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第9話 砂浜に書いた2人の想い

晴れてカップルとなった夏子とショーン。カップルとなった2人は見てられないくらいラブラブだ。

どちらかというとショーンの方が熱を上げているっぽかった。夏子と一瞬でも離れたくない。夏子に色んなことしてあげたい。そんな気持ちが行動に表われている。実際に、ショーンは夏子といたいがために仕事を休んだりしている。少し日本人には考えられない行動だ。

これも人によるかも知れないが、ミャンマーの男性はすごく一途で尽くすタイプが多い。見返りを求めず、プレゼントしたい、あれしてあげたい、これしてあげたいと相手を喜ばすために自分の時間を全部犠牲にできるくらいだ。

夏子がショーンに惹かれた理由のひとつは、これっぽかった。ここまで尽くす男性は、日本にはなかなかいないだろう。

夏子もカップルとなった今、開き直ったようにショーンとベタベタしている。カップルになった日以来、夏子はショーンの家から帰ってきていない。気持ちはわかる。私も同じ立場だったらそうなっているだろう。一緒にいられる時間はあと少しだ。一分一秒でも惜しい。


しかし、だ…

私は一人寝が続いていた。予想外に夏子とショーンの方が先にカップルとなったというのに、私とぺぺの関係はなかなか前に進まないのだ。

あんだけアピールされていたが、もしかしてペペは私のこと好きでもなんでもないのでは…という一抹の不安さえ覚えている。


そんな思いを胸に秘めながら、その日もショーンの家で4人で話をしていた。

4人で話もそこそこに、前回と同じように早々に私とペペは帰ることにした。前回と違うところは、夏子たちが2人きりになりたそうなオーラを放っていたところだ。空気を読んで帰ったということである。


私たちはまたしてもビーチに向かうことにした。なぜかいつもそこに向かってしまうのだ。


「よう!ご飯食べたか?」

「どこ行くんだ?」

「これ持ってくか?」

「ワンワン!」

たくさん人に話かけられてなかなかビーチにたどり着かない。私が話かけられているわけではない。全部ペペにだ。ペペは道を歩くたびに誰かに呼び止められる。きっと普段からよく交流しているのだろう。ペペの人柄が良いことがわかる。

ちなみに、最後のワンワンは、1、1という意味ではない。なぜかペペは犬にも好かれるタチで、道を歩けば犬が寄ってくるのである。マレーシアには半野良みたいな犬が至るところにいる。私は狂犬病などを心配してしまうが、ペペはおかまいなしのようだ。

そんなこんなでやっとビーチにたどり着いた。

ビーチに行くと言っても、泳ぐわけでもなく散歩するだけだ。ペペの実家も海のそばにあるという。故郷が恋しいのかもしれない。この6年後にぺぺの実家に行くことになるのだが、海のそばは海のそばだったが、想像を絶する陸の孤島だった…というのはまたの話。

ペペがおもむろに砂浜に何かを書き出した。相変わらず自由な人である。

書き終わった文字を見ると、

「I ____ YOU」

と書いてある。

もしかしてこれって…

「さ、ここに今の気持ちを書いて!!」

やっぱりか!


いきなり自分の気持ちを書けと言われて、どうしていいかわからずモジモジしていると、

「じゃあ、僕も一緒に書くからせーので見せ合おう!」

と、背中合わせになるように同じ文字を書いた。


私は迷った。これはどう書けばいいのか。ペペは、私がLOVEと書くのを期待しているのだろうか。それならLIKEと書いてしまったら、ペペは傷ついてしまうだろう。かといって、気持ちがLOVEであると言い切るほどまだペペのことを好きであるといえない。


迷った末、私はLIKEと書いた。ペペ、もしLOVEって書いてたらごめん!

そして

「せーの!」

と、お互いのものを見せ合ったら…?!


…………


お互いLIKEだった(爆笑)


「もう!ちょっと!」

「テヘへッ」

また同じような学生ノリを繰り返し、浜辺を歩く。

私がこの国に住んでいたならこんなやりとりも楽しめるだろうが、私は旅行者の身だ。帰国までの時間はこの時点であと5日くらいしかなかった。そろそろ関係をはっきりさせたい。


そして気づいたら、またしても私が泊まっているホテルの前についていた。


私は、ペペがこのあとどのような行動をとるかを観察することにした。まさかまたじゃ!っと帰るつもりかな…そうなったらこの関係はこれまでだ。私たちはただの友達だったということになる。


「……部屋、行こうか」


ペペがそう言った。


どうやら、この関係はまだ終わりではないようだ。




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