2023.2.16-18 わたしに戻る旅-中編-
書くのに少し間が空いてしまったけど、思い出しながら書く中編。1週間分の旅は前編後編だけじゃ足りなかった。あっという間にほぼあれから1か月。
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京丹後で2泊した私は、レンタカーでそのまま京都市内へ向かった。出版社をやっている友達のはからいで、素敵な建物「花辺」に泊まらせてもらえることになっている。着いたのは13時ごろ。その建物には喫茶店とハーブティのお店があってオープンしていたので、少しのぞいてチェックインを済ませた。
レンタカーを駅前に返す前に、ぎりぎり行けそう、と京丹後の友人に教えてもらった民藝とタイ料理のお店「コイコイ商店」に車を走らせる。ランチタイムぎりぎり!もう店内にお客さんはいなかったけど、素晴らしく美味しい、民藝の器でいただくタイ料理は最高だった。夢中で食べながら、心にもパワーがみなぎる感覚。こんな素敵なお店がある、存在してるだけで背中を押してくれる気がした。
お店を出て、近くにホホホ座一乗寺店があることが分かり、ぶらっと入る。パッと目につく「喫茶店のディスクール」。うおお、ここまで来たら誠光社で買うべき本なのかもしれないけど、行けるかわからないし…とホホホ座店主の日記ZINEとともに購入。その後道中夢中で読むことになったので、我ながら良い判断だった。
レンタカーの返却時間も少し過ぎてる。急いでガソリンスタンドに寄ったら「ここ高いから、もう少し先に行ったところの方がいいよ」とおじちゃんが教えてくれる。優しいな!お礼を言いながら無事にガソリンも入れ、返却も完了。車があった3日間、やっぱり快適だったなあ。
パソコンを入れたリュックを背負ってきてしまったことを少し後悔しながら、行きたかった本屋「hoka books」へ。思った以上に小さい、わくわくするような小路の奥にあった。お客さんはその時間私1人だったので、じっくりと店内を見回す。それなりにたくさんの本屋をめぐってきているので、置いてある本から、この本屋の色や考えがにじみ出て来るのが分かる。この本屋さんは出版もやっていることを前から知っていたので今回の一番の目当てはそれだけど、ついつい他の本にも目がいってしまう。「たやさないvol.2」を買って少しだけお店の方とお話しし、店を出る。
近くのコーヒー屋さんに入って、少しぼーっとした。この時間がたまらなく好き。たやなさい、を読んで近くの菓子屋さんが載っていたのであとで行ってみることにした。コーヒー屋さんの店主が、しっかり濃いめのコーヒーを私が飲み終わってまだ居そうなタイミングで白湯を出してくれたのが嬉しかった。
夜は友人のMちゃんとごはん。去年はGWに田んぼ作業に来てくれた彼女。京都のどまんなかの、好きなごはん屋さんに連れて行ってくれる。一人の時間が今日は多かったからか、私が自分の話ばかりしてしまった気がした。「ゆきさん、相変わらずおもしろいなあ」と言ってくれた。あなたも相変わらずいいやつだよ。帰り際、大通りの交差点で焼き芋屋さんを追いかけて買ってたのが面白かった。あったかい焼き芋をポケットに入れて、宿へ戻る。
次の日はぴかぴかに晴れていた。泊まっていた建物「花辺」のまわりは住宅街と公園。オーナーさんが朝歩くときもちがいいよ、と昨晩言っていたので歩いてみる。坂道を10分ほど登ると、京都の街並みが少し見下ろせて、それで満足して下りてきた。
ハーブティーのお店「maka」さんで午前中はゆっくりした。きもちいいことをする話、タイミングの話、呼吸の話、ご縁の話・・・つつみこむように話し、聞いてくれるmakaさんとの時間は何かその後の私にとってとても大切なものだったように思う。まだわからないけれど。日常に勇気を灯してくれるようなろうそくとハーブティーを買って、「また来ます」と言って花辺をあとにした。
ランチは新潟で知り合って今は京都に住んでいるO君と。けっこう辛いカレーを食べた。元気そう&楽しく暮らしていそうで何より。ラジオに出たい、と言ってくれた。聞いてくれてたこと自体も嬉しかった。昨日、今日でなんというかすでに京都に対する親近感?がだいぶ高まっている。心を開ける友人の存在、その友人が楽しく暮らしている町というのは大きい。
午後は京都で行きたかったところを2か所ほどぶらぶらして、(バス停の場所と時間の計算でスマホとひたすらにらめっこしてたら充電がぎりぎり)山口へ向かう新幹線に乗った。最後に行ったレティシア書房がとても良かった。そこで買った星野文月さんの「私の証明」を飲み込むように新幹線で読む。この文章はいきおいよく読んでしまうな。少し前の私の状態を思い出して少し胃がきりりとなった。
新山口駅に着いたのは夜8時近かったかな。ビジネスホテルにチェックインして、夜ごはんなにか食べようと外へ出る。最初だけ勇気が要るけど、入ってしまえばなんてことない一人居酒屋。カウンターに座り、いまここで食べるべきものをメニューをじっくり見ながら考えてる時間が一番好きです。「ソロ活女子のススメ」を見て覚えた技ですが。
次の日の朝は、フォーラムに出るというもともとあった唯一のミッション。時間通りにタクシーに乗り込む。曇り空と、初めて見る山口県の山々。フォーラムでも東日本の人は少なく、「新潟から来たの!」と周りの席の方からもびっくりされた。今回の「ひとづくり・地域づくりフォーラムin山口」はなかなか大きい規模で、事例発表者だけでも15人ほど、来場者は300人ほど、スタッフはざっと見ただけでも30人くらい。
私は新潟でやっているインターンシップの事例を話す。この5年間でこういう機会は大学の授業などでもけっこうあるので、特に緊張はしなかったけど、需要と合っている話ができているのかは少しわからない感じだった。
フォーラムは少し早めに帰っても大丈夫そうな雰囲気。同じテーブルの方に、近くで行けるところを聞いたら「湯田温泉」と帰ってきたので、日帰り温泉だけでも急いで行ってみることにする。
電車で新山口から15分ほど。「湯田温泉駅」に着くと雨が降っていた。日帰り温泉のある場所まで歩いたらけっこう濡れてしまった。くつしたも濡れていて、気持ちが下がる。でも、もうここにしよう!と近かったところに入ったら、かなりレトロで大衆演劇もやっている立派なところだったので結果楽しかった。「楊貴妃湯」はホグワーツみたいな柱と石でできていてとっても広い。帰りは温泉の方が傘をくれて、とってもありがたかった。
新山口に戻って荷物を持ち、新幹線で岡山へ向かう。駅になつかしの「萩・井上のしそわかめ」があった。本場はここか!山口のおみやげはそれにした。
岡山では約10年ぶりにゲストハウス「とりいくぐる」に泊まる。20歳ごろに来た時には無かった気がするカルチャーなお店がまわりに増えていた。あの頃とは私の中の見え方も違うんだろう。夜ごはんは姉妹店らしいカフェバーでルーローハンを食べた。思わずビールを頼んでしまって、この旅のあいだなんだかんだ毎日飲んでるな…とちょっと反省。昨日の居酒屋でも、ここでも、本1冊もっていくと1人でも退屈しない。
宿に戻って少しラウンジで仕事をしてると、フランス人らしい人たちがわらわらと入ってきて、スタッフさんと部屋の交渉を始めた。ゲストハウスっぽい光景に数年ぶりに出会う。コロナの3年間、こういう場所もいろいろあったろうなあ。
京都も、山口も、岡山も、足を運んで分かるその土地の風がある。受け取る私の状態ももちろん影響していると考えると、無数のパターンの中から今この瞬間が生まれているのだ。もうそれだけで旅をする意味があるような気がしてくる。意味なんてなくていいのだけど。
旅の間、ずっと頭のはしに元恋人の存在があって、ちらちらと思い出してしまうのは良いのか悪いのか。まあもう私の一部みたいなものなので、それをすべて無くすのは無理として、小さくしていきたい。旅の間は目の前のことや楽しむことに忙しいのでだいぶ小さくできているけど。
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