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カーネギー「人を動かす」を読んで

知らない人はいないというほど有名な、カーネギーの「人を動かす」ですが、ずっと機会を逃しておりました。今ようやく読むことができたので、感想文を書きたいと思います。

まず本のタイトルである、「人を動かす」という言葉を見て、何かの組織に属していることが前提で、ビジネスにおいてのみ使える話なのかと思いきや、この本には、生活の中でとても重要となるエッセンスが詰まっていました。

とはいえ、この本には大量のアドバイスが含まれており、これが重要!と一つにまとめられているものではありません。

「カーネギー 人を動かす 感想」と検索すれば、その大量のアドバイスをうまく絞り込んでまとめているサイトが見つかるかもしれませんが、私は、まとめるというよりは、私が今まであまりできていなかったことで、かつすぐにでも始めたいこと、を中心に抜粋しました。

まず前提として、人間は、食欲・性欲・睡眠欲などの基本的な欲求のほかに、承認欲求があるとしています。人は誰かに認めてもらいたいという欲求があるものです。カーネギーは人を動かす際に、相手の承認欲求を満たすことに考慮しています。

この前提の厄介なところは、相手が自分に認められたいを思っていると同時に自分も相手に認められたいと思っている、ということです。ここが人を動かす際の一番のネックになっているのではないかと、本を読んで感じました。

つまり、人を動かそうとしている時点で、極論をいうと、「自分の方が正しいと相手に認めてもらいたい」という感情の裏返しなのかもしれません。

この本には、人を動かすためのアドバイスが載っていますが、もし、このアドバイスを試してみたとして、相手が動いてくれなかった場合、自分自身の感情はどうなるのでしょうか。その可能性は十分ありますよね。私は、無理にでも動かしたい!何としても支配したい!という感情になってしまわないように、もし人が動かなかったときの考え方も自分の中の引き出しとして持っておく必要があると思いました。もし人が動かなかったときの話は後半でします。

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次に、私が実践してみたいと思った具体的なアドバイスを4つご紹介します。

①他人の気持ちを理解する

他人を批判することは簡単ですが、なぜその人がそういうことをしたのかを考えることの方が有益だとカーネギーは言っています。ここで著書にはありませんが、私の個人的見解として、「理解はしても納得はしなくていい」ということを追加します。

相手がどうしてそういうことをしたのかを理解することで相手の感情を理解することができますが、相手の気持ちに必ずしも賛成、とはいかないですよね。そこを無理に賛成しなくても、「なるほど、そういうつもりだったのね。理解しました。」と心の中で思うだけで、相手へのものの言い方が変わると思います。

②相手の自尊心を満たす

これも簡単なようであまりできることではありません。相手が大事に思われている、尊重されていると感じれば、相手も自分に対して尊重してくれます。相手を論破して負かすことよりも、相手を認めることで相手に認められるということです。

そのためには、相手の名前を覚えるということも重要な行動のひとつだとカーネギーは言っています。これはアラン&バーバラピーズ著書「他人とうまくやっていく」にも書いてありましたが、人間にとって大事な言葉は自分の名前だとしています。自分の名前を呼ばれたとき、確かにうれしいです。この気持ちを相手に与えることで、相手の承認欲求を満たすことができるのだそうです。

③不愉快なことを伝える前に賞賛する

実は私の母が言っていたことと合致しています。私が前職で主任になったばかりころ、後輩の指導に苦戦を強いられていました。母にその話をしたところ、母からこんなアドバイスをもらいました。「1に褒めて2に指摘する。これが大原則。」まず、後輩が毎日よく頑張っていることを褒めてから、そのあとに、ここをもう少しこうするともっと良くなるよ、といった風に指摘することですんなり指摘が耳に入ってくるということを教わりました。相手のプライドを傷つけずに伝えるということが重要なのですね。

④北風と太陽

イソップ寓話にある北風と太陽という話を用いて、カーネギーは相手を脅しつけて力づくで何かをさせるより優しく親切に接したほうがはるかに効果的だとしています。カーネギーの他のいくつかのアドバイスとまとめると、優しく親切に接したうえで、相手がそれをやりたいと思えるようにすることが大切なのだそうです。先ほどの前提にかえると、相手がそれをやることで、承認欲求を満たすようにすると、相手はそれをやりたがるのです。

カーネギーはまた、こんなことも言っています。相手に頼みごとをすると、相手の虚栄心をくすぐることができ、相手は次からも助けてあげようと思ってくれるのだそうです。

現在コロナの影響により、国によっては条例で外出を禁止したり、マスクを義務付けたりしていますが、強制や義務などで押し付けるよりも、国民にとってメリットになることと感じさせる方が国民はより動いてくれるということですね。

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4つに絞り込みましたが、全てにおいて大事なことは、相手を尊重することだと思います。相手の価値を認めることで、相手が認められた、と感じ、相手もこちらを尊重しようとしてくれるそうです。

しかしながら、必ずしもうまくいくとは限らないのが世の中ですよね。毎回相手を尊重するだけで自分の思い通りに動いてくれるなら苦労はしません。

そこで、より大事なことは、相手が必ず動いてくれると期待しすぎないことではないかと思いました。この本には、「相手に期待する」ということもアドバイスにあり、あれ?矛盾しているのでは?と思うかもしれません。これは矛盾ではないと思います。期待するものが違うからです。

カーネギーのいう期待は、相手の明るい将来に期待することであって、自分の言うことをきいてくれるという期待ではないと思います。ここを勘違いすると、自分の思い通りにしたいという思いに執着してしまうことでしょう。

人を動かすことでどうしたいのかということをまず考えなければいけません。この目的が、自分の自尊心を満たしたいとか、相手を支配したい、ということであると、うまくいかないと思います。人を動かすことの真の目的は、その組織や相手との関係性がよりよくなり、チームとして最高のパフォーマンスを実現することではないでしょうか。

もし、相手が自分の要求を受け入れてくれなかったとしても、相手を動かすことができなかったとしても、それは、相手が選択したことであり、相手には何らかの思いや事情があったのだと、相手を理解することが大切だと思います。

相手が動いてくれなかった場合も含めて自分の中の引き出しに準備しておくことができると、この本がより一層有益なものになると感じています。

参考文献:D.カーネギー「人を動かす」アラン&バーバラピーズ著書「他人とうまくやっていく」


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