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「I’m a Japanese Murderer」 第2話



…空気すら針になり自分の細胞を殺していくのではないかと思う位

この部屋は、綺麗だった…

綺麗すぎて吐いた二酸化炭素がまるで毒のように色合いを出している気すらしてきた

白い壁に、白い机、椅子、キッチン…同一の色で整えられたこの部屋は

…まるで人の住んでいない空間。

しかし、ラップトップはあるし、本棚には白のカバーの付いた本がびっしり整列しているし、寸分狂いなくものが置かれていた。


…この部屋に青ざめた顔の鑑識が戻ってきた。

「おいっ…大丈夫か?珍しいというか初めてだなぁ…」


「そりゃ吐きたくなる気持ちもわからなくもないが…」

「…ないんですよ…」

「え?なんだって?何が?」

「…あるべきものがないんです…普通に生活していれば、何処かしこにDNAがあり、髪の毛や垢、何かしら……ないんですよ…この部屋。何一つないんです…髪の毛一本も落ちてないし、ゴミひとつない、排水溝の中もですよ!!…人が生活していたらどんなに潔癖でも、あるはずのものがないんです…」


「…指紋すら」

「…指紋すらないんです。いっこもないんです…」

「…何言ってんだ?生活してただろうアイツは?ここで?」

「えぇ、服もラップトップもあるし、生活用品も全てあります…でも、指紋全て拭き取られているんです…」

「ないんです、ある筈のものが一切ないんです…」

「トイレにも排水溝にも、キッチンのゴミ箱にも…本全て見ましたが、ないんです…今まで、どんな凄惨な現場でも平気でしたが、この部屋は異質です…これ程感じた事のない恐怖はないですよ…生きてる人間の証拠がないなんて、気持ち悪くて仕方ない。」

「指紋消したんですかね?それ以外考えられない…」

↓第3話


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