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第10話 初キスは涙の味

さて、初めてペペがホテルの部屋へ来ると言いだした。

私は迷った。時は昼間である。こんな昼間から男を部屋に連れ込むなど、さすがに抵抗がある。ホテルのスタッフには、ただでさえ以前服ビショビショのまま帰ってきて、冷ややかな目線を送られている。

少し迷って、こっそり連れ込むことにした(笑)まずペペにはビーチ側の入り口で待っていてもらって、私だけでフロントからルームキーを取ってくる。無事に取ってこれたら入り口に向かって合図するから、ペペにも入ってきてもらってエレベーターホールで待ち合わせる。そして部屋へ向かうのだ。

そのことをペペに伝えて、了承してもらったのでフロントに向かうことにした。

後ろめたい気持ちがあるのでコソコソフロントに向かっていると、どう考えてもペペがついてきいる。

「なんでやねん!(原文ママ)」

と怒ると、ペペは平気そうに

「向こうに友達がいるからちょっと話したくて…」

となぜ怒っているの?という不思議顔である。じゃあさっきのやりとりって一体…

ペペは私達が泊まっているホテルで働いているミャンマー人に話をしに行った。会話の様子から、絶対に私の部屋に行くことを言っている。そんなこと言ったら追い返されるんじゃないか…

そんなことを思いながらハラハラしながらその様子を見守っていると、ペペの友達がわらわら寄ってきた。そして、追い返すどころか冷やかしたりしているのである。え、アリなの?この人客じゃないけど…

さらにその友達の一人が、わざわざフロントの女性スタッフにそのことを伝えに行っている。もうここにいるスタッフの全員が私が男連れ込むことを知ってしまった。

女性スタッフは私に意味ありげな笑顔で、うなずきながらルームキーを渡してきた。まるで「頑張るのよ」と応援されている気分である。

エレベーターまで、スタッフたちの視線は私達に集中していた。そしてエレベーターの扉が閉まる瞬間、みんな笑顔で手を振って送り出してくれたのだ。拍手されそうな勢いであった。よくわからないがマレーシアのこのノリに助けられた(笑)これで後ろめたさは吹っ飛んだ。


そして私たちは部屋の中に…


部屋の中に入ると、しばらくはペペががさ入れをしたり、お得意の写真撮影をしていた。しかしそれもすぐに終わり、流れはいいムードになってきた。


もちろん、部屋に連れ込むくらいであるから、それなりに覚悟はしている。

そして、私たちは初めてキスをした。


キスをした…キスをした…キスをした?

なんでだろう…キスなのに唇が痺れてきたような気がする。というか痛い。なぜキスなのに痛いのだ、初セックスでもあるまいし…

そんなことを思ってはいけない…というかキス長すぎだろ…

痛い…痛い、痛い!痛いってばーーーーー!

「もう、やめてぇ!!!」

と涙目で、刑事ドラマでどんどん自分の犯行を暴かれて耐えられなくなった犯人のような言葉を放ち、私はペペを押しのけた。

ペペは「?!」と意味もわからずこっちを見ている。

ペペのキスはすさまじかった。下唇をすごい力で吸われたのだ。

なんやこれ!ミャンマー人のキスはこれなんかいな!(興奮のあまり地の関西弁が出てしまった)

ものすごい異文化を体験した気分だ。所変わればキスも変わるというのを体験した。

ちなみに一応断っておくが、ミャンマー人が全員こんなキスをするかどうかは定かではない。私も今までキスしたミャンマー人はペペだけなので検証もしようがない。しかし、夏子の唇に紫のアザみたいなものが出来ており、聞いてみるとショーンに「めっちゃ吸われる」と言っていたので、少なくともペペだけがそういうキスをするわけではないということがわかった。

つづく

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