〇〇住宅のT・I氏~第二話
数日後、僕の携帯が鳴った。
相手は先日のT・I氏だった。
大家さんへ各条件を提案したところ、すぐに次が決まるならと了承してもらえたようだ。
そして離れにある駐車場の件だが、別の建物が建つ予定となっており、現在は使えないようだった。
そこで大家さんの母屋横にある芝生のスペースに停めていいことになったらしい。
そっちのほうが近くて好都合ですよ。ありがとうございます。
確か以前に物件前まで見物に行ったときに、その芝生に物干し竿があったと思うんです。
キャンピングカーが大きいので、物干し竿を外していただけるか大家さんへ聞いておいてもらえますか?
僕は電話越しに彼に伝えた。
わかりました。大家さんへ確認しておきます。
そう答えた彼に挨拶をし電話を切った。
その日の夜、僕は妻と晩酌をしていた。
ペットもOKだったのね。それならこの物件に決めちゃおうよ。私のサロン営業もさせてもらえるし。
そうだな。そうすれば今のお店まで出勤せずに自宅で仕事ができるからな。
私、明日仕事の合間に〇〇住宅へ行く時間あるから、契約してくるわ。
それなら念のために聞いておくんだよ。もし言われていた条件と大きく違うようなときはキャンセルできるのかってね。
モチのロンよ。
モチのロン…
妻はよくこの表現を使う。得意気に…。
翌日妻から連絡があり、無事に契約したと報告を受けた。
12月上旬までに敷金や仲介手数料を振り込むことになっているらしい。
前に住んでいる人が12月15日に退去するので、僕らは12月19日に内見する予定を決めた。
妻のお店としても使う予定だったため、内装にも手をかける必要がある。
そこで内見には知り合いの工務店の方と大家さんにも同席してもらう段取りを組むことにした。
それから数日後、僕はT・I氏へ一本の電話をかけた。
先日伝えておいた物干し竿の件。まだ彼から連絡がなかったことを思い出したのだ。
まだ大家さんが繋がらなくて、確認できてないんです
そうでしたか、では確認できたらまた連絡くださいね。
そう伝えて電話を切った。
電話を切った後に僕は思った。お客さんから頼まれている案件。もし大家さんと連絡が取れないとしても、数日の時間が空いてしまった場合、お客さんへ状況を伝えることが当たり前ではないか。
しかしすぐに僕は思いとどまった。
接客態度を判定してしまう僕の悪いクセだ。それに彼はまだ若い。こんな細かいことを考える自分はもう41歳になったのか…。
改めて自分の年齢を認識したその日は、12月10日だった…。
つづく…
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