身近に潜む虫の“目”
蛾、に代表される夜行性の虫にはある特徴がある。
なんと、目がトゲトゲしているのだ。
これは単に複眼、という話ではない。
夜行性の虫というのは、太陽の100万分の1しかない月の光を頼りに活動する。
そのため、効率よく光を吸収できるような構造が施されているのだ。
これをmoth-eye(モスアイ)構造という。
ナノサイズの紡錘形の突起が、ナノサイズの等間隔で規則正しく並べられている。
突起と突起の幅が光の波長よりも小さいので、光が反射せずにそのまますり抜けるという仕組みだ。
まぁ、私もよくわかってはいないが、とにかく反射しない!のである。
これによって、夜闇にうまく紛れられたり、微量な光を効率的に目の奥に取り入れたりすることができる。
この構造は、可視光の全ての領域で効果を発揮するため、現代のテクノロジーにも多分に応用されている。
例えば、テレビやパソコンの画面やフィルムには、モスアイ構造を用いた反射防止が役立っている。
反射による写り込みが少ないと、やはり疲れにくく快適だ。
私が子供の頃見ていたアナログテレビは酷かった。
ハリーポッターやGANTZなど夜に戦う系の映画は、せっかくのアクションシーンに自分の顔しか見えない、という有様であった。
子供ながらに愕然とした記憶がある。
そんなショッキングな出来事も、現代のモスアイ構造が施された製品なら起こり得ないという訳だ、いい時代である。
他にも加工する材料(樹脂)との組み合わせ次第で撥水性、親水性、抗菌作用、曇り防止などの効果を発揮する。
そのため、美術品や服を飾るショーケース、医療器具、ソーラーパネル、航空・宇宙開発など、様々な場面で役立っている。
自然界の生きる知恵が、人類を大きく支えているのである。