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ミナトシリーズ

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地上種、惑星種、天使たち。ミナトが住んでいる不思議な世界の日々を短編、掌編、詩で。(主人公ミナトは名前と自称「ぼく」以外、性別も年齢も不明です。読み手が考える人数分のミナトが存在…
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記事一覧

キンギョとり

 夏の強い日射しの下。通りを歩いていると、突然脇道から子供たちが飛び出した。わいわいにぎやかに、それぞれ虫取り網とビニール袋を持って、ミナトを追い抜いていく。
「まってえ」
 ちょっと遅れて、腰のあたりにひとりぶつかった。ビニール袋を握りしめた小さな男の子だ。ミナトを邪魔そうに押しのけるが、ふたり同方向によけるため、なかなか進めない。
 ミナトは右に左によけながら尋ねた。
「どこに行くの?」
「キ

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しろい森

木も草も鳥も虫も白く、夜も来ない
‘しろい森’のまんなかで
ミナトは同行者と上を見上げた
そろそろだね
はじまったかな
隣に立つ賢者シャスはうなずいた

しろい森は祝福の森
葉ずれの音が
さまざまな色の 音の雨になる
かるく おもく ふかく ひびく

鈴のような
笛のような
鼓のような
鳥のような
虫のような
声のような

さまざまな音が重なる
その和音 和音 和音

音が重なると
音の色がうまれ

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旅立ち

 雲の断崖から下を見おろすと、数時間前まで歩いていた緑のジオラマが広がっていた。
 七夕(しちゆう)は何度目かの確認を、旅の相棒にする。
「いいんだな、織姫?」
 相棒は返事のかわりに虹色のヒレを大きくそよがせた。
 空を泳ぐ魚、リューグーノツカイ。虹色にかがやく全長十メートルの長い身体と長いヒレを持ち、空を泳ぐ姿はオーロラのようだ。滅多に姿を見せない稀少な魚で、今は縁あって七夕のかたわらにいる。

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サクラ前線、走る。

 そのサクラに出会ったのはコントル河の中州だった。コントル河は広くて浅い河だ。水も澄み流れもおだやかで、夏となれば水遊びの地上種でいっぱいになる。
 しかし今年のコントル河は、まだ肌寒い時期だというのに地上種でいっぱいだった。それも水遊びではない。全員「サクラ前線」である。中州を陣取る大木を囲むように、誰もがめいめいのスタイルで一本の大木を見つめているのが証だ。
 サクラは樹齢二十年も超えると自走

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サクラのうた

 さくらの写真展を見に行った。大小あるパネルの薄紅色はどれも見事で、ミナトはすっかり目を奪われた。
 とくに目を引いたのは、一番おおきなパネルだった。日が射す谷間で咲き誇る大木が悠然と立っている写真。暗がりのなかで薄紅色はとても映え、谷いっぱいに広がった花に圧巻された。小振りのさくらの樹は見ても、大木はなかなか見ることはできない。
 しばらく見入ったあと、感嘆混じりにつぶやく。
「なんていうさくら

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語る道

10月の新月の夜にだけ 
終わらない道がある 
 
どこまでも続く土は 
踏みならされた独特の固さをもち 
草原をさわさわと渡る風と 
ひんやりした星の明かりにつつまれている 
 
その夜はいつしか‘語りみちの夜’と呼ばれ 
夜を徹して語りたい者が自然と集まり 
満足いくまで道すがら話す場所になる 
 
友と語り合う者 
うしなった想いをこぼす者 
過去を熱弁する者 
 
その中で 
肩を並べた語

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灼熱夏ーー逃げ水

 その日は特に暑かった。草原の中をどこまでものびるコンクリは焼けつき、容赦なく熱を照り返してくる。立ちのぼる陽炎で景色はゆがみ、逃げ水が現れては地面に染みていった。絶妙なタイミングで逃げる水が、まるで喉の乾きを見透かしているように思えて、舌打ちする。手を伸ばしても絶対にさわらせようとしない。 
 踏みだした足が水音を立てた。 
 見ると、肩幅くらいの逃げ水がいた。足底から逃げようともがいている。暑

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星の舞う夜に/ミナトシリーズ

7月7日、星舞いの夜。ミナトはここ、明かり採り《あかりとり》名所【銀の谷】に来た。
 目的は明かり採りでも観光でもない。明かり採りの名人で幼なじみの七夕(しちゆう)が、すごいものを見せてやるから来いと言うので、来た。理由を聞いても内緒の一点張りで、行かないといえばしょげる。けっきょく、ミナトは七夕に負けて誘い出されたようなものだった。
「まあいいけどね」
 釣り竿を持って明かり採りに来た人たちの間

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願事宅配便/ミナトシリーズ

 ‘想い宅配便 ~その願い・叶えます~ ’ 
 
 玄関に大きく貼り出されたポスターには、天使の翼をモチーフにした文字でそう書かれていた。並んで受付締切日、営業時間、そして。 
 
‘場所:水晶森の南風のとなり エンジェル館’ 
 
 ポスターに目をやるたび、ミナトは苦笑する。ミナトはそこでバイトしていた。 
「この名前は詐欺だよなあ」 
 『想い宅配便』は天使が行っている事業だから、単純に‘エン

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観察風景/ミナトシリーズ

 骨董屋で買ったカセットの中身は野外で録音された記録ものらしく、強い風の音の向こうから、二人の会話がかろうじて聞き取れた。

 影だよ。見えるだろ、ほら。
 わかんないよ。
 よく見てりゃわかるよ。あ、また跳んだ。すげ。
 どこどこ。
 あそこだってば。一番もくもくしてるトコ。
 雲ぜんぶもくもくしてるぞ。
 ああほらほら! あそこ!
 いた! あ、くそ。もう雲ん中隠れちまった。お前よく、あんなち

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