SDGsタイトル

幸せな人類の「大きな物語」と「小さな物語」

本記事は3/24に開催された日本グローバルコンパクト・アカデミックネットワーク(J-GCAN)主催の『SDGs:幸せな人類の「大きな物語」と「小さな物語』というシンポジウムから特に印象を得た知見を抜粋してまとめ、結びに個人の所感を加えたものです。

「経済」「健康」「安全」など各分野のスペシャリストからの知見を元にSDGsが本質的に取り組まれ、ゴール達成をするべく必要なアプローチを考察します。

前提として「SDGs(エスディーズ)」について、簡単にご紹介。

「SDGs」とは「Sustainable Development Goals(直訳で持続可能な開発のための目標)」の略で2015年に国連本部で日本を含む193の加盟国の合意に􏰀􏰁より採択さ􏰂た「世界を変革す􏰃ための17のアジェンダ」です。

2030年までに世界中の貧困、不平等、不正義をなくし、地球と持続可能な関係性をつく􏰃ことを目的にしています。

SDGsは169の課題を17のカテゴリーに分け
「誰も取􏰁り残さ􏰂ない世界」を実現す􏰃壮大なチャレンジです。


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はじめに

世界中の神話を研究すると、ある共通項があった。それは

「ヒト族はしあわせを求めてストーリーを生きる」ということ。

2000~2015年に実施された「MDGs」では開発途上国のみが対象とされていたが「SDGs」では全人類が対象となった。

SDGsは人類初めての大きな物語。

この「大きな物語」と個人が幸せのためにうごく「小さな物語」。
企業はその小さな物語と大きな物語を紡ぐアレンジメントを役割とする。

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グローバル経済とSDGs

by 浜矩子氏(同志社大学大学院ビジネス研究科 教授)

経済活動とはそもそも何か。

それは、ヒトを幸せにするもの。

ほんの僅かでも人間を不幸にする活動は経済活動と認知しない。

いわゆるブラック企業というのは根源的な定義矛盾。

もしブラック企業を糾弾したいのであれば「あいつらブラックだ」と言うべき。企業はつけない。


反グローバルの落とし穴

フランス大統領選に出馬中のルペン氏は演説中にこう言いました。

「もはや左対右ではなく、愛国者対グローバル主義者の構図だ」

グローバル主義は愛国心がないという排外的な思想が広がりかねない危険なスローガン。1930年代の暗黒時代に引き戻されてしまう。


本当のグローバルとは何か

グローバル化というのは1990年代から始まる単なる現象に過ぎない。

生かすも殺すも我々次第なので性善的に良いとか悪いはない。

グローバル時代には2つの特徴がある。
1つは「誰も一人では生きていけない時代」であるということ。生活に関わるあらゆるものは他国のものを使っている。

これは未だかつて無い時代であり、今ほど助け合いが自然に行われる時代はないとも言える。

2つめは「パックスだれでもない時代」。

過去のパックスロマーナ、パックスアメリカーナもなく「我こそは覇者である」ということがだれにも言えない時代である。


持続可能なグローバル時代が必要としているものは何か

それは「僕富論」から「君富論」への転換。
「ぼくさえよければ」から「きみさえよければ」へのマインドシフトが必要。

自分が最もやっつけたい相手のために努力する心意気があれば、反グローバルの狼煙を上げる必要はない。


SDGsとWell being

by 石川善樹氏(株式会社campus for H) 

世界の健康づくりの潮流は「治療→予防→ウェルビーイング」となっている。

「Well Being」とは直訳で満足の本質ですが
まだ日本語訳ができていない言葉だ。

人類にとっての幸福とは何か。

人類に三大苦があるとすると「病気、戦争、貧困」になる。これがなくなれば人類は幸せになるのでは。

調べてみると、戦後1958年から経済や寿命は右肩上がりに伸びている。
しかし人生の満足度調査ではほぼ変わらず横ばいのままだ。

人生50年時代(戦後直後)の生活は
「働く」ばかりで1日12時間休みなく野良仕事が日常だった。

人生70年時代(昭和)の生活は
「学び」「働く」「休む」と世代によってステージが異なってきた。
またそれにより世代間交流も少なくなくなってきた。

今後、人間の寿命は100�歳まで生きるようになる。
そこでどうなるかは分からないが

今起きている本質的な変化は以下のようなものである。

1.人生100年時代
・修行期間を伸ばし、50代から自分のやりたい研究や事業をやるといったことが増えるだろう。

2.AI化
・「考える」とは何かを考える、メタ認知が必要になるだろう。

3.都市化
・多様なヒトと共存していく能力が必要になる。

ウェルビーイングを理解する上で
3つの観点からの理解を試みる。

1.ロジック

wellbeingや幸せの論理は複雑すぎてロジックで理解しようとするとモグラ叩き的に新たな課題を生み出すだけかもしれない。

2.大局観

ビックピクチャー⇄間⇄ディティール
といった構図で中間に間を空けビジョンとディティールのみを観る。

3.直観

予防医学の不思議の1つに「バブル崩壊以降も寿命は何故伸び続けたのか」ということがある。通常寿命は経済推移に比例する。

その仮説として日本の場合「金さん銀さんの存在」があったからなのではという。これだけの長寿をこれだけ多くの人数が見た歴史はこれまでなく、それが寿命の増加の原因の1つなのではという仮説。

SDGsのような不可分で複雑な課題もロジックで分解、再構築を試みて停滞するのではなく大局観から観ていくべき。


安全保障とSDGs

by 石川薫(元カナダ大使、元外務省経済局長)

「平凡な生活はつまらない」と多くのヒトが言う。
しかし平凡な毎日こそ人間の安全保障だ。

時間が淡々と流れるということは
法律を守っている限り牢屋にもいかないし財産も没収されない殺されないということ。

それはつまり、予見可能性がある生活。

一方でそれらが保障されていない、一寸先は闇という恐怖の時間が日常の生活があることを知る必要がある。

予見可能性とは
・平和

・治安

・良い統治(政治的、経済的、社会的な「参加」+紛争の予防)

が行われている状態。
これらが保障されて、希望が生まれる。

希望が生まれるので→未来(教育)や体(保険)への投資が生まれる。

人間の安全保障を考える上で

忘れられている側の正義に寄り添うことが大事。

教えられる歴史というのはすべて勝った側の正義で記されている。

差別する側は差別される側の屈辱は決して分からない。

SDGsを広めていくには実は誰もが1人で生きてはいけないことをSDGsを陳腐化して気づくことが必要。


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感じたことと、私のアプローチ

誰もが1人では生きていけない事実に気づくこと。

これを感覚的に広めるアプローチが必要なのだと感じました。

SDGsは「人類の変革」を促していますが、テクノロジーの恐るべき進化、環境問題の深刻な加速、激変する国家情勢が巻き起こる今、私たちは時代の過渡期にいるといって差し支えないでしょう。

過渡期は次の時代に思いを巡らせ、想像力が豊かになる時期です。
日本でSDGsを広め
課題に対してアクチュアルに活動する担い手を増やすために
2つの想像力が必要だと考えます。

1つは、目には見えずとも蜘蛛の巣のように関連しあっている世界を認識するマクロな想像力。全世界の人々を地球市民として捉える思想を「コスモポリタニズム」と言いますが、私たちが地球シェアハウスに住む住人同士だったら誰が自分の家を壊すミサイルを発射するでしょうか。

もう1つは、個人の幸せが何に由来して生まれるか考えるミクロな想像力。
私たちの脳の報酬系は金銭的な報酬よりも、自己への評価が高まったときに活発になります。そして自己評価とは一人称的な欲求充足で完結するものではありません。

それを20代や30代の現役世代に伝えていく必要があります。
しかしSDGsをなんでもない普通で一般のぼくらのバズワードにするには
あまりに言葉や概念が難しすぎます。

そこで仕掛けているのは「ソーシャルフェス」というプロジェクト。これはSDGs1つ1つが達成されたあとの世界を想像して「フェス」として表現するものです。フェスを「理想を一足お先に体験してしまうもの」と再定義して、エンターテイメントの広い入り口を通して、SDGsの壁の向こうを先に体験してしまうことで、エンパワーメントしていきます。

知識や具体的な課題はエンパワーメントの後でいいというアプローチです。まずは楽しい体験を入り口に、体験のエデュテイメント(エデュケーション+エンターテイメント)デザインによりインスピレーションを持った共同体を増やし、繋ぎ、SDGsへのソリューションが生まれる可能性を多発させます。

ソーシャルフェスについて詳しくはこちらから


さいごに

グローバリズムに反旗を翻す国際情勢に反して
SDGsという「大きな物語」は科学、医療、環境、教育、産業あらゆるセクターの思いを持ったヒトの「小さな物語」を結びつけています。

それはグローバリズムというよりももう少し高次の思想で、未来のニーズに対して応えているように思います。未来の資産に資すること自体が価値であるという、GDPや幸福度指数では計れない新たな尺度が一部で出現しています。

アメリカの先住民族であるネイティブアメリカンは7世代あとのことを考えて持続可能な生活をしていた、と言われていますがそこまでいかずとも1、2世代あとのことを想像するだけで、十分に変革は可能なように思います。

0から1を生み出すことは難しいことですが、SDGsの課題はそういうことではありません。自分に必要な分以上持ってしまっているヒトや国が、足りていないヒトや国に、分け与えるだけで多くは解決していきます。

そして、自分が本当に必要な分だけのエネルギーを使うよう行動するだけで、環境の課題も進行を遅らせることができます。

自分の「小さな物語」を本当の意味で幸せにすることが「大きな物語」のハッピーエンドへ繋がっていきます。


雨宮優 @amemi_c5

https://www.facebook.com/silent.it2







「こんな未来あったらどう?」という問いをフェスティバルを使ってつくってます。サポートいただけるとまた1つ未知の体験を、未踏の体感を、つくれる時間が生まれます。あとシンプルに嬉しいです。