【ふるさと応援隊2022】対談企画|あなたにとって「ふ・る・さ・と」ってなんですか?
こんにちは!
インパクトラボの豊田です。
この記事では、「しがのふるさと応援隊2022」の特別編として、プログラム参加者とゲストのトークをお届けします。
今回は、田ヶ原恵美さんをゲストにお迎えし、しがのふるさと応援隊2022参加者である浜路真悠さんと押部孝祐さん、そしてファシリテーターの田口真太郎さんの4名で、「ふるさとを発信すること」をテーマにお話ししていただきました。
対談開始
ふるさと応援隊に必要な、自分で情報を収集するチカラ
田口真太郎(以下、田口) 情報発信っていうのが今回の大きなテーマだと思うのですが、2日間東近江で一緒に過ごして率直にどうだったか、この2日間どのようにプログラムをみていたのかを、DAY3-4に参加してくださった田ヶ原さんの感想を教えていただけますか。
田ヶ原恵美(以下、田ヶ原) ありがとうございます。地方創生の仕事とかを見させてもらったり個人でやってたりすると、どうしても都会の子の方がやる気があって地方の子の方はどちらかというと遅れている、みたいなイメージに見られがちだと感じています。しかし、そのようなことはないのだなと、あらためて今回感じられました。誰もがSNSを積極的に使う時代になり、情報を自らとりにいける人といけない人の差が開いてきています。しかし、それは都会の方がより使う人が多く、情報に触れるのが速いだけなのかなという気づきがありました。ふるさと応援隊に参加している学生を見ていて、地方にいてもこういう人たちがまちを変えていってくれるのだろうなという期待感が非常に湧きました。
田口 田ヶ原さんが考える「自分で情報を収集するチカラ」とは、どのようなイメージかもう少し詳しく教えていただけますか?
田ヶ原 広報をする立場から言うと、たとえば「メルカリといえばフリマアプリ」みたいな説明コストを下げることが広報の価値だと思っています。なので、発信をして知ってもらうことを、どうやったら同じキーワードで調べてもらえるかについて普段から考えています。キーワードを検索しヒットさせる「ググり力」みたいなのが、今回一緒に参加していた大学生の皆さんが高いと感じていました。
田口 なるほど。情報収集も世代によってカラーが違っていて、いまの若い世代で象徴的なのは Twitter とかインスタなどのSNSで、僕ら30代や40代はGoogle検索で、そのさらに上の世代になると新聞・雑誌での情報収集が基本だったと思います。SNSでの短いキーワードからどうやって情報取得するかが求められるようになってきているので、ますます高い情報リテラシーが求められるようになっていますね。しかし、SNS上で情報コストをできるだけ下げて発信した結果、それを見て感情的になって炎上することが起きることもあります。だからこそ、短い情報の裏にあるストーリーを読むチカラと同様に、一見するとよく分からないことに対して踏み込んで話を丁寧に聞たりすることから、自分で情報を収集するチカラが必要だと思います。今回のふるさと応援隊に参加する学生たちは、地元の方や一緒に活動する仲間の話を丁寧に聞き出そうとしていて、ふるさとや相手のことを深く知ろうとする作法が身についている学生が多いなと感じています。
ふるさと応援隊に参加した動機
田口 学生の2人は、今回のふるさと応援隊について、それぞれどこから情報を得て応募してくれたのですか?
押部孝祐(以下、べっち) 僕は、学生に情報を発信している大学オンライン上の掲示板に、たまたまふるさと応援隊の案内があったのを見て、シンパシーを感じて応募しました。農山村に魅力を感じていたのですが、なぜ興味があってどこに惹かれているのかをきちんと言語化ができていなかったので、それを理解して言語化したいと思い応募しました。
田口 べっちは学部でどのような勉強をしているの?
べっち 僕が所属している学部のコースは、子ども社会専攻といって小学校の第一種免許状を取得できるコースです。僕は親の影響もあって割と身近に自然を感じられるように育てられてきたので、しがのふるさとにも興味を持っているのだと思いました。小さい頃の経験は、大人になってからの経験以上に価値や光るものがあると考えています。なので、今回の学びを大学での学びとつなげて、今後の教育に活かしたいと考えています。
田口 まゆさんはどうですか?
浜路真悠(以下、まゆ) このプログラムを知ったのは一緒に参加しているバイトの友達に誘ってもらったのがきっかけです。私は大学で林業を専攻していて、来年は林業の専門職で県庁に就職する予定です。その話を友達にしていたので、林業や滋賀県の農山村に興味あるんやなっていうことを分かってくれていて声をかけてくれました。
田口 これまでも同じようなプログラムに参加したことはありますか?
まゆ 大学2年と3年のときは、コロナが流行っていて学校にも行けない状況でした。1年生のときには、環境保全に取り組むNPO法人で棚田を守るために川の清掃や、栗の木を剪定する活動に参加していました。そのときも、授業の中で先生に紹介してもらったことがきっかけで、参加してみて大変興味が深まったので、今回も参加しようと思いました。
ふるさとを応援する情報発信の工夫
田口 2人の話から、バックグラウンドに自然環境に関心があり、やりたいこともすでに持っていたので、今回の情報を見つけた際に実際に行動できたのだとわかりました。そこで、素朴な疑問として生まれも育ちも都市部という人は、どうすれば地方や田舎に興味を持つのだろうか、と感じました。田ヶ原さんは、普段東京で地方創生の情報発信に関わる中で何か感じることはありますか?
田ヶ原 直近だと奈良県の三宅町という小さい町でお仕事させていただいたのですが、そこの若い町長が非常に官民連携を積極的にされていました。そのような取り組みに触れると、小さな町のリーダーが率先して活動することによって、その地域が変わっていく様子を感じました。そのような取り組みに面白さを感じています。
田口 小さな町や地方のベッドタウンが都市部に向けて魅力を発信することは、関係人口を呼び込むためにも必要なことですが、日本中の自治体がどのように魅力を発信すれば良いか悩んでいると思います。そのようなことをお仕事として関心持っている田ヶ原さんは、実際に発信する際にはどのようなことに気をつけて、イメージを描いて発信されているのでしょうか?
田ヶ原 いろいろ考えられますが、ひとつにはスターをつくることが大切だと思います。例えばさきほどもお話しした三宅町の場合だと、小さい村だけど町長が若くて官民連携をめちゃくちゃ頑張っているということが、覚えられるひとつのキッカケになっています。同じようにスタートアップの業界でも、小さな会社だけど実はある専門分野で活躍している人がいるぞとなれば、その人がきっかけとなり多くの人が覚えてくれます。地域活性化の事例となる地域づくりについても、新しい企画を考えるのではなく人づくりを積極的に取り組んでいる地域は結果的に受け入れられている印象がありますね。
田口 なるほど。ふるさとの魅力の捉え方と発信の仕方について、スターをつくるという視点が面白いですね。学生2人は情報発信で気になっていることはありますか?
まゆ 私はSNSの発信を普段からしているのですが、まずいろいろな人に知ってもらい興味を持ってもらうことで、そこから広げていきたいなと考えています。生の意見を直接聞いたり現地で直接見たりしたものを、ここがすごく良かったから行ってほしいとか、そこがさらに盛り上がってほしいとか、そういう気持ちから共感してもらえる発信にすることを普段も心がけてはいます。
べっち 僕の場合は、子どもに魅力を伝えることに関心があり、一番大切なことは現地に来てもらうことだと考えています。これまでのふるさと応援隊のプログラムでは、 SNS で発信することの必要性について話してきたのですが、いろいろなの人の話を聞いていてきて、あらためて人から人へ伝える力の可能性を強く感じるようになりました。最近何でもテレビやスクリーンに映しだして、疑似的に体験できるようになってきました。やはり、生で人と向き合い、自然と触れ合い、体験することがこれからより大事になってくる、大事にしたいと感じています。
それぞれにとっての「ふ・る・さ・と」捉え方と伝え方
田口 今回のしがのふるさと応援隊では、ふるさとの価値をどう伝えるかが大きなテーマになっています。今回のお話を聞いていてあらためて重要だと感じたことの一つは、各々が感じている「ふるさと」という言葉にも多様なイメージを持っているということ。どのように捉えているのかを別のものに例えたり表現したりすることで、今の若者たちが応援したいふるさとの魅力が浮き彫りになるのではないでしょうか。
もう一つは、その自分が捉えているふるさとの価値をどう伝えるかについて、必ずしもSNSでの発信だけが手段ではなくなると思います。さらに極端なことをいうとこの民泊のプログラムは、1億2000万人いたら1%ぐらいしか引っかからないかもしれない。でも1%でも120万人ぐらいいるから120万人に伝わる戦略を考えようとしたら、そもそもSNS だけがすべてではないはず。僕はこのふるさとの価値は、体験しないと得ることができないし、体験の仕方も整えた方がいいと思う。旅行代理店の大衆向けのパッケージツアーだと、体験はできたとしても、今回のプログラム同様の深い体験価値までは得られないと思っています。今日やったような振り返りワークショップでの対話を必ずした方がいいと考えているので、こうして一緒に参加してファシリテーションしています。僕がこのプログラムのファシリテーションに関わっているのは、そういう考えを持っていて、それが僕の中の伝え方の一つです。
次に皆さんに聞きたいのは「ふるさととは何か」。そして、それをどうやって誰かにバトンを渡すか。こういう挑戦をしたいとか、伝え方についても少し違う視点やアプローチが何かあると思うのでそのあたりを教えてください。
べっち 漠然としているのですけど、ふるさととは「ぬくもり」だなと思っています。それは自然を介して感じられるものもありますし、人とのつながりからも温もりを感じられます。僕はどちらかというと、自然との関わりの中で感じるぬくもりというものに着目して今回のプログラムに参加しました。しかし、実際に参加して印象に残っているのは、人との会話やつながりでした。
どう発信していくかについては、やはりぬくもりって抽象的だけど、人間を人間たらしめるもので、これは SNS やメディアで伝えるのには限界があると思っています。やはり体験が残るのかなと思っていました。PRの仕方も、自然の魅力を前面にというよりは、そこに生活する人とそれを取り囲む自然みたいな出し方をするとより魅力が伝わりやすいのかなと感じました。
田口 いいですね。まさにこの2日間の体験で気づいた学びなんですね。まゆさんはどうですか?
まゆ まったくまとまっていないのですが、いま話を聞きながら考えていたのは、「ふるさと」とは一回どこかで触れたことのある、関わった事のあるところだと思います。一度訪れた場所や話した人は、自分の中で印象に残りますよね。それを大事にしていくことが、ふるさとを守ることなのかなと思います。例えば、東近江での農家民泊の体験を通じて自分が一度触れ合ったことで、自分のふるさとの一部になったからこそ発信したいと思えるようになりました。その地域とどのような関わりを体験できたのかが、大事なのだと感じています。
田口 ありがとうございます。田ヶ原さんはいかがですか?
田ヶ原 お二人の話とも共通するのですが、私がふるさとをどう捉えているかというと、また行きたくなる場所であって、その魅力はやはり人なのかなと思いました。たとえば、北海道は多くの人がまた行きたくなると思う場所で、食べ物が美味しいとか景色綺麗とかそのようなイメージが先行して抱くと思います。それとは違うのが「ふるさと」なのではないでしょうか。
田口 なるほど、わかりやすいですね。
田ヶ原:その中で情報をどうやって発信していくかについて、私は情報発信の仕方には2つあると考えています。1つは SNS のようにタイムリーに発信されるフローな方法で、もう1つはホームページのように全ての情報がこれを見れば分かるように集約しストックする方法です。大前提としてストックする情報が必ず充実していることが大切で、それにより地域側の受け入れ体制ができていることを見せることにつながると思います。広報について、さきほど説明コストを下げることだと話しましたが、その先にはファン作りがあります。それがさきほど学生のお二人が話していた口コミでファンを増やすことや、また来たいと思う人を増やすことになるのだと思います。
ふるさとの魅力をどんなハッシュタグで表現するか
田ヶ原 ここで学生2人に1つ質問したいのですが、例えば今日の体験を発信しようとしたときにハッシュタグを3つ付けるなら何にしますか?私はまったく思いついてないのですけど(笑)、何がいいかみんなで考えてみたいなと思いました。
田口 ぜひ、一案ずつ出しましょう。すごいものである必要もないと思うのですが、良いものを出したいですよね。僕はインフルエンサーではないので SNS 発信することに関して何にも気をつけていないのですけど、例えば今のこのインタビューを紹介するのであれば、今パッと思いついたハッシュタグは、「#べっちまゆありがとう」ですね(笑)。また、僕は民泊体験していませんが、もししていたらお世話になった「#○○さん夫婦ありがとう」というふうにしたいですね。
人と人をつなぐのは、人ではないでしょうか。人の魅力は、いくら言葉を重ねてもうまく発信することがなかなか難しいので、だからこそお世話になった人への感謝の気持ちを用いて発信できないかなと考えました。
これに関連しそうな話をすると、もともと僕は建築の勉強をしていたので建築の美しさとは何か、何で美しいかに関心があります。例えば、日本庭園が何で美しいか、何で建築と共にある自然が美しいと感じるかというと、すべて人が介在していることも大きな要素ではないでしょうか。美しいのは人の技や熱意がそこに介在しているからで、野放しで人の手を介在していない放置された自然って美しいとは感じにくいですよね。
人の魅力は、言葉以外のものからでも受け取れるし、その体験する価値の大きさは数えきれないものですよね。情報発信は、フォロワー数やいいね数などで数えられますが、そうではない数えられないものの価値に僕は関心があります。そうそう、数学でいうと複素数といういい言葉があります。数えられる数である実数と、数えられない想像上の数である虚数iを組み合わせたものが複素数で、これには多い少ないはないんですよ。例えば2iっていうのと4iっていうものがあったとき、4iが大きいっていう概念じゃなくて2iは2i、4iは4iという記号のようなもの。ただ観測する場所によって距離の長さは違うので、観測する人が立つ場所とその対象との距離間、つまり関係性がどうかを考えることが大切なのだと思います。
東京の人たちが観測するふるさとと、滋賀にいる人が観測するふるさと。その観測する距離はそれぞれ違うだけで、順位や優劣があるわけではなく、関係性が違うだけ。だからこそ、どうやってふるさとの魅力を発信するのかというと、そこにいる人の力を借りられないのかなと思いました。
はい、考える時間稼いだのでお二人どうぞ!
まゆ ぜんぜん聞いていました!勉強になるなと思って(笑)
田ヶ原:たとえば、「 #人たらしが集まるまち東近江 」とかどうでしょうか。これを見てどのような人がいるのだろう、行ってみようかなと思ってもらえないかな。そういうイメージでなんでも良いのでみなさん教えてください。
べっち 「#思いやり」とか、「#おせっかい」とかはどうでしょうか。
田ヶ原:そうそう!一部の人にでも知ってもらえればいいと思います。どういうふうにその地域を紹介すれば自分の友達を口説けるかなという考え方で、その言葉を広げていけたら良いのではないかと。
田口:あらためて、田ヶ原さんの「どんなハッシュタグをつけるか?」の問いの投げかけが良いなと思っていました。自分たちが利用するSNSのフォロワーに伝わるハッシュタグは何か。それは、自分自身がふるさとと呼んでいるものを、別の自分の言葉で伝えることに毎回全力投球すると情報発信力も磨かれるのだろうなと思いました。表現しようとしていることはみんな一緒だし、今日(DAY4)の最後に実施した全員でのチャックアウトでも表現したい世界観とか言いたいことはほぼ同じだけど、でも少しずつ表現する言葉は違っていました。持っている言葉は、本人の認識した感覚や経験からしか生まれないので、その都度感覚を研ぎ澄ませてハッシュタグのような少ない情報に集約することを意識することで、ふるさと応援隊という取り組みが前に進む気がしました。
最後に
お話ししてくださった田口さん、べっち、まゆちゃんそして2日間参加してくださったゲストの田ヶ原さん、ありがとうございました!私自身、しがのふるさと応援隊について考える非常にいい機会となりました。
今回の話を踏まえてべっちとまゆちゃんの2人にもハッシュタグを考えてもらいましたので、「しがのふるさと応援隊2022」のマガジンから、ぜひDAY3-4の本編をチェックしてみてください!
インパクトラボのnoteでは、これまでの開催レポートをマガジンにまとめています。今後もしがのふるさと応援隊2022についての記事を上げていきますのでこちらもチェックしていただけますと幸いです!
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?