考えてみてください。このメガネは、私たちが周りの世界を見るのを助けてくれる特別な道具(場所)なんです。たとえば、美しい絵や風景を見て楽しむとき、視覚野が魔法のメガネのように働いて、その景色を脳に映し出してくれるんですよ。

たとえば、お友達と一緒に公園で遊んでいるときに、色とりどりの花や青い空、飛んでいる蝶々を見ることができるのは、この視覚野のおかげです。視覚野がなければ、私たちはこの素晴らしい世界を正しく見ることができません。


ですので、このメガネである視覚野は、とてもデリケートな部分なんです。強いストレスや暴力を目撃することによって、視覚野が疲れてしまったり、容積が萎縮して小さくなってしまうことがあります。想像して欲しいのですが、もし、あなたの大好きな魔法のメガネが、毎日怖い映像やひどい言葉を見聞きしていると、次第にそのメガネが曇ってしまったり、壊れてしまったりするんです。

もし、視覚野が影響を受けてしまうと、視覚情報の処理がうまくいかなくなります。たとえば、美しい花を見てもその色や形がはっきりとわからなくなったり、お友達の顔を見ても誰かわからなくなったりすることがあります。これは、まるで壊れた魔法のメガネをかけているような感じです。



さらに、扁桃体という脳の部分も影響を受けます。扁桃体は感情を司る部分であり、ここが過剰に反応することで、怒りや不安が増幅されることがあります。視覚野と扁桃体が密接に繋がっているため、視覚的な情報が感情処理に影響を与えることで、様々な心の問題が後に出てくる可能性があるのです。

この「扁桃体」という特別な部分について、この扁桃体は、私たちの感情を司る、とっても大切な場所なんです。

扁桃体の役割はと思いますよね?この扁桃体を「感情の魔法使い」と考えてみてください。この魔法使いは、私たちが感じるいろいろな感情をコントロールしています。たとえば、嬉しいことがあったときにニコニコ笑顔になるのも、この感情の魔法使いのおかげです。反対に、怖いことがあったときにドキドキしたり、怒りを感じたりするのも、この魔法使いの働きによるものなんです。


でも、この感情の魔法使い扁桃体の影響は、時々過剰に反応してしまうことがあります。特に、強いストレスや怖い出来事に遭遇すると、扁桃体が過剰に(過活動)働いてしまうんです。もし、感情の魔法使いが、いつもよりも大きな魔法の杖を振り回して、感情を増幅させてしまう様子を。

たとえば、学校で誰かにいじめられたり、大きな声で怒鳴られたりすると、扁桃体がびっくりして「危険だ!」と感じます。そして、その感情をもっと強く感じるように魔法をかけてしまうんです。これによって、怒りや不安がいつもよりも強く感じられることがあります。


さらに、扁桃体は視覚野と密接に繋がっているんです。視覚野は、私たちが見る力を司る部分です。たとえば、怖い映画を見たときに、その映像が視覚野を通じて扁桃体に伝わり、「これは怖いことだ」「危なそうだ」「痛そうだ」と感じるようになります。視覚野からの情報が扁桃体に伝わることで、感情の処理が行われるんです。

しかし、強いストレスや怖い映像を頻繁に見ていると、扁桃体が過剰に反応しやすくなり、いつもよりも強い感情を感じることになります。これによって、後々に心の問題 DV家庭に育った子どもの健康に関する影響、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、うつ病、不安障害、攻撃的行動、自殺企図・念慮、摂食障害・睡眠障害、認知・行動発達の遅れといった各健康問題のが出てくる可能性があるんです。


DVの影響がいかに深刻であるかを理解し、適切な支援が重要であることを伝えたいと思います。お子さんたちの健全な発育、成長を支えるためにも、DVの影響を軽減するための取り組みが必要です。


ここまで読んでいただきありがとうございました。今日は、虐待が脳に与える影響についてお話ししました。厳しい体罰が前頭前野を縮小させ、言葉の暴力が聴覚野を変形させ、親のDVを見聞きすることで視覚野が小さくなるというショッキングな事実がわかっています。この情報を知ることで、私たち一人ひとりがどのように支援を提供し、虐待や暴力の影響を軽減できるかを考えるきっかけになればと思います。


みなさんの周りに、感情の魔法使いである扁桃体が過剰に反応している人はいませんか?その人が感じている怒りや不安を、あなたはどうやって理解し、助けてあげることができるでしょうか?なぜ、攻撃的な態度をとっていると思うますか?また、あなた自身の心の健康はどうでしょうか?ストレスやイライラ、不安を感じたとき、どのようにいつも対処していますか?

これらを通じて、自分自身や周りの人々の心の健康についてをテーマにいたしました。

明日のブログでは、傷ついたPTSD、記憶をテーマに詳しくお話しします。どのようにしてその記憶が脳に影響を与えるのかについてです。